第40話 殺し合いがゲームなら護り合いはゲームなのか?
今日も閲覧有難う御座います。
毎日変わる副題に特に意味はありません、脊髄反射的に適当に書いてますので
なんとなくふわっと見てあげてください。
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ミッション予告が来たのは翌日の昼だった。
ミッション内容はシンプルに【プレイヤーの防衛】とだけ書かれていた。同時に冷や汗の様なものが走る。これはつまり防衛出来なければそのプレイヤーは確実に死ぬと言う事だ。
更に言えばこれが流川の言っていた【ゲームに非協力的】なプレイヤーに対する罰則的なミッションなのだろう。大体においてこれ系のミッションは成功率が低く、対象のプレイヤーが生き残れる可能性はかなり低い。
運が良ければ、実力者が揃っていればクリアは出来るかもしれないがこの防衛対象となったプレイヤーはその時だけ生き残れても次やその次で同じ対象に選ばれるか、直接殺されるかのどちらかだという。
内容を伝えるとサイレーン達も暗い面持ちになっていく。
そもそもが成功確率の低いミッションの上、難易度も高く殺意もこれまで以上に高い。ミッション失敗以上に此方が防衛時に死ぬ可能性もあるのだ。二の足を踏みたくなるのもわかる。俺がまさにそれだ。
だが参加しない訳にはいかない。成功率は低いとしても生き残る為には行かなくてはならんし、頑張れば成功するかもしれん。一応成功報酬は一律【6000P】とかなり高い。更に追記で登場するモンスター達は普段より1ランク上の為、撃破ポイントが10~20Pになりますとも書かれている。
上手く行けば稼げるって事だ。ミッションの成否はともかくとして――
「防衛戦となれば、前回以上にテルクシノエーの役割が大事になるな」
「一朝一夕でマスターするとは行きませんが、それでもある程度は身につきました。後は実戦で伸ばしていこうと思います」
「後はサイレーンか」
「私・・・?」
「あぁ、防衛線なら新しく覚えた即死スキルが役に立つかもしれん」
サイレーンの【死へ誘う歌声】は広範囲の敵全体を即死させるというとんでもスキルだ。相手が強ければほぼ無効化されてしまうだろうが、雑魚が相手なら即死無効でもついてない限りは問答無用で倒せるはず。
相手を護る防衛戦では後列で歌っているだけでかなりの貢献が出来るだろう。こっちの問題は今回のミッションのモンスターが1ランク強化されていると言う点か。今の俺達のレベルは3なので1~2位のモンスターなら倒せる可能性がある。
実際に試した事は無いのでまだ分からないが、弱い相手が沢山攻めて来てくれるなら可能性はある筈。強い相手は俺や一緒に参加するジェミニ、他のプレイヤーで何とか対応するしかない。
「にしても、非参加で狙われるって本当にあるんだねー。逃げられる訳ないって普通に考えたらわかるのに」
ショコラが棒付き飴を舐めながら何の気なしに話す。俺もそうは思うが参加者の中にはすべて嫌になって参加しない奴とか色々な理由で参加が出来ない奴、単純に怖くて逃げ続けてる奴もいるって事だろう。
俺も一人だけで戦えって言われたら今のように戦えているかどうか自信はない。人間ってのは弱いからな。特に心が折れてたら何もできん。
「にしてもプレイヤーの防衛なのはこの辺だけだな。他は通常の防衛ミッションになってる。そうそう何人も逃げてる訳じゃあないって事か」
「ごしゅには関係ない話だぁね」
「俺は逃げられるって思えるほど頭悪くねぇよ。お前達もいるし流川もいる、これで逃げてたら流石にどうしようもねぇわ」
「マスターには私達がいるから、きっと大丈夫。心も体も絶対に守るから」
「頼りにしてるよサイレーン」
「ん・・・」
普段ははっちゃけたり唐突に不思議な事をしているサイレーンだが、こういう時は誰よりも俺の事を案じてくれる。その気持ちに応えてやらないとな、だからこそ今回のミッション成功失敗に関わらず。
「俺達はこのミッションも必ず生き延びるぞ!!」
全員の声が部屋に木霊した。
そして壁ドンされて一気に声が小さくなった。
◇◆◇◆◇◆◇◆
「あー、どうしよう、ほんとどうしよう」
頭を抱えながら彼女は辺りを歩き回っていた。
