第30話 立つ鳥跡を濁しまくりな運営さん
毎日のコメントや応援ありがとうございます。
少しでも楽しんでもらえたらとても嬉しいです。
緊急ミッション編もこれで漸く終幕、お楽しみいただけたでしょうか?
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―MISSIONクリアー!!
―〇〇地区での参加者の皆さんおめでとうございます。
―今宵の催しはお楽しみ頂けたでしょうか?
―次の緊急MISSIONも企画しておりますのでどうぞ次回をお楽しみに。
―勝利された皆さん達には次のアイテムとポイントが送られます。
―クリア報酬 30000ポイント
―討伐報酬 3000ポイント 該当者:レヴォリューション
―貢献報酬 単発ガチャチケット3枚 該当者:サイレーン+テルクシノエー
―最大ダメージ報酬 単発ガチャチケット3枚 該当者:レヴォリューション
―ポイントの振り分けは皆様全員でどうぞご自由に
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「どうぞご自由にって・・・」
アプリに表示されていたクリア報酬のリザルトに御堂が溜息を漏らす。
個別報酬にも色々突っ込みたい所はあったが、ポイントの振り分けはプレイヤー同士で醜く争えと言わんばかりの配布方法だった。全員が知人か仲間なら兎も角、このような戦いにおいて誰もがお上品に対応してくれる訳ではない。
死んだ粉骨砕身の様な人間ならば自分に多くポイントを寄こせ等の事は確実に言うだろう。それが通るかは不明だが確実にプレイヤー同士の不和が着実に貯まる事になる。それがいずれはプレイヤーキラーを形成する土壌になるかもしれない。
「あの姉ちゃんがPKだったとはな」
今この場には生き残った全員が揃っている。
死亡した粉骨砕身とフェアリーズの遺体はアプリにある機能でポイントを支払えば的確に埋葬や処理をしてくれるらしく、二人が持っていたスマホからポイントを使い二人とも埋葬する事になった。
どこに埋葬されるのか、どうやって処理されるのか、誰かが来るのかは分からないがポイントを消費しておけば後はどうにでもしてくれるらしい。勿論自分達でそれを行ってもいいが、その場合は面倒な法律問題などが絡んでくる。殺人犯にされる可能性もある以上、この方法で処置するのが一番穏当な方法だろう。
「あれだけ堂々と出てきて、あの戦闘力じゃ無理だって頭から弾いてたぜ・・・油断はやっぱりできねぇなぁ」
「あれを看破するのは無理があるからね」
そもそも彼女の場合は故意ではなく脅されての強制、被害者に近かった事もあり殊更そう見えたのだろう。彼女自身も出来るならばそんな事をしたくもなかったのだから。
「もう過ぎた事か、さて」
それぞれがアプリのページを覗いている。
「ポイントの振り分けを自分達でやれって、どこまでもお互いを敵対させたいのかよ」
「ディザスター達の性根を考えればわかる事だ。このクリアリザルトのページを見れば嫌でもわかるだろう?」
御堂の言葉にアクセルが答え、自分の配布ポイントについて気持ちを告げた。
「俺は2000貰えればいい、今回は正直役に立ってない」
囮などの貢献はある程度したが、正直な所居ても居なくても大して変わらない立ち位置に居たと自覚するアクセル。その後はだまし討ちで倒され更には操られてあわや壊滅の危機に陥らせてしまった事に強い自責の念を感じていた。
ディザスター達にいいようにやられたのが殊更に気に入らない以上、最低限のポイントだけを貰う事にしたのだった。
「僕はすいません。3000ポイント貰えたらレベル3になれるので、それだけもらえたらなーと」
「遅刻したけど少し、1000でもいいから貰えないかなぁーとか、うん。だめ??」
頭を縮こませ小さく手を上げながら言うバンカーと、その隣でおこぼれでもいいから貰えないかと交渉するソウルギアの少女。
そこに御堂が分かりやすい提案をだした。
「全員で倒したんだしよ? 素直に五等分でいいんじゃねぇか?」
それに反論したのはアクセルだ。
「あのモンスターを止めたのはあんたのソウルギアで、最後に倒したのはレヴォだ。その時点で多く貰う権利がある、あまり役に立てなかった俺が厚顔無恥にポイントなんて貰えるか」
そう言うとアクセルはソウルギアの少女の方に視線を向ける。
「寧ろ俺にポイントを渡すなら、そっちのソウルギアにやってくれ。あんたが居なかったら俺達は全滅してた」
「ですね、彼女のお陰で僕達は今こうやって生きてるんですから」
「そ、そう? そう言われると悪い気はしないわねぇ」
真正面から褒められ感謝されて思わず動揺する彼女。同時に「ポイント獲得よっしゃー!」と心の中でガッツポーズをとっていた。
