第225話 ちょっくせーん!!
色々精神的に疲労はしたものの、誰一人大きな怪我をする事もなく御堂達は次の階層にやってきた。
勿論辿り着くと同時に前の階層に戻る為の階段は消えている。
到着した場所は古風RPGに出てくるような全体が石ブロックで形成された一直線の通路だった。周囲に扉や怪しい物は見当たらず、直線の先は暗闇に覆われて見る事が出来ない。
「さっきまでは広かったのに、今度は通路みたいな場所ですねー」
「ダンジョンだからなぁ、そういう物って事だろ。前回もそうだったしな」
「和風ホラーな階層もあったよねぇ・・・」
「あ、あれはめちゃ怖かった・・・」
その時の事を思い出して身震いする片桐。
何はともあれ進むしかないという事で、前をショコラとクレアが歩いて行く。
前のフィールドでもそうだったが前回の探索とは違いレジェンドスキル【神の右て】の補助スキルなどのお陰で、周囲に罠がないか、モンスターが居ないかなどをこれまで以上に自然に感知する事が出来ている。
まるで自分なのに自分ではない感覚になりながらも二人の感覚はこの直線の上下左右、空間全てを把握していた。
「それにしても直線しかないね?」
「だな、モンスターに襲われたら戦うのが面倒だ。結構狭いからな」
横幅も縦幅も5メートル前後とかなり狭く、並んで歩くのは難しい。必然的に隊列を組みながら歩くことになるので、いざ戦闘となればかなり厄介だろう。今の所は一切のモンスターも襲って来ていないが。
ショコラやクレアの探知に引っかかるものもなく、御堂達はただただ長い直線を進み続けていく。
「ある意味ダンジョンを潜ってる感じだなぁ」
「ですね。こういう直線しかない場所の場合、気が緩んた頃にトラップやモンスターが奇襲すると言うのが定番です、気を引き締めて行きましょう」
「だろうなぁ。ここじゃ片桐のドローンも難しいだろうし」
「出来ない事はないけどな。一応偵察させてみる?」
いそいそとドローンを取り出す片桐。
「お、やれるなら頼む。万が一ってのは出来る限り消しておかないとな」
「うん、任せろ。私のドローン捌きを」
言うや否や1体のドローンが奥に全力疾走していく。今の片桐ならば歩いていようが走っていようが、他の事をしていようがドローン1体を偵察に飛ばす程度苦でもなんでもない。強化された戦闘用ドローンはかなりのスピードと移動距離をほこり、最長で5キロ先までなら、マシン・ザ・リバティの探索範囲内の収まるのだ。
ゴーグルモニターにはドローンから映し出された光景が広がる。何故かこの直線は明かりも何もないのに、それなりに明るいのでライトを使う事もなく周囲を見回す事が出来る。
「んー、500メートル先までとりあえずモンスターもなにもないなぁ・・・全部直線だし」
流石にトラップは見つけられないので、そこはミューズ任せだが、それ以外の進路の把握や見えている限りの周りの情報は全てモニターに映し出され、同時に記録されていく。
「とりあえず限界まで飛ばしてみるよ。モンスター見つかったら教える。あ、罠とかは分かんないからね?」
「それはショコラ達に任せていいよ、りばっち」
「りばっち・・・」
得体のしれないあだ名みたいなのを付けられた片桐が少しばかりひくついたが何時もの事だとすぐ気を取り直す。
「前の階層もそうでしたけど、ドローンをこんな風に使うプレイヤーとか初めて見ましたよー」
「売ってるもんだし、誰かしらやってると思うんだけどなぁ?」
「そりゃ、飛ばしたりは出来そうですけど、リバティさんみたいには無理なんじゃないですかねぇ~」
片桐の持つソウルギアだからこそ出来る芸当なだけで、本来ショップに販売されているドローンなどは戦闘用とは言いつつも実際の戦闘では子供だましの様なものだ。大規模な操作ツールなどを用いれば出来ない事はないかもしれないが、ミッション中にそんな機材持ち込みながら戦う事などほぼ不可能。
それも片桐の様に複数台を同時に操作し、全か所を把握しつつ自分は自分で動ける等と詐欺も良い所だ。更にはそれらのドローンは全てソウルギアの能力でレベル2~3のモンスターと普通に渡り合えるだけの戦力すら持たせていると言うのだから、極めた場合、下手なプレイヤーでは片桐に近寄る事もできないだろう。
ディーヴァは知らないが、今の片桐ならば6台の戦闘用ドローンの他に追加して狙撃用の戦闘用ドローンを2台同時に動かす事が出来る。
その狙撃力はステータスも相まってとても高く、高速で上空を移動しながら超高確率で狙撃出来るのだから、その脅威は計り知れない。流石にこのような閉所では使う事は出来ないが。
「りばちー、なんか見えた?」
「あだ名がどんどん変わる件について。んー、そろそろ1キロ位だけどモンスターもいないし、道も代り映えしないなぁ」
「もしかしてループとか??」
「や、やめろよぉ・・・怖い事いうなって」
「にしてもモンスターもいない、罠もない、ただの直線の階層とかは流石にないだろ・・・」
「マスター。ディザスターだよ??」
「・・・あるかもしれんな」
サイレーン渾身の一言だった。
訳の分からない事も普通にやってくるディザスターの運営ならば、本当に直線だけの階層を作るかもしれないという妙な信頼があった。
何れは何かしらにひっかかるかもしれないだろうと、そのまま御堂達は歩き続ける。途中で罠があったりすることもなく、モンスターが湧いてくることもなく、ただひたすらに長い道が続いて行く。
「あ・・・階段あった」
「マジかよ・・・」
片桐がぼそっと、飛ばしていたドローンからの映像で今の場所から2キロ先に次の階層への階段を見つけてしまった。勿論道中にモンスターの姿は影も形もない。
「超手抜き、といった所であろうか。恐らくここは予算が足りなかった可能性が」
「やめい世知辛い」
「んじゃ、後はあーしらがトラップに気を付けて行けばいいだけど、と。いいんじゃない別に色々面倒な事になりたい訳でもなし」
「だな、1層目でいきなりケーキ作るよりはマシだろうよ」
結局この階層にトラップ等は無く、ただひたすら歩き続けて次の階層に向かっていくのだった。
―225話了
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そういうこともありますよね!!!!
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