第246話 イケイケモードに見えるでしょう? ギリなんです
「「な、何だ!?」」
限界が近づいていた筈の身体にこれまでとはけた違いの力が流れ込んで来た事に驚きを隠せない御堂とテルクシノエー。
更には動かし方すらまだ把握してなかった3個恒星からあのヘルカイトにダメージを与えられるようなレーザーまで出てくる始末だ。急な自分の状態に理解が及ばない。
だがしかし、応援に駆けつけてきたディーヴァをもってしてもダメージを与えられなかったのになぜ急にと考えていた矢先、二人の思考に聞いた事がある言葉が流れ込んで来た。
『聞こえてる! 友樹! テルクシノエー!』
『か、片桐!?』
『リバティ!? 念話じゃあない・・・これは直接』
『上手くいった、上手くいったぞぉ! 今あんた達の身体は私が操作してる、その変身ってロボットみたいになるだろ? つまりそれは・・・機械だよなっ!』
『んな・・・!? 本気で言ってるのか??』
片桐の言葉に驚愕する御堂。テルクシノエーも同様だった。
二人が【トランスブースト】で合体した姿は確かに機械の女神と言わんばかりの姿ではあるが、御堂は人間だし、ソウルギアとはいえテルクシノエーも人型だ。【機械】を強化する【マシン・ザ・リバティ】の効果の対象には普通に考えればありえない。
だが、現実は実際にこれまで以上に強化され、攻撃すら通り、このように意識を逸らしてても尚、ヘルカイトからの攻撃を容易く回避し、魅了し続けて、更には3連レーザーを用いて戦い続けている。
捜査しているのはバイザーからゲームの様な画面で世界を捉えている片桐が動かしている。本来ならばこれほどの猛攻、その素早さも相まって片桐では目でとらえる事も出来ない筈なのだが。
『ゲームは、得意だからね・・・! そりゃプロゲーマーには勝てないかもだけど、このバイザーの先から見えるゲーム世界になった現実じゃ、パターンが分かりやすいただの雑魚モンスターしか見えない!』
『んな無茶苦茶な・・・』
『こと、機械とゲームに関しては、本当に最高峰なんですね、あの子』
リアルをゲームとしてみてるから問題ないとか言う、ある意味プラシーボ効果なのではと言いたくなる御堂達だが、実際問題それで攻撃を回避しつつ攻撃出来ているのだからその才能は計り知れない。
そして御堂達は知らないが、片桐のソウルギアは機械を強化し、機械に関する事の為ならば【本体】も強化する。
今彼女の眼を覆っているバイザーモニターも見た目や伊達や酔狂といったものではなく、彼女が見る世界を、ヴァーチャルに落とし込んで強化された目線で見る事を可能にしているのだ。
だからこそ、低レベルでは早すぎて何も見えない今の戦闘状況も、【ゲーム難易度が地獄とか最悪レベル】として捉えられている。
『ここからは私に任せていいから、友樹は今使ってる、魅了か? そっちに集中してて!』
『まさか自分の動きを誰かに任せるとか思わなかったよ』
『私もです。ですが・・・』
『あぁ・・・頼りにしてるぞ、片桐! 倒すなんて考えるな、耐えきりゃ俺達の勝ちだ!』
『っ・・・! ま、まかせろぉ!』
あらゆる意味で一体化した美の機械神が、空を駆ける――
※
動きがモニターの中で自分の目で捕らえられる状態になっているとはいえ、その攻撃速度と巻き起こす衝撃波をかいくぐるように操作するのは片桐をもってして、完璧とは言えない。
一歩間違えれば被弾は免れず、耐えられても後1回だけと言うのはモニターの左側に掲載されているタイプ・テルクシノエーの全ステータス情報からも読み取れた。
同時にヘルカイトの上部には【58%】と謎の数値が書かれており、ダメージを与えたり、時間が少し経つごとに1%ずつ上昇しているのが見える。
『多分これが、魅了がかかっている状態。これを100%にすりゃ、私達の勝ちって事かっ!』
徐々に動きがおかしくなったり、稀に止まるのは魅了効果が適用されている為であり、このまま回避しつつ攻撃を加えて行けば魅了の浸食度はますます上がる。
その間の時間をゲームコントローラーを握りながら必死に回避し、稼いでいく。
『またあのブレスが放たれたらやばい・・・なんか防ぐ手段は』
範囲的にも威力的にも発動させてはならない【破滅のブレス】 魅了に抗いつつも何故それを使わないかといえば、やはり最初に手痛い反撃を受けたからだろう。
その元凶が今、地上で戦っているディーヴァの横に居る。
ディーヴァに向かって攻撃がほぼ来ないのは、殺すべき存在が御堂達であるのと、ハトメヒトが居るからだった。