部屋は完全に汚部屋と化し、真っ暗な部屋にパソコンだけがこうこうと光を放っている。そこには「プレイヤー専用の掲示板サイト」が映し出されていた。
カタカタと凄まじいスピードでキーボードを叩く。
内容は【防衛ミッションの防衛対象になったけど何か質問ある?】だ。
今回のミッション、ついに恐れていた事が発生してしまった。自分が防衛ミッションの対象になってしまう事の恐ろしさを彼女自身よく知っている。だがそれでも参加できない理由がいくつかあった。
しかしそんな事はディザスター側には何の意味も無い。非参加を続けるプレイヤーは処分される。そんな事は分かり切っている。
現に掲示板にも「人生お疲れ様」やら「お前の所のせいで失敗確定だろうがww」等の今の彼女にとって役に立たない書き込みばかりが掲載されている。
そのくせタイムリーな話題の為レスはあっという間に消費され、もう少しで1000に到達してしまい終了になるだろう。
ワンチャン生き残る可能性に綴って書き込みを続けてはいるが、基本的にプレイヤーはお互い仮想敵同士。だれがプレイヤーキラーかも分からない現状、まともな助け船など出してくれる訳が無い――
そう思っていた矢先、彼女にとって蜘蛛の糸になりうるかもしれない書き込みが1件だけあった。そしてそこからレスはさらに加速する。
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973 名前:名も無きプレイヤー [sage] ID:RPi8wG4L
そこならもしかしたらジェミニが来てくれるかもしれんぞ?
974 名前:名も無きプレイヤー [sage] ID:MRohFtgR
あー、あの地区か! ジェミニが居るならワンチャン成功するのか?
975 名前:哀れな>>1です [sage] ID:21FqhMn1
ジェミニって誰、凄い人なの? お願い死にたくないんで情報プリーズ
976名前:名も無きプレイヤー [sage] ID:RPi8wG4L
あんたそこの地区なのに知らないのか。てか参加してないからこそ選ばれたんだろうしな。あのあたりの地区で最強のプレイヤーだぞ?
977名前:名も無きプレイヤー [sage] ID:38nvFLQR
ジェミニ様、あの双子のソウルギアを巧みに指揮する姿・・・素敵。
978名前:名も無きプレイヤー [sage] ID:ka76TGob
つか、俺違う地区だけどジェミニは知ってるわ。あれが参加したミッションって
基本的に全部成功してるんだろ? 今回の失敗前提ミッションも
行けるんじゃね?
979名前:名も無きプレイヤー [sage] ID:iPp43yQG
無理だろ。1プレイヤーに期待しすぎ。
980名前:名も無きプレイヤー [sage] ID:lmS4V5Ee
俺その地区だけど、今回は参加しねぇ。死にたくねぇし。下手すりゃ
緊急ミッションよりやばいからなプレイヤー防衛って。
休むのは今シーズンで2回目だし俺は余裕。
981名前:名も無きプレイヤー [sage] ID:38nvFLQR
私は参加する! ジェミニ様がいるなら大成功間違いなし!
6000Pは頂きよ! 20連ガチャ!!
982名前:名も無きプレイヤー [sage] ID:iPp43yQG
貯めろよ。
983名前:名も無きプレイヤー [sage] ID:lmS4V5Ee
貯めろよ。
984 名前:哀れな>>1です [sage] ID:21FqhMn1
おねがいジェミニ様! 今回のミッション来てください!!
なんでもしますから!!
985 名前:名も無きプレイヤー [sage] ID:RPi8wG4L
今なんでもするって
986名前:名も無きプレイヤー [sage] ID:iPp43yQG
お前ジェミニじゃねぇだろ
987名前:名も無きプレイヤー [sage] ID:lmS4V5Ee
お前にわかか? そのフレーズは使い古されてる奴だぞ?
乗ってやるのが常識みたいな奴だぜ?
988名前:名も無きプレイヤー [sage] ID:38nvFLQR
さぁ参加の準備しなきゃ! てか>>1も来るんなら失敗したくないし
一応ガードするからちゃんと死なないでよね?
