第74話 出来る限りはしてみるけど、出来る気がしない

皆さん今日も閲覧ありがとうございます。

毎日帰る時間が遅くなりつつある今日この頃、なんとか

書き上げる事が出来てる感じですね。毎日短くて申し訳ない限りです。

少しでも楽しんでもらえますように。

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 ディーヴァは純粋に驚いていた。


 まだ倒せていない、まだ立ち向かってくる。ダメージを最小限で防ぎ、受けた時は回復アイテムで無理やり回復し、マスターであるジェミニを護りつつ、この弾幕とファンクリーチャーの攻撃を捌いている。


 おおよそレベル4の実力ではない。リジェクションはレベル5だと言っていたが、確かにレベル5に匹敵する実力があるのは確かだ、相手が虚偽報告していたのはこの実力を勘違いしていた可能性があるかもと、ほんの少しだけ評価を上げる。今の評価はダニと同レベルだ。さっきまではウジと同レベルだった。違いが分からない。


 自分自身完全な戦闘系とは言い辛いが、これでも先生と慕うプレイヤーキラーに色々指南してもらっているのだ。彼からすれば教えているつもりは毛頭ないが、それでも色々見せてくれるので、門前の小僧と言わんばかりに戦い方を吸収している。


 だからこそ、直接戦闘が出来ないというデメリットを無視してここまでの実力を手に入れたのだ。圧倒的火力で秒で倒されると言う様な、先生みたいなタイプなら兎も角、召喚タイプには何をどうしても勝てる自信はある。リジェクションなど餌の様なものだ。


 後一番驚いたのは、先ほど攻撃が直撃し魔力弾が命中したカストロが倒れたと思った矢先に復活した所だ。スキルには【食いしばり】や【死からの生還】などの倒れた時に回復したり、生き残ったりするスキルがあるので最初はそれかと思ったが、一度倒れたカストロが2度3度と、何度でも起き上がってくる時点でスキルではなく、ソウルギアの特性ではないかと睨んだ。


 ジェミニは2体。少女タイプのポルクスは後ろからの射撃を得意とし、一応前衛もこなせるようだ。そして少年タイプのカストロは見た通りの前衛系。とてもいいバランスだろう。回復系や支援系まで揃えば手強い所の話ではないが、この時点で十分レベル4としては強者になる。


 歌いながら観察していた所、ジェミニ達の行動が時々おかしくなるのを発見した。


 時々不自然にカストロが攻撃を吸い込むのだ。そして倒れては直ぐに復活する。最初はわざと倒れて回復して向かってくるゾンビ戦法かと考えたが、それなら最悪自殺して復活してくればいい。わざわざ不自然に攻撃を受ける必要ないだろう。


 此方に何かを見せたくないからかと考えたが、カストロが挙動不審になる時は必ず、後のポルクスに攻撃が集中しかけている時だった。そして同時に自身にも攻撃が集中しているという状況。


『あー・・・そうかジェミニってそういう事なんですね。「同時」に倒さないと無限に復活してくる奴だ』 


 答えに辿り着いてしまったディーヴァ。


 ジェミニは全く同時に殺さない限りは無限に回復し再生するという特性がある。そしてその同時のタイミングは1秒以下、レベルが上がれば上がるほどこの秒数は短くなっていく。今では0.3秒以内に同時に倒さなければ【完全回復】して復活するようになっていた。


 勿論万が一の保険として、同時に死ぬ可能性を考慮して食いしばって生き残る系のスキルはお互いに付けているので、数回は何とか耐えきれる。そして全く同時に殺す方法はそれこそ範囲殲滅で殺しでもしない限りは早々出来る事ではない。


『うーん、なるほどなぁ。リジェクションじゃ倒し切れない訳だ。あれ相手を舐めてるし、広範囲攻撃とか持って無さそうだしなぁ』


 となれば話は早い。元々殺す気はないが、出来る限り追い込むつもりだ。油断すれば負ける可能性もあるので、一切の油断はせず、それでいて殺さないように注意しながら彼等の実力を把握できればいい。


『ただ問題は・・・あと数曲歌ったら喉が死ぬぅぅぅぅ』 


 ディーヴァと言うソウルギアの特性上、歌って踊る事で効果を発揮するので、絶えず踊って謳わねばならない。多少のインターバルはあるものの、その時間も1分あるかどうか言う所だ。無双出来る様な性質のソウルギアではあるが、勿論無敵ではない。


『あ、そか。後1曲って所で見逃して~とかやればいいですね』


 それならば相手も時間制限を耐えきったと思ってくれるだろう。それで此方を攻撃してくる可能性もあるが逃げる準備は勿論整えてある。彼等から逃げるのは容易い。


『それにしても・・・本体が上手く避け続けてるなぁ。予定だったら本体は直ぐ倒れて、強者ムーブをしつつ見逃してやろうフフフフフをやろうと思ったのに』


 見た目がゴスロリ天使アイドル姿でそれをやるのはシュールを通り越して異様ではあるが、そこまでは思いついていないようだ。


 弾幕をぎりぎりで回避し、どうしても回避できない攻撃はスキルか何かで打ち消している。時間の問題だろうと思っていたが、2曲歌い終わってもクリーンヒットはしていない。だが、あの様子ではそろそろ限界の様に見えた。


『ソウルギアは確かに強いし、彼も凄いけど、これだけだったら流石に負けるかと言われたら難しいんだよなぁ。やっぱり何か隠してる切り札があるのかもしれない』


 流川の目は諦めている目ではなかった。今も現状を打破しようとあの状況の中で思考を巡らせていた。既に彼自身、ディーヴァに勝とうとは思っていない。勝てる様な相手ではないのはこの波状攻撃で嫌でも理解した。


