第265話 折角生き返ったのだから、色々と――


 俺も回復した事もあり、ミッションが始まるまでの少しの時間を有意義に使う為、と言うかなんと言うか、折角立川が蘇生したのだから色々見て回りたい事もあるだろうと言う事で、今日は俺達全員で街に繰り出している。


 引き籠ってそうだなぁと思ってきた片桐も一緒に来ているので俺のセーフハウスメンバーが勢ぞろいでやってきていた。


 やはりそれなりに人数が居ると目立つ、というかテルクシノエーはじめ、サイレーンやショコラ、クレア、見た目を着飾れば片桐も十分魅力的だし、蘇生した立川もボーイッシュな魅力が感じられるので、それはもう周りの目が凄い事になっている。


 だがナンパ野郎が来ることはまずない。


 何故なら気は優しくて力持ちでまだまだお兄さんな俺と、周囲を射貫くような眼光の山崎が居るからそれだけで牽制になっている。


 後、寧ろナンパ野郎予備軍ではあるが、黙ってたら十分見た目のいい山田に新島と揃っている時点で、ここを攻略しようとする奴は寧ろ違う意味で強者だろう。


 折角街まで来たのだから、それぞれ色んな場所を巡ればいいのだが折角のメンバーなのだからこういう時にこそ協調性を高めた方がいいのではとまさかの新島から言われたのでこうして全員で歩いている。


 平日の真昼間に働きもせず何をやってるんだろう、なんて思っていたのも今は昔。ある意味では十分以上に稼いでいるので委縮する必要もないだろう。


「うわぁ、私が居ない間に・・・あんまり変わってないわね」


「なんというお約束なセリフを」


 死んで10年も経っていれば違ったかもしれないが数年程度では確かにあまり変わらないだろう。デジタル関連はめまぐるしいほどに変わっているらしいが、その点は俺も良く分からないからな。ここは片桐の分野だ。


「それでどこに行くんだ?」


「それは歩きながら考えるの! 折角の外なんだし自由に楽しむべきでしょ!」


「そ、そうか・・・」


 立川が相手だとあの山崎も完全にタジタジだ。普段のクールさが感じられないんだから余程大切だったんだろうな。ほんと蘇生させられた良かった。


 まだ蘇生薬は2個残ってるし、俺達には万が一の余裕があると考えればこれから先のミッションもかなり安心して臨む事が出来る。


 だが、それに甘えて油断するつもりはないがな。それで下手なことして死んだら阿呆にも程がある。


「はーい、めぐめぐ服見に行こ~よ! 最近の流行乗るしかないっしょ!」


「服かぁ。流行はあたしも良く分かんないけど、最低限いい奴欲しいわね」


「ならあーしらがコーデしてやるし。ほら、いこ?」


 やはり女性同士と言うかなんと言うか、こういう時は流行やオシャレに強い二人の独壇場だな。俺なんて思いついたのケーキ食材を見繕いに行こうぜ、だったからな。


 流石にそれで喜ぶのは俺とスピネル位か・・・俺も黙ってついて行こう。


 









「お疲れ様っす」


「お、悪いな」


 あれから数十分、結局女性のパワーに勝てず俺は近場で休んでいた。


 あれに付き合わされている山崎と新島よ・・・頑張ってくれ。


 そういう訳で此方に残ってるのは俺と山田、そしてついていけなかった片桐だ。ハトメヒトは今回留守番である。別に連れて来ても良かったのだが、自分で誰かが来るかもしれないからという理由で残ったのだ。


 戻ってきたら家が訳の分からない事になっていてもハトメヒトならあり得てしまうな・・・と思うほどにはあいつに対する別の意味での信頼度を感じる。


 にしてもだ・・・


「お前さんはついて行けばよかったのに」


「あんな謎言語で話して中に入れるかよぉ・・・」


「謎言語て、いや俺も正直よくわからなかったが・・・」


 あれを理解できてるサイレーン達を尊敬するよ。俺には女性のコスメとかそう言うのはさっぱりわからん。と言うか片桐もわからないのだから、男性が知らなくても仕方ない気もするが、モテる男とかはそういうのを覚える事が必須なんだろうな。


「山田も流石にギブアップか?」


「あの中にいればある意味幸せだったんすけど、無理・・・」


「だよなぁ・・・」


「お前が頷くんかい!?」


 片桐くん、君も女性なのだからそう言うのを覚えた方がいいんじゃないのかね? いや俺も人の事はいえないんだが。


 オシャレとかなぁ・・・正直あまり考えた事ないんだよな。


 俺の仕事、つまり土木作業員をやってるとそう言うのにあまり頓着しなくなるんだよ。勿論休日とかにやる気のあるやつはバシっと決めたりするんだろうが、俺はそれよりもケーキ作り等に集中してたから、自分の見た目より最低限の身だしなみと、清潔感を保つ事しか考えてなかった。


 高校の時に何回か買った男性の流行雑誌等を見た事はあったが、結局面倒って事でやめたんだよな。だからモテてなかったんだと思うが。


 今はサイレーン達が居るのでカチグミです。いやぁ、すまんね!


「にしても元気だな立川は。山田は山崎達と鍛錬一緒にやってるだろ? 色々話したりしてるのか?」


「最低限っスかねぇ。山崎さんの彼女ですし、あまり俺が話しかけるのもなんだかなーって」


「成程、お前さんも色々考えてるんだな」


「それよりも俺はサイレーンちゃんとテルクシノエーさんを・・・!」


「残念だが売り切れです、あきらめてどうぞ」


「くああああああ! 俺も、俺もソウルギアな彼女が欲しいいいいい!」


 嘆きだす山田。


 黙ってたらモテそうな見た目なのになぁ、資産もなんだかんだで持ってるし性格もモテたい云々以外は悪くはないんだ。ちょっと金使い荒い所もあるがポイントで換金できる分の金で満足してるしな。


 モテたいなぁモテたいなぁと呪詛を吐いてる山田を片桐が絶対零度の目で見ている。こわっ・・・まぁ、片桐に対してはそんな事言わないからなこいつ。


 等と考えてるとスマホが振動する。


「っと、SGCTか」 


 【SGCT】サジクトと呼ばれる有名なチャットソフトのパチもの・・・と言うかソウルギアGAME版だ。登録しているプレイヤーやソウルギアなら無料で電話やチャット、色んなアプリが出来る。


 まんまアレではあるが、こっちはポイントを使って色んな特典とかがあるのと例えスマホが解約されてたとしてもネットが閉じてても連絡できるので便利さではこっちに軍配が上がるな。


 開いてみるとサイレーンからチャットが届いていた。ある程度買い物も終わったのでこれからお昼にしないかという連絡だったので、分かったと連絡を返す。


 気が付けば12時回ってたので丁度いいな。


「あっち買い物終わったってよ。合流してメシ食いに行こうぜ」


「うっす!」


「漸く昼ご飯だぁぁぁぁ、もうお腹空いて限界!!」


 それぞれ身体を伸ばしながらあっちと合流し始める俺達だった。




―265話了


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引っ越し完了しました。

荷ほどきもある程度終わったので、後は残った手続きを明日ですね。

そろそろ落ち着けそうです。

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