第39話 つまる所、全てにおいて足りてない現実

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 あの後も模擬戦闘を行ったが、やはりと言うかなんというか此方の大敗で終わった。2回目なんて開幕テルクシノエーが倒されて指揮系統がぐちゃぐちゃになって何もできずに終わったからな。俺に至っては焦りすぎた所為で秒で少年に落とされた。


 今は全員流川からの指導を受けている最中だ。


 流川が言うにはやはり後衛の安全を固める事が必須。特に司令塔は倒されたら終わりだから出来うる限りで彼女を護らなくてはならない。人数が居ないのなら出来ない事も多いが、俺の場合5人もいる時点でやりようは沢山あると教えられた。


 まずはテルクシノエーをサイレーンとショコラが守る事が大前提として、防御用のスキルや結界用のスキルも手に入れたら積極的に装備させて使っておく事。


 もしくはテルクシノエーに隠密、つまり隠れて見えなくして指揮をさせる手段もある。レアスキル【ハイディング】というものがあって、精神力が続く限りかポイントを消費し続ける事である程度周囲に溶け込み見え辛くなるというスキルがあるとの事だ。それを手に入れてセットさせるのも良い。


 あえて前衛を俺だけにしてクレアを中衛に置き、俺やテルクシノエーの援護を徹底させる事も視野に入る。彼女は基本的に大体何でもできるステータスだから、それを有効活用しない手はないと言われた。


 だよな、俺と一緒に特攻させるのはもったいない使い方だよな。


 後はテルクシノエーの指揮もそこまで能力が高くないと言われた。俺達の中で指揮命令が一番得意なのがテルクシノエーなのでそのまま彼女にその役割を振ったが、完全にそういう扱いをするのならそれ系統のスキルをセットさせた方が良いらしい。 


 流川がまさにその指揮系統オンリーのスキル編成だそうだ。


 流川がその場にいるだけで恩恵のあるスキルとかもあるようなので、何れはそれらのスキルも購入してテルクシノエーにセットするのも良いかもしれん。


「うーむ、結局スキルも経験も足りてないって事か」 


「そういう事になりますね。僕達の戦いは普通の戦いではありません、ゲームや物語の様な超人的な戦いになりますから」


「模擬戦闘しててもあんまり無意味って事にならんか?」


「それはありません。御堂君達はそもそもの時点で経験が足りない。こうして戦いの経験を積んでおかなくてはいざという時にまともに動けなくなります」


 要はレベル1で最強装備してもある程度にレベルの相手には勝てないでしょう? と言う事らしい。流川の言う通りだ、最初はさくさく行けるかもだが途中で敵が急に強くなったら自力で負ける。装備が良くても中身がダメっていう典型的な雑魚そのものになるって事か。


「流川さん。指揮などについてスキル以外で必要なものはありませんか?」


 貪欲に質問するテルクシノエー。自分の出来る事を最大限に活かすためにどんなものでも吸収して覚えようと言った感じだ。


「そうですね。見ている限り、テルクシノエーさんは冷静に見えて、戦闘中熱くなる時がありますね。指揮官として立つ以上、何が起きても冷静になれなくてはいけません」


「っ・・・耳が痛いですね。確かにご主人様が傷つく様子を見る度に心が刻まれる痛みが襲って冷静に思考するのが難しいです」


「それは異性タイプのソウルギアならどうしようもない感情でしょう。ですのでお勧めのコモンスキルを教えておきますね」


「コモンスキルにそんなものが!?」


 コモンスキルはある程度役に立つが、あれば便利とかそういう程度のスキルでしかない。そんなコモンスキルの中に必須に近いものも幾つかあると流川が話す。


「コモンスキルは使い方によってですが、レアやSレアすら凌駕する様なものも多いんですよ。特に皆さんなら【念話】は必須でしょう?」


「そうですね。確かに私達の戦い方だと【念話】が無ければ厳しい所があります」


「コモンスキルを使うだけでも戦術は大きく広がります。使いそうにないスキルと思わずに色々調べてみるといいでしょう」


 一区切り置いて流川が本題のスキルについてその名前と効果を教えてくれた。


「今のテルクシノエーさんに必要なコモンスキルはパッシブスキルの【冷静】です。これはセットするだけで精神的に冷静さを失いにくくなると言う強化効果があります。そしてこの冷静さはそれこそ誰かが死んだとか魔法で精神状態異常を受けたとかではない限り、ほぼ常に持続するんですよ」


