第262話 これが俺達のデコレーションケーキだああああ!
そういう訳で俺と片桐は二人でケーキ作りを行っている。
ちなみにキッチンはテルクシノエー達が調理で使っているので、ここは俺がケーキを作る為に用意したケーキ作成調理場である。やはりこういう場所があるのは嬉しいもんだ。これだけでここにセーフハウスを作った意味があるからな。
んで片桐だが、前にも何度か手伝ってくれてたこともあり、元々器用なのであっという間に基礎は覚えていた。お陰であまり教える事もなく生地は完成した。
「おー、出来た・・・こうしてみるとショートケーキ感がしないなぁ」
「ま、生地だからな。んじゃまずはそこにある竹串を2本使うぞ」
俺はそう言うと生地にしっかりと竹串を刺していく。
もう一本もちゃんと図って間隔を置いて刺した。これは所謂抑えみたいなもので、これに沿って横に切っていけば簡単にそしてズレなく生地を分割していけるのだ。
この時生地を切るのは包丁じゃあなくて【ケーキナイフ】を使う。まぁ、なければ包丁でもいいんだが、こっちがあれば更に綺麗で切りやすくなるので、ケーキを作るのなら1本は常備しておきたい所だ。
片桐も俺が教えた通りに竹串を支えにしてケーキ生地をスライスしていく。今回は4枚に切り分けた。
因みに竹串以外でもそこが取れるタイプのケーキ型を用いて切る方法もある。やり方はネットで調べれば色々あるので、自分がやりやすいやり方出来るのが一番だ。
後あまり力を入れ過ぎない様にするのがいいな。ケーキ生地は繊細だ、あまり力を入れ過ぎると簡単に崩れちまう。折角の生地が崩れたら寂しいし、触感も悪くなるからな。やはり良いナイフなどを使うのが一番だろう。
俺もここには妥協していない。
片桐もちょっとぎこちないがケーキ生地を切り分ける事が出来た。ここまで出来りゃあとは簡単だ。
今日作るのはイチゴのショートケーキだからたくさんのイチゴを用意してある。
「んじゃスポンジ生地に生クリームを塗っていくぞ」
「おーう。って、友樹? なんでこの生クリーム緩いんだ??」
そう言って指摘してきた先に7割程度までホイップした生クリームがある。
「あぁ、こいつは初めから完全に角をたてちまうと塗りにくいのもあるからだな。こうやって、いざ塗る時に良さそうな感じになるまでまたホイップしていくんだ。そうすればやりやすい」
「へぇ・・・えーと、こうやって」
片桐がスポンジに載せた生クリームを平らにならした後、あらかじめ切り分けておいたイチゴを並べていく。
この時イチゴをスポンジの周り1センチにははみ出させないようにするのがポイントだ、こうする事で次に載せるスポンジをサンドさせやすくなる。これも作る時に覚えておいた方がいいポイントだな。
「そうそう。上手いぜ? んじゃイチゴを載せきったらそこにまたクリームをかぶせて蓋をする。それが終わったらもう一枚サンドして、それを続けていく感じだ」
「ここは、慣れると簡単だなぁ。やっぱり最初の生地作りとかが面倒って所かぁ」
「ケーキ作りで躓くのがそこだからな。最初はそれこそ売ってるスポンジ生地を買ってきてそれを使う手もある。まずはケーキを完成させる所からやって楽しむってもありだ」
「あー、それで偶にケーキスポンジだけ売ってる所あるんだ」
色々楽しみながら話をしているがその間も二人でケーキのサンドを終わらせていく。直ぐに4段重ねのケーキサンドが完成した。
それを成形し平らに整えた後、回転台の上に載せる。これもあれば便利だがないならないでちゃんとやりようはあるから安心してくれ。これがあればケーキを満遍なく塗っていくのにとても楽が出来ると言うだけだからな。
という訳で回転台を回しながら固めにしたホイップを塗っていく。この作業も慣れると楽しいんだよな。回転台を回転させながらホイップを塗り固めていくと皆が何度も見た事があるあのショートケーキに見え始めていく。
そうやって全体を満遍なくコーティング出来たら仕上げに7割だてのクリームで整えていくと滑らかで見栄えのいい仕上がりになるという感じだ。
「おぉぉぉ・・・で、出来た・・・!」
「あぁ、こりゃ十分だな。んじゃ最後にデコレーションして完成だ。ここからは片桐がやりたいようにデコレートしてみてくれ」
「え、教えてくれないんか!?」
「形成迄は教えただろ? ここからは自分のセンスで見栄えを良くしてみたほうがいいって。俺と同じの作っても意味ないだろ?」
「あ、あー、そうか・・・それこそ自分でチョコレート板とか載せたりしても良いんだよな!」
シンプルに生クリームを載せてイチゴを載せてもそれはそれで可愛いショートケーキの出来上がりになる。と言うかこの形成時点でショートケーキとしては完成なんだ。
後は上部分のデコレーションや、慣れてきたら側面部もデコレートしていく等と色々こだわり抜いた一品も作れるようになるし、それがとても楽しい時間になる。
スピネルなんて上部分に流川の顔っぽいの作ってたからなぁ。あれはあれで微笑ましかったよ。
「そうそう、載せるクリームもひと手間かけてみるとか、寧ろシンプルイズベストを目指すとかだな。」
「成程成程・・・よし! んじゃデコレート勝負だ! どっちが可愛いの作れるか勝負! 負けた方はバツゲームで!!」
「ほほぅ。このケーキの達人である俺にデコレーション勝負を挑むとは笑止千万!」
という訳で、ここから俺と片桐のデコレーションケーキ勝負が始まったのだった。
結果――
シンプルながらケーキ屋に並んでもも遜色ないレベルの俺のケーキと、なんか芸術っいぽいのが出来上がった片桐のケーキがそこにあった。
子供が見たら絶対に喜びそうな、所謂あれだ誕生日ケーキっぽいやつ。砂糖菓子の人形とかがちょこちょこ置かれていて、生クリームで出来た雪だるまや、シュガーパウダーで形成した雪景色の家屋、チョコで作った立て看板にはチョコペンで【冷やし中華終わりました】とか書かれている。
程よくカオスっぽいが、これはこれで変わった完成度の高さがあった。
「ど、どうよ・・・! 途中で私自身何やってんのかなと思い始めたけど」
「いや、十分すぎるわ。こういう所は流石にこだわるタイプだよなぁ」
スピネルはゴテゴテしたデコレートよりはシンプルな方を好む。流川デコレートはそれはそれで面白みがあったが、それ以降は店に並ぶような味で勝負するタイプのケーキを目指してるからなぁ。
今回は二人で作ったから味はほぼ同じ、となればこうやってデコレートしてお互いの技術を見ていく感じにしたんだが、こりゃ文句のつけようもない。
「こりゃ今回は俺の負けだな」
「そ、そか・・! まぁ私だもんな! こう言うのは得意だし!」
嬉しそうに笑っている片桐を見て、一緒に作ってよかったと改めて思った。やはりケーキ作りは一人でやっても楽しいが、わいわいと誰かと一緒に作るのも楽しいもんだよ。
因みにこの後、全員に夜のデザートとして出したら大いに喜ばれた。
立川も最初は驚いてはいたがやはりケーキは好きだったようで次もまた作ってほしいと頼まれたよ。
その時はまた誰かと一緒に作りたいもんだ。
・・・・え? 罰ゲーム??
しりませんな、そんな話。
大丈夫、片桐自身忘れてるから!! 俺は救われた!!
―262話了
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なお後日バツゲームは受けた模様。
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