第224話 決まり手はUWATENAGE
【うおおおおおおおおおおおおおおおお~~~~~~!】
【はーはっはっはっはっ! 見たか! これぞ私の力よおおおお! まっておったかいチョコハウスちゃん!!】
【あそこで! あそこで気を緩ませなければああああああ!】
【ははははははは! 負け犬の遠吠えが聞こえるのぅ!!】
「なんて・・・なんて醜い争いなんでしょうねー・・・」
「ガキの喧嘩を大人がやるとこうなるんだな・・・俺はしないようにしよう」
目の前にはものすごい勢いで絶望したかの様に泣き続けているピンク色のセーラー服力士の姿があった。
とんでも異世界相撲春場所、最後の決まり手は一瞬の油断を突かれたピンク力士が上手投げを決められ土俵、ではなく地面に叩きつけられそのまま埋め込まれて勝敗が付いた。
漫画のギャグ表現かの様に人型に穴が開いているのだから見ている御堂達はもう渇いた笑いしかでていなかった。内心は全員「もういいからはよおわれ」だったのは言うまでもない。
そこで一人ハトメヒトだけは「なんと芸術的な負け方か・・・! 我としてもこれはリスペクトしなくては! ありがとう! 力士殿よ! 我はこれでもう一歩先に行ける!」と埋もれていた力士に感謝を述べていたが、誰も突っ込まなかった。
※
そして結局チョコハウスとケーキを美味そうに頬張る勝者の力士。
美味い美味いと合否云々などどこ行ったと言わんばかりに食べ続けている。敗者の力士もそれはそれで板チョコとケーキを食べてご満悦なのだから、先ほどの勝負は本当に何だったのかと脱力する御堂と片桐だ。
綺麗に切り分けられたケーキはあっという間に彼等の胃袋の中に納まっていく。
「あー・・・・でだ? 合格なのか不合格なのかどっちなんだろうか??」
【美味・・・! 圧倒的美味! 私はここまで美味いクリームを食べた事がない! イチゴの酸味もクリームと合わさり、スポンジがそれにすさまじいアクセントを! そしてこのチョコレートハウス! ほろ苦さの中に甘みがあり、なんと最高なのか!】
【しかり!! 私としても残念ながら文字が書かれた板チョコかと思えば! これはこれで美味い! 文字が描かれているのもこれもまたチョコだとは! 我等はこれを食うために生まれてきたと言っても過言ではない!!】
【桃よ】
【あぁ、虹よ】
【此度の試練!】
【合格とみなす!!】
食レポが終わり、二体を顔を見合わせて頷くと御堂達に向かって満面の笑みで合格を言い渡した。
大歓声・・・がわく事はなかったが、それでもほっと一安心である。漸く次の階層に向かえるのだから、かなりの時間をとられた分次の階層等は急がないとならんかなと考えていた矢先、二体の力士がそれを制した。
「っと? 合格じゃなかったのか?」
【まぁ、待て。報酬を忘れておる】
【うむ。普通に合格なだけならば、我等もここを通すだけで終わったが】
【ここまでの物を用意してもらって、さぁ、ここを通るがいいだけでは我等の品位を疑われよう!!】
ちょんまげを結って、安いコスプレのようなセーラー服とまわしを身にまとい素足の謎生物のどこに品位があるのかと片桐とディーヴァが喉まで出かかった言葉を飲み込む。
どうやら御堂の作ったケーキは彼女達の大方の予想通りに最高品質だったようで、追加で報酬が貰える事になったようだ。
力士達は何処からともなく箱からセーラー服とまわしを取り出し。
「ごめん、それはいらない」
「!? 主殿!?」
となりで死んだ目してる筈なのにどこか輝いていたハトメヒトがそんな殺生なと言わんばかりに振り向くが、御堂としてはそんないろものお金をもらっても欲しくなかった。身に纏えと言われたら攻撃して破いてやろうかと思う位には。
【うむ、我等が聖衣であったのだが、仕方あるまい。少しばかりグレードが下がるがこれを持っていくがいい】
【今からやはり聖衣が欲しいと言われても渡せぬから、その時は諦めてくれ】
「多分永遠にないと思うんで安心してくれ・・・」
力士が渡してきたのは小さな瓶だった。120円位で売ってそうな某炭酸栄養ドリンクに似ている。ラベルなどはついていないが、表面はガラスなどに見えるのにそれとなく神々しい物だった。
「あー、これは?」
【うむ、それは「神薬・ドラゴンブラッド」死んでさえいなければ、ありとあらゆる病と怪我を一瞬で癒す事が出来る。ありとあらゆる病とはそれこそ不死の病であろうとなんであろうとだ。切断された四肢や眼球等も再生し、失われた五感や、記憶喪失、感情すら元に戻せる】
「ちょ・・・・」
「うわぁ・・・僕の持ってる奴レベルでやばいのがきたぁ」
「ケーキの報酬がこれって・・・どれだけ嬉しかったんだよこいつら」
【それはあまりに強い薬でな。そのまま飲めば軽い不老不死になるが、あくまで軽くだ。肉体は全盛期にまで回復し、老化が止まる程度。不死とは言えど肉体が消し飛ばされたらそこから回復できない程度の不死になるだけだ、安心するといい】
ほんのりついている若返りに肉体の最適化、更には不老と聞いて流石に少しばかり目の色が変わるディーヴァと片桐の姿があった。流石に永遠の若さを保てるとなれば気になってしまうのは仕方のない事だろう。
【逆に肉体が残っているならば心臓が砕かれようが首が飛ばされようが、頭部がなくなろうが再生する。流石に脳が消し飛ばされればその瞬間までの記憶はなくなるだろうがな】
ぽとんと手渡されたそれが、ディーヴァの持っているだろう【蘇生薬】レベルのやばい物という子に改めて背筋が寒くなる御堂がそこにいた。
少しばかり持っている手が震えてきたので直ぐにマジッグバッグにしまいこむ。ふと横目でディーヴァの方を見てみると、まるで同士が出来たとばかりにサムズアップしている姿があった。
【では、試練を超えし者たちよ! 先に進むがいい!】
【ここを超えたものであるならば、きっと最後の最後まであきらめずに進めると信じているぞ!】
あまりうれしくない激励を貰いながら御堂達は漸く1層目をクリアするのだった。
―224話了
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最初に渡されたセーラーまわしは50万ポイントクラスの防具です
見た目はともかくとても強いです。
見た目はともかく
見た目はともかく
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