989 名前:哀れな>>1です [sage] ID:21FqhMn1
善処するからおねがいたっけて!? (´;ω;`)ウッ…
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「ジェミニ・・・もしかしたら生き残れるかも!?」
がばっと顔を上げる彼女。既に顔が汗と涙と鼻水で酷い事になっていた。
もう死ぬしかないという絶望の中、彼等の言うジェミニと言うプレイヤーが参加してくれる可能性に賭けるしかなかった。
右手に巻き付けているソウルギアを眺める。もう使わなくなって3か月以上は過ぎている。今回のシーズン、彼女も最初は必死に生き残ろうとしていた。
コミュ障で他人と関わる事が極端に苦手な彼女は社会に出てすぐ親に見捨てられ、なけなしの金だけ手渡されて家を追い出された過去がある。
あれから更に対人が恐ろしくなり、まともな仕事にもつけず、見た目はちゃんとすればそれなりには見えるのでいっそ泡に落ちようかと考え、それも恐怖で出来ずに残った貯金を食いつぶしながらニートをしていた所をプレイヤーにされた過去があった彼女。
非現実に憧れを抱いていた彼女は直ぐにプレイヤーの事を調べ、それ関係の裏の情報も調べに調べつくし、ダークウェブ内のプレイヤー専門の情報サイトや取引サイト、その他様々な情報をどん欲に吸収し取り込んできた。
彼女のソウルギアもそんな彼女に呼応する様なタイプでミッション時に戦闘では役に立たない物の、色々貢献をし続けた事でレベル3にはなれたが、彼女の快進撃はそこまでだった。
戦闘力は低く、他人を信用できず干渉する事も出来ない彼女はあっという間に孤立した。誰かに助けを求める事も出来ず、結局はその世界にも自分の居場所はなく。稼げるだけ稼いだ後、彼女は再び引きこもりに戻ってしまう。
参加を拒否し続けていれば何れ殺される。最初は信じていなかったが、似たように参加していなかったプレイヤーが殺されたという情報を掲示板で何回も見続けているうちにそれが真実だと理解したが、既にもう遅かったのだ。
いま彼女が生き残る術は、今回のミッションでジェミニというプレイヤーが参加してくれる可能性を信じるだけというか細いもの。彼女の力では雑魚のモンスター相手でも苦戦する、レベルが高くても根本的に戦える性質とステータスではないのだ。
「死にたくない・・・まだまだ見たいアニメもあるし、ゲームも沢山あるのに! こんな所で死んだら全部終わりだよ!!」
ミッション開始までの残り時間は12時間を切っている。いつまでもここに引き籠っていても戦場がここになるだけで逃げ場所などない。最後の慈悲なのかシステム的な都合なのか、ミッション開始地点は町はずれの開けた場所、もしくは開始時に自分が立っていた場所となっている。
ここで始まってしまえば様々な宝物が消えてしまうので、急いで準備を整えた。
ポイントを大量使用して改造したスマホには彼女の大事な全てのデータが入っている。ここにあるのはその保存用と予備。スマホが死んでもここが残れば再起は出来る。その逆も出来なくはないが失うものは多すぎる。
「生き残れ、生き残るぞ、明後日のアニメを見るために! 久しぶりに起動、出てこい私のソウルギア! 【マシン・ザ・リバティ】!!」
腕に巻きつく無数の機械状のケーブルとそれに繋がったマシンゴーグルが彼女の道を示す瞳に変わる。その容姿はサイバーパンクの世界観に出てくるような全身に機械を身に纏った姿。
全身をある程度強化してくれるソウルギアの力を用いて、数か月ぶりに彼女は家の扉を開いたのだった。
目指すはミッション開始地点。
そこに強いプレイヤー達と頼みのジェミニが居る事を祈りながら彼女は夜の空を駆けていく――が、自転車より遅いスピードだった。素直に自転車に乗ればいいのだが、パンクしているので使えないという落ちだったりする。
色々グダグダだが、彼女なりに生き残ろうと必死に駆け出していった。
問題はコミュ障に追加してリアルの人間不信に近い彼女がまともにジェミニ―流川に話し掛けられるかという所だが、そこまで彼女は深く考えていなかった。
追加で言えば中身はともかく見た目がチンピラ等に見える御堂も一緒に居るので彼女がまともに動けるかすら分からない。恐らくひと悶着はあるだろう。だがそれは彼女が現場に到着してからの話だ――
―ミッション開始まであと【11:47:26】
―40話了
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新キャラ登場ですね。生き残れるんでしょうか?
生死はとりあえず今の時点では考えてません!!
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