第190話 次のシーズンまであと3か月って短い? 長い?

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 シーズンは6か月の間行われ、そののち6か月の間は自由時間となる。


 1年の内半年を死に物狂いで生き続けなくてはならない、だからこそこの半年の時間は割と安全に生きる事が出来る短い時間、なのだが―


「ぶっちゃけ、長すぎますよね? こうだるだるーってなる感じで」


「・・・なぁ?」


「はい? どうしましたー?」


「なんで俺はここに呼ばれてるんだ??」


 ここはフライドチキンが食べ放題の前に来た店。


 そして目の前にはディーヴァが美味そうにフライドチキンを食べていた。


「そりゃあ、僕が呼んで、ケーキ屋さんが来てくれたからですよー?」


「俺は大事な用事があるって聞いたんだがな・・・?」


 先日、急にメールでディーヴァからとても大事な用事があるから話をしたいという内容を受け取り、万が一を考えてサイレーン達を召喚解除して全員連れてきている。もしかしたらプレイヤーキラーが関係してて面倒なことになったのではないか、そう思ったのだ。


 が、待ち合わせの場所でいつも以上のゴスロリ服になっていたディーヴァにここで話はなんだからと連れてこられた店が、ここだった。


「まぁまぁ、今は美味しく頂きましょうよ? 好きですよね? リブ」


「俺が好きなのはドラムだっての」


「あはは、わかってますよー」


 どこに消えてるのか分からない程の量を食べてるのに、その所作はどこぞの令嬢みたいなんだから不思議なもんだ。


「さて、アクセルさんとの取引何ですが、蘇生薬とアクセルさんの持っているアイテムとのトレードなんですけど、色々調べた結果、【それじゃ足りない】みたいなんです」


「む・・・そうなのか? あいつの手に入れたレアもかなりのもんだったが」


「ですねー、僕としてもどうにかして絶対欲しいものです、で、私が妥協すればいいかなーと思ったんですが」


 むむむーと唸っていたディーヴァが更に続ける。


「こちらを完全に敵視してくる人に妥協するって、ないですよね?」


「ぐっ・・・」


 まぁ、そう言われればそうだ。


 お互いに円満に取引相談出来れば妥協点も見つかるのだが、アクセル、山崎にとってはディーヴァは絶対に殺すべき対象の一人だし、態度を軟化させるのは難しいだろう。寧ろ取引に応じるって時点で十分譲歩しているともいえるが・・・


 それは山崎側の心情の問題で、トレードには寧ろ悪影響しかない。


「となれば取引に追加で50万ポイント相当品を追加してもらおうと思います」


「50・・!? さ、流石に無理だろ」


「とはいえー、これで漸くこっちが少しマイナスですからねぇ、これ以上の譲歩は出来ませんよ。それなら残念ですが交渉は決裂です」


「あー・・・まぁ、伝えて置くわ」


「宜しくお願いしますねー。あ、欲しかったらケーキ屋さんにも譲ってあげますよ?」


「俺は欲しいと思ってないし、そもそも対価になるもんがねぇよ」


 山崎が使ったのも俺が手に入れた奴だからな。


 この前考えたのは、フェアリーズの事だが俺の勝手で蘇生してもな・・・


「僕としても蘇生薬なんて結構重いんで処分したいんですけどねー、でも、だからといって好ましくない相手に融通なんて聞かせられませんし」


「あいつはディザスター側絶対殺すマンだからな・・・」


「あー、大体のプレイヤーの人はプレイヤーキラーは全員ディザスター側っていう考えなんですねー」


「まぁ、あっちが推奨してるのをやってればそうなるんじゃないのか?」


 俺がそう言うと「むー」と難しそうな顔をして言う。


「別にプレイヤーキラー全員が全員ディザスター側じゃあないと思いますよー? ほら、サリエルちゃんなんてその筆頭でしょう?」


「それは、確かにそうだな・・・」


 生き残る為にあえてプレイヤーキラー側に身を置いていたサリエル。だがいつまでもそんな立ち位置にはいられないと俺達に保護を申し出てきたからな。彼女は別にディザスター側じゃあないし、寧ろ巻き込まれた被害者ともいえる。


 フェアリーズも多分確実に被害者だろうな。


「それらは基本的に視野の狭い人の考えですよー。悪いプレイヤーを倒すプレイヤーキラーとかも居るんです。ほら一昔前のゲームで言うとPKKとか?」


「いるんか? やっぱりそういうのも」


「刹那の殺しとかがやりたい~ってのは寧ろ少数ですよー? 力を手に入れて溺れる奴もそれなりにいますけどね」


 力に溺れるか・・・実際俺達はレベルアップというゲームみたいな概念で強くなっている。力自体は制御出来てるが、今の俺でも軽自動車位なら持ち上げられるようになったからな。


 サイレーン達のブーストまで掛ければ100メートルを数秒かからず走り抜けられる。やった事はないが全力で走れば高速で走ってる車すら抜いていけそうだ。


 そんな力を手に入れてしまえば、自制心がなかったり、色々闇を抱えてる奴なら我慢できずに使ってしまうんだろう。


「そういう奴等こそ、ミッションを楽しみにしてるんです。だからこのシーズン外ではそれらを持て余すんですよ」


「だからこのタイミングであいつらは暴れるって事か」


「日本だとその傾向が多いみたいですね、外国だと寧ろミッション中に狙われたりとかあるみたいですよー」


「あー、もうそこまで行くとわからん」


「だめですよー? 思考を柔軟にしないとー。とまぁ、それを伝えてほしかったんですよー」


「わかった伝えておく。多分取引は破談になるかもしれんが」


 俺がそう言うと、ディーヴァは近くにあったチキンをひとつかみして食べ始める。


「それならそれでですねー。あ、でもせっかく敵対関係は解消したんですし、なにかあったら連絡していいですかー?」


「俺は構わんが・・・」


「よかったよかった。それじゃ難しい話も終わったので食べましょう♪ 話してたらお腹空いちゃいましたし」


「まだ食えるんかよ!?」


 既に20ピース弱は余裕で食べてるのにまだ食えるのか・・・美味そうにチキンを頬張るディーヴァに俺は違う意味で戦慄を隠せなかった。

 


―190話了



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山崎君、トレード失敗しそうな模様

あさねこは1個半食べると限界です。

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