第13話 相手を殺した云々の葛藤を戦闘中にすると死ぬ
【注意】
第三者視点です。
一人称視点での地の文は楽でいいのですが、表現が難しいですね。
色々と忘れていることが多いです。
皆さんいつも閲覧有難うございます。
まだまだ至らぬ所ばかりですが、少しでも楽しんでもらえると嬉しいです。
後、誤字脱字が多いですがどうかご容赦を。
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レッサーグール達が雑草を薙ぎ払うかの如く蹴散らされていく。その中心では佐伯が台風の如く巨大な剣を振り回し暴れていた。既に百体程度は倒しているが、一体一体を確認している余裕はない。
レベル差はソウルギアを装備していることで劇的に優勢ではあるが、それでも油断は出来ない。数で押し切られ押しつぶされて圧死と言う事も無くはないのだ。流川が身に着けているような超高価な防具は変身型のソウルギアと合わせて装備する事が出来ない分、数で襲ってくる相手は少しばかり苦手なのである。
「オラァ! どんどんこいやぁああああ!!」
だが戦闘中の彼はそんな小難しい事は考えない。考えられないと言った方が正しいか。ただ湧き上がる力のままに、生き残るために病気に臥せっている母親や小さい弟たちの為にポイントを稼いで金を貯めるのだ。生き残ればポイントが貰える。ポイントがあれば母親の入院費や手術台も捻出できるし、家族の食費や学費も賄える。出てきた金の出所に関しても、流川と言う大人が色々と手を尽くしてくれたので問題ない。だからこそ、佐伯は恩義に報いる為に、そして生き残ってポイントを稼ぐために
出来るだけ流川が参加するだろうミッションへ足を向け、共に戦っていた。
「ふぅ、ふぅ。少し休憩って訳にもいか――」
無双していた佐伯だが、ソウルギアを纏っているとは言え体力が無尽蔵と言う訳にはいかない。ある程度レッサーグール達を薙ぎ払ったら、復活してくるまでの少しの間に出来る限りの休憩を取る。1分でも30秒でも休めればこの体はある程度は回復してくれるのだ。
更に言えば、戦っているのは彼一人ではない。再び湧き出したレッサーグール達が銃弾の雨に撃たれて次々と倒れていく。その近くでは両手に1本ずつ巨大な鎌を振りかざしてレッサーグール達を薙ぎ払うジェミニ達の姿があった。
その他には他の参加者も複数名ほど自分たちなりに戦っているのが見える。どちらも【装備型】のソウルギアだろうか、凄まじい速さで切り付けていくプレイヤーや、腕に巨大な何かを身に着けてそれを叩きつけて爆発させているプレイヤーもいる。
そして最後の一人は―
「お? あのおっさん意外とやるじゃねぇの。まさか本気で自分で戦うとはなぁ」
目線の先にはたった今レッサーグール1体を殴り倒した御堂の姿があった。初めてモンスターを倒したのだろう、動き方がとてもぎこちない。それでもソウルギアの支援効果なのか、元々ど根性でも持っているのか、次にまた襲ってくるモンスターを相手に殴る蹴るで応酬している。どちらもレベル1なら強化があるソウルギア持ちの方がレッサーグールより余裕で強い。御堂が放った渾身の一撃がレッサーグールの胸を貫通し吹き飛ばしていた。
「俺もレベル1の時はあんなだったなぁ。てか母ちゃんや弟たちが居なかったら諦めてたぜ、って! やべぇ! このままじゃポイント持っていかれちまう!!」
「あははっ! もっと休んでてよかったのに~」
佐伯のすぐ横にまで飛んできたジェミニの少女。佐伯も彼女達の名前は未だに教えてもらっていない。二人にとっても彼等プレイヤーは潜在的に敵になる可能性があるから基本的には彼等を信用はしていても信頼をする事がないのだ。だからともに助け合ったりはするし、ある程度の融通もするが。マスターであり父である流川の得になるかならないかだけを彼女達は考えて行動している。
レベル4まで強化された彼女達は普通に使う武器でも十分レッサーグール達を蹂躙できる実力を持つ。今回の様なミッションならばPKさえ気にしなければ絶対に負ける事のない簡単なゲームだ。その分クリアポイントは大したことがないので、数を多く倒さなければポイントをまったく稼げない。少年の方はもう少し歯ごたえのあるミッションで大きく稼ぎたいと思い、トリガーハッピーの気がある彼女は敵を蹂躙しつつポイントが貰えるこのミッションを自分なりに楽しんでいるようだ。
「馬鹿言え!? 休憩は終わりだ、ぶちかますぜえぇええええええ!!」
このままでは大多数をあのジェミニ達に取られてしまう。一応守ろうと考えていた御堂の方も何とか戦えているのが見えたので、負けられないと再びレッサーグールの森の中に突っ込んでいった。
「相変わらず脳筋よねぇ~。と言うか、今日は他のプレイヤーもそれなりにレベル高いの多いわね。結構数持っていかれちゃうもの」
ジェミニ達の現在までの討伐数は持っているアプリで確認出来ている。現在は二人で【306体】程度だった。本来ならばもっと狩れている筈なのだが、今回は佐伯を含めレベル2以上のプレイヤーが多い所為か、彼等にどんどん討伐されているのでそこまで多くのポイントを稼げていない。マスターの役に立ちたい二人にとっては楽ではあるが嬉しくないと言った状態だろう。
「最低でも500はいかないとね。あの人にマスターがあげちゃった分は取り戻さないと」
