第80話 悩み続けて30キロ、ゴールも答えも出てこない。
今日も閲覧ありがとうございました。
今日は残業+休み0でへろへろです、朝の気温もマイナス5度と
お昼でもギリギリプラスになっただけで寒かったです・・・
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思わぬ所でハルペーに出会えたアクセルだが、正直な所知り合いにそこまでアテがある訳ではない。運よくハルペーに出会えたが、彼が知るプレイヤーの知人は二人しかいなかった。
既に二人に連絡を取り、彼等が来るのを待っている。
ハルペーは色々準備があるからと、お互いに連絡を取れるようにしたあと意気揚々と自宅に戻っていった。彼ならばきっと強力な手助けになるだろう。
ホットコーヒーを飲みながら目的の人物がやってくるのを待つ。
本来はその二人に会うはずだったのだが、丁度良くハルペーを見かけたので誘ってみたのだ。上手く行って彼自身ほっとしている。
周りを見渡せば、誰もが楽しそうに買い物や食事を楽しんでいる姿が見えた。
それを見てズキリと胸が痛む。
自分も少し前まではと昔を思い出し、直ぐに思い出すのをやめた。自分にはその権利等ないと。
あの頃の自分は正に愚か者だった。手に入れた力に溺れ、何でもできると勘違いして親友と恋人の気持ちなんて全く考えていなかった。
二人とも、日々死ぬかもしれない恐怖に怯えていた事も全く理解していなかったのだ。そして最後に二人とも失う事になった。自分のせいで、自分のミスで。自分の都合で二人を共に連れ出して、結局自分だけ生き残ってしまった。
これが愚か者以外のなんであろうか、と自嘲する。
子供の頃からの親友と幼馴染の彼女を自分自身のせいで失ってしまったのだ。泣く事も、いや、自分には泣く権利すらないと自身を戒める。ディザスター憎しと全てのミッションに参加して敵を切り刻んでいるが、もっとも殺してやりたいのは自分自身だった。
何をしてももう二人は戻ってこない。
二人の家族にはディザスターの死者への調整のせいで事故死と言う事で片付けられている。車の単独事故、それにアクセルは一切関わっていないという極めつけの嫌がらせもついてだ。
自分の傲慢のせいで死なせてしまった親友と恋人の家族に自身が慰められるという情けなさと申し訳なさで心が砕けてしまった。
彼に出来る事は、自分を含めいつか全ての現況を殺しつくす事。
その為には何でもするし、何でもやろうと決めていた。プレイヤーキラーもミッションの敵もその全てを殺しつくす。実は既にプレイヤーキラーを数人殺した事もある。運よく自分と同レベルや低レベルだったから勝てただけではあるが。
復讐の鬼と化した彼は、自分の身を顧みず戦う事で劇的な戦闘力を手に入れていた。流石に高レベル相手には一歩も二歩も劣るが、その力はジェミニ達に劣るものでもない。
そうして自分を捨て、人生を捨て、ただディザスターを滅ぼすために戦い続けてきた。だが彼自身考えたくもないが理解はしている。それが成功しない事を。
自分一人でディザスターをどうにかできるとは彼も思っていないのだ。現実的に考えれば世界中にこのようなミッションを作り出すそんな存在に、その力を使っているだけの自分がたった一人でどうにか出来る訳が無い。
分かっていても尚、もう彼は止まる事は出来なかった。そうしてしまえば自分が完全に壊れてしまう。自分のせいで死なせてしまった二人に顔向けする事も出来ないと。
それからアクセルは仲間を募るようなことはしなくなった。巻き込んで死なせてしまった二人がトラウマになり、誰かと一緒に戦う事に忌避を覚える様になった。だからこそ常に一人で戦うようになり、一人でも戦いきれるように強くなった。ある程度の共闘はしても、仲良く一緒にと言うのは彼には出来なくなったのだ。
それを変えたのはこの前の出来事。忌避感を覚えても、たとえ情けなくても、手に入れなくてはならない物が出来たからだ。
ケーキ屋―御堂が手に入れたアイテム【蘇生薬】
前回のミッションで半死半生になったアクセルを助けてくれたのはケーキ屋とジェミニ達だった。それに感謝はしていたが、自分の地獄に巻き込む訳にはいかないと、報酬代わりにポイントを渡そうとした時に蘇生薬について知ったのだ。