 なら彼が今できる事は死なずに、相手に追われずにセーフハウスまで逃げる事だ。そしてしばらくこちらに戻る事も出来ないだろう。会社もばれている時点で、明日以降も仕事に来るのは自殺でしかない。このプレイヤーキラーが翌日も律義にここで待っているとは思わないが、可能性がある以上、表の立場は捨てるしかない。


 社会人としてはそれなりに成功してきた流川だったが、命には代えられない。そうなれば話は早い。これだけは使いたくなかったが、と自嘲しつつも残っていた最後の切り札を切る事にした。











【聞こえますか二人とも】


 二人に流川の声が聞こえてくる。時々途切れているのは攻撃を回避しているからだ。だがそれでも分かりやすいように話し続ける。


【パパっ!? 大丈夫なの!?】


【えぇ、念話出来る余裕は多少・・・! ふぅ。二人とも聞いてください、この相手には勝てません。後1レベル上がれば話は別だった・・・っ! かもしれませんが】


【悔しいけどね、歌って攻撃してくるからその歌を止められればと思ったけど厳しいよ】 


 ディーヴァは正にサイレーンの様な戦い方をしてくるが、彼女の攻撃は対処しやすい事に対し、此方は防御も満足に出来ていない。下手に防御すれば大ダメージになってしまう以上、攻撃を回避するか無効化するしかない。


 もしサイレーンが目の前のプレイヤーキラーの様な戦い方が出来る様になったら、もうただの後方支援とは言えなくなるだろうなとカストロが考えた。


【申し訳ないですが最後の手段を使います】


【・・・そか、それしかないなら私は大丈夫】 


【久々だなぁ、もう使う事なんて無いと思ってたのに】 


【すみません二人とも】


 申し訳なさそうな流川の声が念話として届く。


 今からやろうとしている事は、ほぼ自殺に近いそんな自爆技だ。上手く行っても被害は免れない。だが上手く行けば逃げる事が出来る。倒せる可能性もあるかもしれないが、対処はしているだろうし、そこまで欲深くしてもいられない。


【順番は任せます。後は僕の指示通りにうご・・・つっ!!】


 念話の途中で魔力弾が脇腹を掠った。酩酊する意識を自分の腕にナイフを刺して無理やり覚醒させる。


 鋭く熱さ感じる痛みが意識を完全に覚醒させた。


【ぱぱ・・・!】


【大丈夫ですよ、ここを乗り越えて・・・帰りましょう】 


 ダメージを受けた流川の声に涙が溢れるポルクス。溢れる涙を腕のすそで強引拭い去り、覚悟を決める。


【カストロ、最初は私から行くわ】


【わかった。まずはマスターの言う通りに動くよ。気づかれない様にね】 


【パパにこれ以上、苦痛なんて与えられないわ。絶対に成功させる】


 乱射していた銃器を全て捨て、一本の剣を取り出す。


 シンプルな装いの片手剣、種類的にはロングソードだ。普段銃器を愛用している彼女には不釣り合いな近接武器。しかし・・・本来のポルクスの得意武器は銃ではなく、この剣なのだ。


 ソウルギアとしての固定スキル【ベータポルクス】ありとあらゆる剣技を最上級以上の技量で扱い戦う事が出来る、彼女特有のスキル。いざ剣を使えばその技量は正に無双になる。弱点としてはポルクス自身の戦闘力はそこまで変わらないので、剣技だけが達人や超人になるスキルだ。


 だが、彼女が完全に本気になった時は銃ではなくこの剣を持つ。


 マスターであり父と慕う流川から与えられた銃と剣。先に渡されたのは銃なので彼女としては銃器を使いたいが、いざ確実に相手を倒すとなればスキルの影響があるこの剣を使うのだ。


 絶対に負けられない戦いがある時のみ、剣士としての彼女が顔を出す。


 それを歌いながら見ていたディーヴァが突如銃を捨てて剣を持ち始めたポルクスを見て警戒度をさらに上げた。どう見ても銃器を用いての攻撃がメインだった彼女がそれを捨てて剣を持った――


 可能性として考えられるのは銃を使うより、剣を使う方が強いかもしれないという事だ。そしてそれは当たった。


「?!」


 見ていた筈なのに見失ったポルクスが目の前で剣を突き出していた。


 それを強化された巨人になっているファンが己の身体を盾に防ぎきる。突き刺した剣は折れる事なく、一瞬で引き抜くと目にも留まらぬ速さで漆黒の物体を切り刻んでいく。同時にカストロがわずかに移動しながらも他の巨人を相手にしている。


「はやっ!? びっくりしたぁ・・・」


「殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す!!!」


「どっちがプレイヤーキラーか分からないんですけど? ええぃ、ファンの皆おねがいしまーす!!」


 縦横無尽に敵を切り刻むポルクスに呼び出した漆黒のファン達が襲い掛かっていく。上手くモンスターを引き付ける事に成功しているようだ。カストロは内心ほくそ笑むが、同時にこの後を考えると少々気が重い。


 あの状態のポルクスは限界以上の力を発生させている。勿論代償も重いが、これからやる事に比べれば全然マシだと言える。


 ディーヴァがポルクスの狂乱状態に目が行っている今のうちに、カストロは最後の準備を始める事にした―



―74話了



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実はこのお話、昨日の時点でほぼ書き上げました(マテ

73話と74話を同時にやった感じですね、ですが投稿は今日なので毎日投稿

と言う事で許してあげてください。一応途中である程度手直ししてますが

やはり文章と言うのは難しいですね。思うように書けないのがもどかしいです。




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