「それを言うなら兄さん達が押さえてくれてたから俺も戦えたんだが、覚悟にケチつけても仕方ねぇしな。ならこんな感じでどうだい?」
そう言いながらレヴォがポイントの振り分けを設定する。
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サイレーン+テルクシノエーのマスター:12000P
レヴォ:8000P
バンカー:5000-2000=3000P 2000をソウルギアの少女に譲渡
アクセル:3000-2000=1000P 2000をソウルギアの少女に譲渡
ソウルギアの少女:2000+4000=6000P
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「あぁ、俺はこれでいい」
「はい、僕もこれなら問題ないです。貢献度や活躍を考えれば妥当だと思いますし」
「やった♪ 言ってみるもんね、これで支払いやその他諸々もなんとかなりそう」
「って!? 俺多くないか!? 一番多いだろこれ!?」
それぞれが納得や喜んで居る所、余りの高額ポイントに焦っている御堂がいた。貰えるポイントが多くないかとレヴォに詰め寄るが、彼が何か言うより先にアクセル達がそれに答える。
「いえ、貴方と貴方のソウルギアが居なければモンスター討伐ももっと厳しかったですし、僕達の方も詰んでましたから当然だと思いますよ!」
「それもあるがあんたこれが2回目位だろ? バンカーが言うように今回あんたの貢献があって勝てたんだ、少し多め貰ってもばちはあたらねぇよ。」
「いや、貰えるのは助かるけどよ・・」
「いいじゃない貰えるものは貰っておきましょ? こんなスムーズに行くなんてめったにないんだから」
「だな。死んだおっさんはともかく兄さん達は話も通じるし理性的で助かるよ」
言われるまま押し切られ御堂は12000という大量のポイントを手に入れる。
「1ぽいんと1まんえん、12000って事は、うわぁい1おく2せんまんえんだぁ・・・!? 私震えてきたヨ・・・」
「レベル3にするのに8000だから、4000残るだけよ? それにスキルなども買わないといけないし残っても1000って所ね」
「それでもいっせんまんえん! 大金過ぎる!!」
大量のお金を獲得したようなものなので早速サイレーンがアレが欲しいやらこれが欲しいやら皮算用を始めている。勿論隣では御堂も新しいケーキ作成の機材とかいくつか買えないかななんて考えているのが見えた。
【あ、これは管理しないとポイント残らない】そう考えたテルクシノエーはこれからのポイント管理に頭を悩ませるのだった。
「ま、好きに使えばいいさ。こういう大量にポイントが貰えるからこそ、プレイヤーキラーなんてものも湧くんだがな。何せ一攫千金だ、欲深い阿呆は大体そうなる」
討伐ミッションのモンスターを1体倒すだけでも1~5ポイント、最大で5万円だ、ある程度強くなれば死なない限り無限に稼げるし、貯金し続けるプレイヤーも現れるだろう。目的の為かレベル上げのポイント貯金か。だからこそプレイヤーキラーはそういうプレイヤーを狙うのだ。大量のポイントの為や、血に酔って狂ったプレイヤー達が。
「あ、そうだテルクシノエー。フェアリーズが持ってたポイントで埋葬とお墓付きオプションで頼んでおいたけど、結構ポイント余ったよ?」
サイレーンが見せたフェアリーズのスマホには【4450P】が記載されていた。二人分の埋葬と墓設置オプションでの消費が【100P】だったのでそこから消費している。
「これはどう配布すればいいのかな?」
ちなみに粉骨砕身のポイントは【3P】しかなかったので使い物にならなかった。
「それの配分はどうするの?」
「おっさんの分のポイントはどうでもいいとして、それは倒したあんた達で分けるといいさ」
そう言うとレヴォは踵を返して歩きだした。
「んじゃ俺はそろそろ行くからよ。今日は助かったぜ兄さんたち」
「あ、おい!? 行っちまった」
「お礼もあまり言えませんでしたね。また次のミッションで会えるといいんですが」
振り向くことなく去っていったレヴォを見送った御堂達は残ったフェアリーズのポイントの割り振りについて再び相談を始める。
「で、どうしよっかこれ?」
「そのポイントこそ俺は貰えん。それはあんたと支援ソウルギアのあんた達で分けてくれ」
「僕も3000もらっちゃったし、遠慮しておきます。」
直ぐに権利を放棄してきたのはやはりアクセルだった。同時にバンカーも少々残念そうにしていたが権利を放棄する。
「あー、その貴女のおかげでうちの二人が助かったそうですね、こちら3のそちらが7でどうです??」
「あ、私はそれ1000でいいわよ、てかほんと私ただの棚ぼただしね。6000貰ってるし十分以上だもの」
更に彼女は続ける。
「あまりがめつくしたら、うちのマスターに変な眼が来るかもしれないしね」