 スキルがあれば精神にも作用するのかと思ったが、これがあればテルクシノエーも俺が多少傷ついた程度では取り乱す事もかなり少なくなるらしい。


 そうすれば頭の回るテルクシノエーなら次の指示なども容易に出来るだろう。今回はありもののスキルと普通に使えそうなスキルばかりセットしておいたが、こういうコモンスキルで有用なのは取っておくべきだな。このスキルに関しては俺もセットしておいた方が良いかもしれん。


 更に流川がテルクシノエーに必要なスキルをどんどんピックアップしていく。


 これが一覧だ。


―コモンスキル


【冷静】 パッシブ 冷静さを維持できるようになる


【激励】 アクション 味方単体を激励し一時的に精神状態異常を回復させ、戦闘力を微上昇させる。


【号令】 アクション 周囲の味方全体に呼びかける事で次の指示を相手に理解させやすくなる。


―レアスキル


【戦術眼】 パッシブ 周囲を更に深く把握できるようになり、次に行う行動や手段を思いつきやすくなる。更に指揮命令に関する効果が上昇する


【戦場把握】 パッシブ 戦場がどのような場所か、どういう効果があるか、敵の数や味方の様子など様々なものを通常よりさらに早く理解する事が出来る。


【カリスマ】 パッシブ 自身に得難い魅力を持たせる事で指揮命令に対する成功率や効果率を大きく上昇させる。


「カリスマもスキルであるのかよ」


「現実的なカリスマとは違って、そういう効果がある、というものですけどね。逆に言うと元々カリスマ性が高い人なら更に高い効果が見込めますよ」


「マスターにつけると全私が喜ぶね」


「うん、サイレーンはクッキーでも食べててくれ」


「がーん!?」


 ガテンの兄ちゃんにカリスマとかねぇから。


 とはいえだ、テルクシノエーを完全に指揮官タイプにするならこれらのスキルは必須になるな。問題はコモンはすぐ揃えられそうだが、レアスキルは次のミッションの報酬ポイントに左右されるって所か。


 それにテルクシノエーだけにポイントを割く訳にもいかんしな。サイレーンの強化やショコラとクレアの強化も必須だ。俺自身だって完全に前衛に立つ以上、今以上の攻撃スキルや防御スキルが必須になってくる。


 ポイントが考えれば考える程足りない。


 時間はシーズンが終われば半年の余裕は出来るだろうが、ポイントはその間稼ぐことが出来ない、生活にもポイントを消費しなくてはならんし、有限過ぎるこいつをどうやってやりくりするかが俺のこの先の問題になるだろう。


 レベル4を目指す前にまずは足場固めが必要になるな。といっても今回のシーズンは後2~3回で終了。レベル4は確実に無理だろうし、それを気にする事は無いとして、スキルと装備か・・・


 可能性を信じてガチャを回さないとならんのだろうなぁ。


 足りない、全然足りない、何にも足りない。これがゲームならよし、気合で頑張るか! となるかもしれんがこれは命が掛かってる。出来うるなら最良の状態にしたくても足枷が多すぎる。


 だからこそPKなんてものが湧くんだろうなぁ。


 フェアリーズもポイントに悩んであんな事をしたんだろうか。俺が戻ってきた時には全て終わってたから、彼女の最後は結局見る事が出来なかった。


 ただ、その表情は少しだけだが笑ってるように見えたんだよな。もしかしたらほんとはPKなんてやりたくてやってたんじゃないのかもしれん。もう俺には分からない事なんだけどよ。


 等と俺が考えていると今度はショコラが流川に話しかけていた。


「あのさ? 私のスキルって絶対命中じゃん? 何で防がれたの??」


「それは単純にそのスキルの火力が足りなかっただけですね。うちの子に消されたでしょう? あの時一応鎌には命中していたので絶対命中はしていた筈です。ただダメージになるほどではなかったと言う事ですね」


「うっわ、1レベル違うだけでこれとか」


「1レベル程度ならスキルで抜く事も可能ですが、今回においては強化スキルもなかったので無効化は容易だったと言う事です」


 今回二人は低レベルからダメージをほぼ受けなくなる装備は身に着けていない。なので命中さえすればダメージは通る筈だったんだが、一発も命中しなかったので結局の所二人とも無傷で終わっている。