無造作に両手の鎌を払い、レッサーグールを切り捨てながら少年は言う。
「おにーさんにあげた分なら取り戻したじゃない? てか、結構頑張ってるよねぇ」
「あそこまで完全にお膳立てして喚き散らされたら流石に僕もキレそうだよ」
「大丈夫だって、パパのお友達なんだよ? ならきっとパパに役に立ってくれると信じてる」
「ケーキが美味しかったから絆されちゃったかい?」
「もう市販のケーキには戻れない! あんな美味しいの初めて食べたもの!」
御堂に対しては少年よりも少女の方が信頼度と好感度が高かった。流川の親友であり、寧ろ流川の方が御堂に対してかなり親身に対応している以上。裏切らない限りは二人とも御堂をどうこうしようとは考えていない。更に言えば回復が出来る珍しいタイプのソウルギアもいる以上、あの二人を強くする意味は大いにあると考えている。
少女も御堂が作ったケーキがかなり気に入っているので、出来る限りは手伝ってやろうと思っていた、あれが死んでしまったらもうあの甘味が食べられないと考えると勿体ないからだ。異性タイプのソウルギアにしては珍しく他の男性にもある程度の理解を示している。レベルが高くなった恩恵なのか、ジェミニという二人だけの特性なのかは彼等自身分かっていない―
「ここならっ!!【マキシマムバンカー】!! いっけえええええ!!」
咆哮一閃、レベル2のプレイヤーのソウルギア【マキシマムバンカー】が大爆発を起こし周辺にいた数十体のレッサーグール達を肉片に変えた。そしてそこからそれらが唸りを上げて燃え上がり、周辺に生き残っていたモンスター達を巻き込んで焼き尽くしていく。
「はぁっ、はぁ・・・数が多いけど、まだなんとか行けるっ!」
彼にとってこれが4回目のミッションになる。知っているプレイヤー達がこの4回でほとんど居なくなってしまった。モンスターに殺されたり、怯えて逃げ出して変死体になったりと色々な理由があったが、彼の知り合いはもうほぼ残っていない。
次に死ぬのは自分だろうか、そんな恐怖と戦いながらも、生き残るために彼は消費したマキシマムバンカーを再びチャージさせていく。彼のソウルギアであるマキシマムバンカーは腕に装備するパイルバンカーの様な超パワータイプの武器だ。チャージした後に放てば周辺の全てを衝撃と爆炎で全て粉砕する事が出来る。弱点はチャージする時間が10秒も必要と言う事だ。この為、タイマンなどでは有利に戦えるが、今回の様な一体多数の相手の場合、チャージしている間に押し切られる可能性がある。そのため一度発動させた後は全力で逃げ回り、ソウルギアをチャージさせては再び倒していくヒットアンドアウェイを取り続けるしかない。
「2500体、いったい今何体倒せてるんだろう――くっ!?」
『GUROOOOOOOOOOO!!』
あまりの討伐数の多さに辟易しながらも生き残るために逃げ続けては攻撃を続ける彼。よく見れば彼もまた佐伯と同じく学生なのがわかるだろう。ただし彼は高校生ではなく中学生ではあるが――
気が付けば周りに30を超えるだろうレッサーグール達が囲んでいた。チャージにはあと数秒ほどかかる。たった数秒だが、このままでは逃げきれずに何もできずに殺されるだろう。目の前にある恐怖を振り払うようにチャージ中のマキシマムバンカーで大きく口を開けて噛みついてきたレッサーグールを殴りつけ弾き飛ばした。
「あと3秒なのに!」
「伏せろ!」
「っ!!」
突如怒号が聞こえ、その声に従うように彼はその場に伏せた。その真上を何かが通り過ぎたような気配と寒気を感じる。薄目を開くと周りにいたレッサーグール達が全て切り払われている―
「無事かっ! まだ戦えるか!?」
「は、はいっ!」
チャージも完了し彼は立ち上がる。隣には今も尚周りのモンスター達を斃し続けているもう一人のプレイヤーが居た。彼はそのプレイヤーの事をある程度知っている。
彼は生き残っている知り合いと言うには関係はほぼないが、それでも参加したミッション中3回を共に生き残り協力して戦った事がある青年だった。
「お前のソウルギアも必要だ、こいつら全てを、ディザスターやこれに参加してる屑どもを倒すために、力を貸してくれ!!」
「わ、わかりました! 僕が一撃を入れますので、周りの弱っている奴をお願いします!」
「任せろ! ディザスター! 見ているか!? こんなふざけたゲーム、俺が俺達が絶対に終わらせてやる! 終わらせてやるからな! お前達全員を俺は許しはしない!!」
その瞳は憎悪に燃えていた―――
―13話了
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ミッションモンスター
【レッサーグール】
パワー:2 マジック:0 ガード:0 レジスト:0
様々な低ランクミッションで登場回数が多い、所謂雑魚モンスター。
戦闘力もかなり低いので、普通の人間でも達人とかなら数秒は生きていられる。
腕力も低く、普通乗用車を1分位程度しか持ち上げられないし、
それを時速30キロ程度でしか投げられない、ちなみに割とコントロールは良い
―Q つまり?
―A 普通の人間じゃ死ぬ
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