それを聞いた瞬間にアクセルは一も二もなく土下座した。
プレイヤーに限定されて、ソウルギアとして復活という制限はあるが、死んだ存在を蘇生できるアイテム、もう二度と帰ってこないと思っていた存在にまた会えるかもしれない。いてもたってもいられなくなったのだ。
たとえどんな形であろうとも、親友と恋人を取り戻せるかもしれない、そんな希望が彼の渇いていた心に雨となって降り注いだ。
だが、蘇生薬ともなれば超高価なアイテムだろう。アプリで並んでいる所も見た事がない以上、超レアな一品物であることには間違いない。故に彼は自分の人生を御堂に売った。これから先、自分のポイントを全て渡すと、命令通りに動く機械になると。
しかしそれは断れられ、余りにも破格な条件で先渡しで譲ってもらったのだ。この時点でアクセルは今までの矜持を捨ててでも仲間としてケーキ屋を御堂を護ると誓いを立てた。
今現在、アクセルの持ち物にはその蘇生薬が残っている。
蘇生薬は1本しかない。つまり蘇生できるプレイヤーはたった一人だけだ。もう一つ手に入ればもう一人も蘇らせる事が出来るかもしれないが、次手に入るかはわからない。この1本でおしまいの可能性もある以上、よく考えて使用しなくてはいけない。
日々鍛錬をしつつ、御堂達を護りながらもアクセルは悩んでいた。
【どちらを蘇生させるか――】
恋人か親友か。どちらもアクセルにとっては大切な存在だ、もう一個手に入れる事が出来れは直ぐにどちらもと言いたいが、手元にあるのはこの1本だけ。
リバティに頼んで他の蘇生薬の情報がないか調べてもらったが、日本では御堂が手に入れたこの1本が初ドロップの蘇生薬らしい。
一応範囲を全世界にした場合、数か所で蘇生薬の情報が出ているが、既に使われていたり、奪い合いで破損してしまったりなど、詳しい情報も無ければ2本目を獲得できる可能性の情報すらない。
それ以上に今はリバティが意図的に情報を抑えてくれているからいいが、アクセルが蘇生薬を持っている事が大体のプレイヤーに知れ渡っている。彼は掲示板や総合サイトなどを見ないのでわかっていないが、彼等が一生懸命に特定しようと躍起になっているとも聞いた。
売る気がないのならさっさと使えばいいとはスピネルの談だ。確かにこのままでは誰かに奪われる可能性や、破損する可能性もある。早めにどちらかを蘇生させなくてならないが、今の時点で何方を蘇生していいか悩み続けていた。
『プレイヤーとしては二人ともレベル1だった。戦力的に考えるなら蘇生は何方でも問題ない、なら後は・・』
アクセル自身が今何方を蘇生させたいかに尽きる。
小さな頃からの幼馴染であり恋人になった彼女。親友には常に揶揄われていたのを思い出す。あまりにもずっと一緒に居て、恋人と言うよりは家族みたいになっていた彼女。物静かだが、怒るととても怖かったのを思い出す。
もう一人も同じく小さな頃からの幼馴染だった。一緒によくばかなことをやったりしたのを覚えている。中学の時には二人でコントを繰り広げて周りを良く氷河期にしていた。逆にその寒さが受けて、二人は学校でも大人気の生徒だったものだ。
大体常に三人で過ごし、親友に彼女が出来た時、始めて漸く彼女もアクセルもお互いを意識しはじめ、それがきっかけで付き合うようになった。
二人ともアクセルにとって大切な存在であり、優劣つけられるものではない。
恋人である彼女を蘇生するか、親友を蘇生するか、どうしても踏ん切りがつかずに悩み続けている。
悩み続けて疲れた頭を回復させようと冷めかけたコーヒーを一口飲む。
砂糖もシロップも使わず濃い苦みが好きな彼はブラックを愛飲している。ごくりと飲めば強い苦みと鋭いキレがゆっくりと目を覚ましていくのを感じる。
―ピコン
色々考えているとスマホが鳴った。
会話アプリからのメッセージが来ているらしくすぐに開くと、目的の相手である、ソウルギア使い【バンカー】からの連絡が届いていた。
近場にいるが見つからないので連絡してきたらしい、メッセージを確認したアクセルが立ち上がり周りを見渡すと、辺りをキョロキョロと見渡している少年の姿が見えた。
「こっちだ」
「あ、アクセルさん! お、お待たせしてすいません!」