「成程な、ポイントの持ちすぎもあれって事か。あんた、いや貴女がそれでいいならそれで」
彼女の進言通りにポイントの配布を終了させた。
ホクホク顔でマスターにお土産買ってあげようなんて呟いていた彼女だったが此方に振り返り別れの挨拶を交わす。
「それじゃあね。次のミッションでも会えたらよろしく頼むわ」
「ありがと、貴女のお陰で私たちも助かったよ」
「いいのよ、袖振り合うも多生の縁って言うでしょ? またね」
そのまま彼女も夜の闇に消えていく。それを見届けたバンカー達も帰路に就く準備を整えていたが、帰る前に最後の交流を交わす事にした。
「僕も戻ります。こうして二度も出会って協力したのも何かの縁ですしバトルネームを伝えておきますね?」
「バトルネーム・・?」
聞かない言葉に御堂が聞き返すとアクセルが返してきた。
「こういう場所で本名などは言わない方が良いのは分かるだろう? そうしてPKに狙われた奴は数多いからな。だからこそいつからか俺達はソウルギアの名前やハンドルネームみたいなものでお互いを呼ぶようになったんだ」
「ですね。僕のソウルギアはマキシマムバンカー。これからは見かけたら【バンカー】と呼んでください」
「俺は【アクセル】何れディザスター達を皆殺しにする者だ」
「バンカーにアクセル、か。あぁ、よろしく頼むよ」
そこでふと流川と佐伯が普通に本名を名乗っていたのを思い出す。
「あぁ、ジェミニのおっさんは割と有名で名前も自らばらしてるがあれはそれだけの実力があるからできる芸当だ。因みにこの前居た佐伯ってのはただの馬鹿だ」
「あ、あははは・・・あ、あの人結構いい人なんですけどね」
「成程なぁ。俺の場合はどうするか、サイレーンもテルクシノエーもいるしなんか違うよな」
しばし考えた後頭にパッとこれだと言うものが浮かんだ。
「俺の事は【ケーキ屋さん】でよろしく頼むわ」
そう言った御堂の言葉に二人ともあまりにも不釣り合いなバトルネームに驚いていた。何せ御堂の見た目は優しく言えばガテン系のスキンヘッドでガラの悪い男、悪く言えばヤのつく自営業やチンピラにしか見えない。まさかそんな男の口からケーキ屋さんなんて可愛らしいバトルネームが出るとは思っても居なかった。
「け、ケーキ屋さんって、あんたまさかパティシエとかだったのか?」
似合わない、心底似合わないとは流石に口に出さないアクセル。
「ま、見えねぇよなぁ。でも俺って実は趣味がケーキ作りなんだよ。こう見えて割とプロレベルよ? こういう殺伐とした世界じゃ無ければ、二人にも振舞ったんだがなぁ」
戦闘時のガラの悪さは消え、いかつい容姿を除けば人の良さそうな所が見える御堂に少し気後れしていたバンカーも彼の言葉に笑顔で返す。
「ははっ! それは嬉しいです、僕も甘い物結構好きなんですよ。ケーキ屋さんの作ったケーキいつか食べてみたいなぁ」
「そうだな、いつかあんた達に作ってやりたいもんだ。それじゃ俺達もそろそろ戻るわ、気を付けて帰れよ?」
「そうですね、いつかきっと。楽しみにしています! また次のミッションで会う事があれば!」
最後に笑みを浮かべてバンカーは走っていく。それを見送った後アクセルが御堂に語り掛けた。
「あんたとは出来れば敵対したくない、付き合い的にも実力的にもな。だからPKになんてなってくれるなよ?」
そう告げた後、アクセルもまた帰っていった。
残されたのは御堂とサイレーン、テルクシノエーの三人。傍にはシートに覆われたフェアリーズと粉骨砕身の遺体がある。ちゃんとした礼式等は知らないが、死んでしまえば全員仏様だと祖父から聞いていた御堂はゆっくりと手を合わせ二人の冥福を祈るのだった。
「よし、俺達も帰るか。流川に連絡しなくちゃならんしな」
「お疲れさまでしたご主人様」
「ん、帰ろ、マスター。あ、腕を組んで帰りたいな」
「何言ってるのサイレーン!?」
「これ位頑張ったからご褒美だよ、ね、マスター♪」
両隣でわいわいやっている二人を見て苦笑しながら御堂は帰路についたのだった―
―30話了
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緊急ミッション編 終幕です。
至らぬ所ばかりですが楽しんでもらえたら嬉しいです。
何よりも難しいのが地の文を使っての詳しい描写や戦闘描写ですね。
この辺りは沢山の語彙を覚えておかないと大変です、ここをスムーズに
書ききれたら皆さまにも読みやすい感じになると思うのですが、
それが出来ないのは技術と量が足りない所為ですね。頑張らなくては。
さて次回からはまた御堂君の一人称での地の文に戻ります。
ころころ変わりますが、こういうのもまたありなのかなーと。
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