『ハトメヒトのデータは・・・よし、後3回は使えるのか』
タイプ・テルクシノエーを操作しながら、片桐は声を上げる。
「サイレーン! ハトメヒトに【念話】送れる!? 私持ってないし、意識割いてる暇がねぇ!」
「う、うん! 一体何が・・・」
片桐の声を聴いてサイレーンが近寄って来る。
急に片桐が椅子とテーブルをマシン・ザ・リバティを変形させて、更にはコントローラーまで持ち出して何かを動かし始めた時にはサイレーンももしかしたらおかしくなったのかと危惧していたが、急に早く攻撃まで行い始めた御堂達の姿を見て、何かしているのだと判断していた。
「多分。私の予想じゃ後2回位はあのとんでもエネルギー砲撃って来る筈なんだ! その時にハトメヒトの援護が居る!! 友樹に向かって打たせないようにしないとならねぇ!」
「ん・・・確かに。それじゃ何を伝えれば?」
「ハトメヒトを友樹に引っ付かせる! 私がハトメヒトまで移動させるから連絡して! OKになったら動かす!」
「うごかすて・・・わ、分かったよ!」
「そうなるとディーヴァがやばくなるけど、あいつなら何かしらあるだろうし、ハトメヒトからも伝える様に言っておいて! んなっ! こなくそっ!」
コントローラーと体を同時に動かしながら叫ぶ片桐。
奥の方では、そのタイミングでタイプ・テルクシノエーが攻撃をぎりぎりで回避している。
ハトメヒトが攻撃のダメージを反射できるとはいえ、攻撃自体は全て通る以上、壁としては使えないが、それでも万が一のための牽制にはなると判断した片桐。
最悪はブレスに向かってハトメヒトを投げつける気でもいた。どういうスキルか理屈か彼女自身分からないが、死んでも次のハトメヒトがひょっこり出てくる時点で、その選択肢も考慮に入れている。
「急いで! あいつ、どんどん見境なくなってきてるから、暴れ方が激しくなってる! 下手すりゃ構わずブレス使ってくるかもしれない!」
「ん。了解・・! 【念話】発動!」
サイレーンが直ぐにハトメヒトに念話する。
その間も激しい攻撃のラッシュを片桐は巧みなゲームセンスで回避し、攻撃を加えていく。
徐々に動きを止める事が多くなってきているヘルカイトではあるが、その分動いた時の猛烈な攻撃とそれによる衝撃波が絶えず襲っている。
ムセイオン内に居る片桐達は分からないが、周りを見ればあちこちが焼けこげ幾つかの部分は融けてきているのが見えた。
灼熱のヘルカイトはその名前の通り、凄まじい高温と炎を併せ持つ竜。本体の熱は数千度以上にも及び、近くにいる存在はそれがただ発する熱気だけで焼け死んでしまう。
勿論ある程度離れているのと、一応は難易度緩和制限がされているのだろう。行動範囲外はその熱気をある程度まで緩和されているようだが、それでも優に数百度は超えている。機械神となっている御堂達はそこまで熱によるダメージは受けていないが、ある程度近場で戦っているディーヴァは熱気から自分を守る為に持ちうる全ての力を使って何とか耐えている。
ハトメヒトはそのような防御能力はないので、実は既に何回も死んでいるが、死んだそばから新しくハトメヒトが現れてそれで持たせていた。
『ハトメヒトって残機どれだけあるんだ・・・?』
ソウルギアである以上、完全に死亡しても復活は出来る。本来はソウルギアが死ねば本体も死ぬのだが、複数ソウルギアがある場合その全てが死亡、もしくは破壊されない限り本体は死ぬ事はないし、時間経過でソウルギアも復活する。
ハトメヒトは死んだそばから残機云々で蘇っているが、それも無限ではない為、その全てを使い切ればやはり一定期間が過ぎなければ復活出来ない。
ここでハトメヒトが死んでしまい、それをヘルカイトが認識すれば、最早破滅のブレスを抑える意味もなくなり、その時点で敗北が確定する。
かと言ってハトメヒトをあそこから逃がしても同じくブレスが飛んでくる以上、彼女がどこまで耐えられるかが勝負になっていた。
『火属性無効とか、耐性とかあればなぁ・・・!』
ないない尽くしではあるが、生き残る可能性が僅かにでもある以上、片桐は諦めるつもりはなかった。
―246話了
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ヘルカイト熱い問題。ちゃんと覚えてました(ドヤァ
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