第226話 人は簡単に死にます、だから、そういうものなんです
【祝30万PV達成】
皆さんのおかげでついに30万PVを達成する事が出来ました。
いつも皆さん本当にありがとうございます。毎度至らないお話ではありますが
出来うる限り精いっぱい頑張ろうと思います。
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まったく何もなかった直線の2層を超えると今度はおどろおどろしいフィールドに出た。周囲は薄暗く、枯れた木々がまばらに立っている。
その周りには和洋混合と言わんばかりに様々な国の墓の様なものがまばらに建てられている。そのどれもが朽ち果て、ホラーに出てくるような場所を思い起こさせた。
木々の腐ったような臭いや、どんよりと漂うまるで瘴気と言わんばかりの空気が辺りを覆っていた。
「ほのぼのから通路になって、ホラーとか順序が適当ですよねぇ」
「ダンジョンだからなぁ」
何度言っただろうか、「ダンジョンだから」とは良い言葉である。兎にも角にもまずは片桐がドローンを飛ばし、ショコラ達を前衛にして進もうとしたのだが、直ぐに片桐が何度もゴーグルの先を見渡し唸る。
「むー・・・だめだ、霧が酷くて何も見えない」
「やっぱりか、流石にどうしようもないしここからはクレアとショコラに任せようや」
「・・・うん」
言われた通りにドローン達を帰還させる片桐。しかしこういう時こそ自分の出番であるはずなのに役に立てない事に少しばかりの歯がゆさを感じていた。
次はドローンを改造して、悪天候でも問題なく調査や戦闘等を出来る様に改造しようと割と無茶な事を考えていたりするが、戻ってくるドローンを見ている途中、僅かに映ったそれを片桐は発見する。
直ぐにピントを合わせ場面を拡大させる。やはり霧でほとんど見えないが、10倍以上に拡大した事でそれが何なのかを理解してしまった。
「ヒッ・・・!? と、友樹! 友樹!」
「な、なんだどうした!?」
あまりの衝撃にケーキ屋という事すら忘れ恐怖から逃れようと近づいて腕にしがみ付く。急な片桐の行動に慌てた御堂ではあったが、直ぐに彼女の尋常ではない様子に落ち着かせながら、何があったのかを聞く事にする。
「落ち着け、ゆっくり、ゆっくりでいい。何かあったのか?」
「・・・・し、死体・・・プレイヤーの死体があっちにあった」
「っ!! わかった。場所を教えてくれ。ショコラ、クレア先行を頼む」
「了解まーちゃん」
「あいよ」
少しだけ落ち着いた片桐が震える指先で場所を指し示し、そこに向かって歩いて行く。ディーヴァとしてはたかが死んだプレイヤーを目視しただけでこれでは何かあった時役に立たないのではないかと少し危惧し、その能力はともかく、プレイヤーとしての精神性は落第点と、評価を下げる。
片桐も普通にプレイヤーが死んでいた程度ではここまで動揺する訳ではない。流石に目の前に死ねば錯乱するかもしれないが、プレイヤーである以上ミッション中に死ぬ事位分かっているので、ある程度の覚悟は出来ているが、彼女が見た死体は――
「ごしゅ、見つけたよ・・・あぁ、こりゃあの子が怯えもするわ」
「ひでぇな・・・」
御堂も流石に顔を顰める。
そこには「バラバラになった遺体」が6人分全て転がっていた。
ただ転がっていたわけではない。各部位ごとにぶつ切りにされた遺骸、胴体に至っては体格のいいものは横に三分割されている。それ等をワイヤーで突き刺し干物を干すようにまとめられている。
苦悶の表情で息絶えている頭部は、目玉をくりぬかれ、そこにワイヤーを通されていた。頭部、臀部、頭部、腕部、頭部、胴体・・・と、悪意しかなさそうな感じで全ての遺骸がワイヤーで繋がれてある。
最後にワイヤーの先が溶接され、遺骸で出来た輪が作られていた。
未だに滴り落ちる血液がこれらが死んでまだ間もない事を如実に示している。
流石にこれを見てしまえば片桐の様な普通の精神性を持つ人間では恐怖に怯えない訳がないだろう。ディーヴァはこれ以上に凄惨な死体などを見た事があるので特に気にもしていないが、悪趣味だなぁとは流石に思っていた。
「モンスターがやったのか・・・」
「これを人間がやったのなら、余程のサイコパスかもですねー。と言うか6人全員ン殺されてますし、ほら見てくださいあそこスマホとかが転がってます」
ディーヴァが指差した場所に血塗られたり割れているのもあるが、彼等が持っていただろうスマホが転がっていた。これらをやったのがプレイヤーかプレイヤーキラーだとして、目の前にソウルギアGAMEがセットされているだろうスマホがあれば確保している可能性が高い。上手く引き出せばポイント等を手に入るのだから。
だが、それらには一切手を付けた後がない以上、モンスターに襲われこうなった可能性の方が高いと言えるだろう。もしくはディーヴァの言う精神異常者の様なプレイヤーキラーとエンカウントしてこうなった可能性も0ではないが。
「何にせよ、このままじゃ浮かばれねぇだろうし、せめてポイント消費での埋葬でも頼んでおくか」
「優しいですねー」
「優しいっていうか、ま、お前さんプレイヤーキラーだしな、一応」
スマホを取り出して埋葬依頼を出そうとした時、それを遮った小さな手。
ハトメヒトが連絡するのを止めていた。
「ハトメヒト・・・?」
「うむ、主殿のその優しさ、我はとても好意に値する。だが、暫し待たれよ」
「なんかあったのか?」
「このまま埋葬するのも悪くはない、ないが。情報を収集するという意味では、減点となる。ここに至り、我もたまには役に立つという所をお見せしなくてはな。毎回ギャグばかりでは、ラノベで「アノキャラ出てくるいみあるんデースカ?」と言われてしまう可能性が無きにしもあらずんや。なので――」
ぴょいっと遺体の輪に近づいて行くハトメヒト。
「それにこれではあまりにも哀れ、哀れであろうよ。せめて、埋葬される前に僅かながらの浄化と、それと同時にこうなった原因を【彼等】から聞く事にしようではないか」
「な、何言って・・・?」
「こういう事は、我の役目よ。さぁ、無念を秘め絶えし魂よ、その御霊、幾許かの制約の下、天に昇る手助けをしよう。いざ、いざ舞い戻らん」
遺体の輪を中心としてその下からおぞましさを感じさせる黒い魔法陣が展開される。それを御堂は前に見た事があった。
「お、おいっ!? それっ・・・!」
「いざや目覚めよ、目覚めよ。我が貴方達を苦痛より僅かに開放せん・・・!」
【オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ・・・!!】
ぶるぶると震える遺骸達、魔法陣から現れた黒い手が、溶接された輪を引きちぎる。そして―――
「その無念、我が引き受けようぞ。【屍誕陣】」
ハトメヒトが魔法を発動させた――
ワイヤーから解放された遺骸がそれぞれ動き出し、人の姿を形成していく。但し・・・アンデッドとして。
【あああああ・・・・あああああああああああ・・・・!!】
そこには6体の殺された哀れなプレイヤー達の姿があった。
―226話了
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まさかのネクロマンサーハトメヒト。
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