「気にしないでくれ。急に連絡を入れたのは俺だからな」
こっちに駆け足で寄ってきたバンカーを前の席に座らせる。
「あと一人来ると思うからそれまで適当に好きなのを選んで食べてくれ。ここは俺が出す」
「あ、有難う御座います! えーとそれじゃ・・・」
好意に甘えてバンカーがメニュー表を開き好きな食事を吟味し始めた。
それからやや暫く、バンカーが届いた料理に舌鼓を打っているとアクセルのスマホに再びメールが届く。そこには目的のもう一人からの連絡が届いていた。
メッセージを確認するとどうやらもう一人の相手は後少し時間がかかると言う事で、二人は食事をとりながら談笑する事にした。
「それにしても無事でよかった・・・あの時は流石に・・・」
「あぁ、俺も死んだと思ったがケーキ屋たちに助けてもらったからな」
「そうなんですね。良かったです」
「その恩に報いる為に、今俺はケーキ屋たちと協力している。今回お前達を呼んだのは次のミッションを一緒にやらないかと誘いに来たんだ」
「そうだったんですね・・・! はい、アクセルさんやジェミニさん達と一緒なら心強いです!!」
バンカーも今回のミッションをどのレベルにいくか悩んでいた一人だった。
レベル3になった以上、レベル3~4のミッションに参加しようと考えていたが、最後のミッションと言うからにはきっとレベル通りの難易度ではないんだろうな、と低レベルの場所を考えていた所だったりする。
「アクセルさん達はどのレベルの場所に行くんですか?」
「俺とケーキ屋、ジェミニ、佐伯、スピネル、リバティ、そしてハルペーはレベル3~4のミッションに参加する予定だ」
「ハルペーさんもですか!!」
「先ほどそこで出会ってな、協力を頼んだら快諾してもらった所だ」
「成程・・・はい、僕もいけます! よろしくお願いします!」
知っている名前が複数。それも頼りになる存在ばかりだ。彼等が誘ってくれるならバンカーも断る理由はない。寧ろ誘って貰えて感謝している程だ。
「助かる。出来れば安定してクリアしたいからな、信頼できる仲間が欲しかった」
「そうなんですね」
バンカーはそう言いながらも彼の心境の変化に少しだけ驚いていた。
共闘する事はあっても、仲間を募って戦う事を目の前のアクセルは一切してこなかった。そんな彼が仲間を募っている事に少しの驚きと安堵を感じている。
儚さと危なさをかんじていた彼がこれで落ち着いてくれるのなら知人がまた一人無茶をして死ぬ可能性は減るだろうとバンカーは心の中で胸をなでおろした。
「所でもう一人の方って・・・もしかしてガーディアンさんとかですか?」
「いや、【羅漢】だ。あれはこの近くの寺の住職でな、俺も前から知っている相手だ」
「羅漢・・・あぁ! あのお坊さんですか!」
「先ほど少し遅れるとメールが来ていたからな、今はゆったりしていてくれ」
「わかりました。それにしてもこれ美味しいですね!」
「ん? あぁ、そうだな」
最近はテルクシノエーが作る料理を食べているせいか、こういう場所の料理がそこまで劇的に美味しいと感じなくなっているアクセルがいた。
既に彼女の料理レベルはプロを凌駕しつつあるようだ。いずれケーキ作りの腕も抜かされるかもしれないと御堂が戦々恐々としていたりする。
そう言えば彼女の料理は・・・・・・・・・・・
「ど、どうしたんですか? 顔青いですよ?」
「い、いや・・・なんでもない。ちょっとゲテモノを思い出しただけでな・・・」
「????」
忘れていたが、心優しく素敵なアクセルの恋人は、割と本気で死者がでるんじゃねぇのレベルの汚料理しか作れないのを思い出してしまい、もし復活したら料理は絶対にさせないようしないとな・・・等と、割とどうでもいい事を考えていた。
―80話了
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何とか書ききれました・・・
半分死んでいる状態で書いているので、ところどころ可笑しいかもしれませんので
もし何かあればコメントなどでご指摘してもらえると助かります。
必死に直すのです。
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