 発動さえすれば逃げ道すら貫通して命中させ相手にダメージを与える【ジャッジメント】も二人にとっては大した事のない攻撃って事か。


 一応ジャッジメントを強化する方法も幾つかあってそれを流川はショコラにわかりやすく説明している。と言うかこいつはほんとに何でも知ってるな。


 俺の幸運は流川が親友だった事だろう。いなかったら俺は初回のミッションで死んでる可能性大だ。


「あ、僕からもおじさ、お兄さんに教える事があるよ」


「ありがとう、俺のなけなしのプライドを護ってくれてありがとう」


 ジェミニの二人は流川のソウルギアだからなのかほんと良い子だよな。少女はちょっとショコラが言う様にメスガキ感があるが、それも悪い方向じゃないし、寧ろ可愛いもんだ。戦闘中は悪鬼羅刹だったが。


「お兄さんね、攻撃が直線的過ぎるから簡単に避けられるんだよね。フェイントとか入れてみた方が良いと思うよ?」


「それは解ってるんだが、いざやろうとすると上手く出来ないんだよ」


 意識して攻撃にフェイントをかけるってのがどうにも上手く出来ない。プロの格闘家とかなら虚実入り混じった攻撃! とか出来るんだろうが、俺はまだまだ強くなっただけの素人さんだ。頑張ればフェイントも出来るが逆にバレバレ過ぎて隙だらけになってこっちが追い込まれる事ばかりだ。


「スキルに【フェイント】があるからそれ購入して使いなよ。あれパッシブだから意識しなくても攻撃時にフェイントが入れられるようになるからさ」


「マジで?!」


 フェイントまでスキルにあるのかよ。あ、いや購入欄に売ってたな確か。そこまで深く考えずにスルーしてたが、これは買っておくべきだ。


「慣れてくるとスキルでのフェイントは分かりやすいから、何時かは外したりするか強化とかしないとだけど、今のお兄さんにはあると便利だと思うよ」


「成程なぁ、他に何か足りないものがあるか?」


「うん、戦闘中目を瞑ってたら死ぬよ?」


「気を付けます」


 衝撃とかが襲ってくるとやはり無意識に目が閉じるんだよ。こればかりはどうしようもないって言うか、早めに慣れないとなんだよなぁ。


 更に更にと俺に来るダメだしの連続でいつしか俺は半分土下座状態になっていた。完全にグロッキーです。見てくれサイレーンが「これ以上マスターを虐めないで!?」とかやってるのを。


 情けないだろ? 俺サイレーン達のマスターやってるんだぜ? ははは・・・


 だがジェミニの少年の言う通りなんでこれらを何とかしていくしかない。そのためには必死に戦闘して経験を積んで、環境に慣れて行かなくちゃならんって事だ。


 既にダメージを受けすぎてサイレーンのようにころころ転がりだす俺。


 あぁ、なんかこれ気が休まる。周りの目が白くなっている気がするが、今の俺には癒しが必要なんだよ。反論のしようもない正論攻撃は俺には痛かったです。


 その後、俺が戦闘不能になりつつも全スルーの流川がサイレーン達に戦い方について色々指導を続けていた。


 時々ジェミニの少女が面白がって転がり続けている俺をつついたりして遊んでいたが俺の心は東シナ海より冷たかった。


 サイレーンとテルクシノエーは俺を慰めようとしつつも、これからの為に指導を受け続ける方を選んでいた。ちなみにショコラとクレアはスマホで俺を撮って爆笑してた。


 俺は結局そのまま帰りの時まで放置されていた。あ、帰りの運転は勿論俺ですよ。流川も運転出来るが大人数が乗るワゴン車は俺の方が慣れてるからね。


 今日はお兄さんの心が寒かったんで明日は自分へのご褒美としてケーキ作るんだ、ケーキだ、やはりケーキは俺を癒してくれる。


 ケーキばんざーい。


 

―39話了


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御堂君正論の前に倒れる!!


最近の小説の書き方。

1 お仕事大変

2 お仕事帰宅

3 前話をとりあえず流し読み

4 よし、なんかこう、これでいいや(何も考えてない

5 投下前にまにあえー

6 まにあったー

7 投稿!

8 次回のお話は明日のあさねこに任せましょう

9 時間になったらやる夫スレの投下です!


これを今の所39日間、毎日やってます。プロットとかそんなん作れないんよ・・・

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