第193話 ------------------------------------------------------------
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■コメントのご指摘により蘇生薬の効果と説明を変更しました(1年撤廃)
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そこは暗く、そして明るく、広くて、狭い場所だった。
影すら差さない世界なのに、周囲が見えず
周囲が見えない筈なのに理解できる
恐らく生命体では居るだけで壊れてしまう様なそんな世界。
ナニカが居た。
人なのか動物なのか、二本足なのか四本足なのか、それとも足すらないのか、何も理解できず、そしてそれを見ている者は誰もいない。
それはそこにただあるだけだ。
それが小さく何かを呟くと、周囲が光り輝き、ナニカを中心としてモニターの様なものが周辺にいくつも現れる。
一つ一つが大きなテレビモニターの様で、何かが映っている。
町を歩いている人間の姿。
人間を襲っている人間の姿。
ただ我武者羅にトレーニングを続けている人間の姿。
怯えて動けず布団に引き籠っている人間の姿。 但しそれには赤いチェックが入っている。
何十、何百、何千、何万、何十万と、全てのモニターには違う人間が映し出されていた。
その中には勿論、御堂、流川、片桐等のプレイヤーの姿も映し出されている。
今現在地球上に存在する全てのプレイヤーの総数と同じだけのモニターが出現しナニカはその全てを見つめていた。
映し出されたプレイヤー達を見ては時々苦笑したり、普通に笑ったり、ハラハラしたり、ドキドキしたり、何もしていないプレイヤーに対しては赤いチェックを入れている。
時間が時空がねじれているこの場所では時など無意味であり、それはたのしそうに彼等を見つめていた。
もう少しで次のシーズンが開催される。
そうすれば彼等は再びミッションと言う名前の戦いに身を投じる事になる。
ナニカが知らなかった楽しみを、喜びを与えてくれる。
ナニカから伸びた黒い二本の靄がパチパチと音を立ててぶつかっていく、恐らくは拍手でもしているのだろうか。
全てのプレイヤーを見て楽しんでいるそれ、一人一人を見ていれば多少なりともお気に入りのプレイヤーも出てくるものだ。
いくつかのモニターを引き寄せ、巨大化させる。
それには我武者羅にモンスターと戦い続けるプレイヤーの姿が映し出されていた。
かなりの速度で生まれてくるモンスター達を切り捨てていくプレイヤー。ナニカはそれをみて少しだけ怖くなったが、これならば次のシーズンでもがんばってくれそうだと思う。
次に映したのは、この前に赤いチェックがマックスまでいっていたプレイヤー。今はちゃんと頑張り始めたのでチェックは消してあるが、要注意の緑色のチェックを入れてある。
次にまた何度も何度も何もしないで楽しませてくれなければ赤いチェックが再びつけられる事だろう。故にナニカにとってこのようなプレイヤーはあまり好きではない。だがそれでも、緑チェックに変更されるほどには頑張り始めたので、様子見だ。
次のシーズンで活躍し楽しませてくれることを望んでいる。
更にモニターに視線を移す。
先ほどのプレイヤーとは違うが、自分の体を極限まで痛めつけ鍛え上げている者がいた。ナニカはそれにそれなり以上の期待を寄せている。
もしかしたら最大レベルに到達するのではないかとワクワクしているのだ。
他の高レベルプレイヤーも見てはいるが、最近は飽きて来ている。何せ高レベルになったせいで逆に安定を取り出してきたからだ。
勿論チェックが入らない程度にはミッションには参加しているが、それだけである。更には他のプレイヤーを除去して強くなろうとしているプレイヤーに制限を掛けようとしたり、色々なルールを勝手に作っている存在もチラホラといる。
ナニカにとってそれらはあまり面白くない。ちゃんと頑張らなければいつか目を賭ける事も辞めてしまうだろう。そうなれば例えレベル10になったとしても――
それを考えれば目の前で夜叉の様に鍛え続け、最強になろうとしているプレイヤーはとても楽しくて面白い、お気に入りだ。
ぜひとも次のシーズンは頑張ってほしいと願っている。
全てのモニターを見てはいるが、その中でもう一つどれよりも巨大なモニターには一人のプレイヤーと複数体のソウルギアが映っていた。
それには赤でも緑でもなく、黒色のチェックがつけられている。
そのプレイヤーはそこまで劇的に鍛錬をしている訳でもなく、モニター越しに聞こえてくる声は、どうみてもやる気の無さそうな感じが感じられた。
時々暴言みたいなことを吐いたり、逆に違う事を言ってみたり、ふわふわとした感じの姿をナニカはじっと見つめている。
かのプレイヤーも次のシーズンはきっと戦うのだろう。そこには我武者羅に戦っているモニターに映っている男や、緑チェックが入っている女も時々映っていた。
ナニカは初めて誰にも認識できない身体をゆっくりと動かし、モニターの近くまでやってくる。
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言葉なのか音波なのか、それは誰にも聞き取ることは出来ない。
例え。彼女のソウルギアであろうとも。
だが、それは確かに、そのモニターに向けて放たれていた。
誰にも知られる事はない、この空間で、ナニカはただあり続ける。
―193話了
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