第191話 取引は失敗です
【カクヨムコン9】参加中です。皆さんよかったら応援お願いします。
今日も閲覧ありがとうございます。少しでも楽しんでもらえたら嬉しいです
いいねや☆レビュー、フォローなどとても励みになっています。
【重要】いつかはまだ決まってませんが、ある程度目途が付いたら
一度休止する予定です。お仕事や投下などで時間が取れないので・・・
──────────────────────────────────────
結論から言うと、山崎とディーヴァの取引交渉は失敗に終わった。
対価が釣り合っていないのだから仕方ないと言えば仕方ないだろう。お互いに知人ではあるが、消極的な休戦状態という相手、お互いに譲歩などは出来る訳もない。
山崎の方も至極あっさりと取引を打ち切った。今は新しく蘇生薬の取引を探しているが、次に蘇生薬を手に入れるのはいつになるだろうか。
俺としてはお互いの心情に関する事、話をつなげる事は出来るが意思を曲げさせて云々までは出来なかったのでこれ以上はどうしようもない。
ディーヴァの方も厄物を残すのは嫌がっていたが、最悪何処かに売るとも言っていた。その場合は俺になら優先的に売ると言っていたが、何故かあいつの中で俺の信頼度というか友好度が高いのかはわからん。
時間はあっという間に過ぎ既に3月も間近だ。
その間にやっている事と言えば、鍛錬や情報収集、休息など別段そこまで変わった事はやっていない。
この間にサリエルがセーフハウスに来たり、次のランダムミッション云々の情報が流れて全員参加しなかったりと、そんな感じの日々を過ごしている。
後は結構な頻度でディーヴァからどうでもいい連絡が来る程度か。
暇なのか分からんが本当にどうでもいい連絡をしてくるんだよな。どこどこの飯が美味かったとか、可愛い服が見つかったのでサービスですとか言って写真を見せてきたりとか。
俺は俺で流川と会ったりして来月のホワイトデーの為にキャンディーなどの練習を重ねたりしている。このホワイトデーが終われば残ってるのは4月の花見や5月のゴールデンウィーク位か・・・そしてそれが終わって6月、次のシーズンが開催される。
そう考えると、こうして精神的に休める期間はあと3か月程度しか残ってないんだな。そこからはまた命を懸けた戦いが月に数回の頻度で発生する。1回2回休むことは出来たとしても、何度も休めば片桐のような目に合う以上、そんな事を続けることは出来ない。
これを楽しみにしている奴等もいるんだから、本当にいろんな人間が居るって気づかされるわ。
ふとリビングを見まわせばサイレーン達が今日もいつもの様にそれぞれのんびりしている様子が見て取れる。
この時間がいつまでも続けばいいのに、そういう訳にも行かないのがな・・・ここの所ほぼ毎日の様に、そんな事ばかりを考えてしまっている。
命を懸けた戦いから少し離れてしまっているからこそ、なんだろうな。
「ご主人様、ココアお替りどうですか?」
「お? 悪いな頼むわ」
「はい♪」
いつの間にか近くに居たテルクシノエーがココアのお替りを作ってくれる。俺はケーキ好きという事で基本甘党なので、ココアも甘めが大好きだ。砂糖が少ないココアはあんまり好みじゃあない。コーヒーならブラックでもいいんだがな。微糖は苦手だ、カフェオレとかオリジナルと書かれてる甘いコーヒーならいける。
直ぐに暖かいココアを持ってきてくれた。
程よく湯気が立つココアを少し冷まして一口。うん、甘くて美味い。やはりココアはこうじゃなきゃダメだろ。無糖ココアが好きって言う奴もいるが、俺は甘い方が大好きだ。別にそいつに砂糖を淹れろなんて言ったりはしないが。
「美味い。ありがとうな」
「いえ。お口に合ってよかったです」
「折角の休養日なんだ、ゆっくりしてていいんだぞ?」
「はい、十分以上にゆっくりさせてもらってますよ」
にこにこと笑顔で言うテルクシノエー。俺のすぐ近くに座り、自分もココアを飲んでいる。その姿も映えている、芋ジャージなのは相変わらずだが。
「今日は暖かいな、もう少しで春が来るかねぇ」
「ですね、私も早く春が来てほしいと思います」
「はは、テルクシノエーも寒いのは苦手か?」
「それもありますけど――」
軽く笑みをこぼして彼女は言う。
「ご主人様との初めての春ですから、それが楽しみです」
「・・・・」
まったく、なんて破壊力の高い事を言うかねこの子は。と思ったが、言った本人も少し顔を赤くしてコップで顔を隠してた。なんだよこの可愛い生き物。
「ご主人様??」
「いや、なんでもねぇよ」
「そうですか」
そこで言葉が途切れる俺達。
気まずい訳ではなく、二人して周りで騒いだりしている様子を眺めてみている。そんな時間が何と言うか心地いい。
サイレーンは皆の前だと結構賑やかだが、二人になっているとはかなりしおらしいし、不思議系な感じになったりして、静かなのを好んでいる。
意外や意外で、それはショコラやクレアも同じだった。俺のソウルギアだからなのか、元々そういう性格なのか・・・いや、今はそれはどうでもいいか。ただこの時間をのんびりとさせてもらうとしよう。
そういえばサイレーンが一人でペンを持ってノートとにらめっこしているが・・・
「サイレーンは何やってるんだ?」
「どうやら自分で歌詞を考えているみたいなんです」
「菓子? いや、歌詞・・・か? なんでまた?」
「サイレーンのスキルは歌を歌う事によっての攻撃や支援なので、自分で歌を作ってそれを歌えば、様々な支援や攻撃などのバリエーションが増えるんじゃないかとの事でしたね」
「成程な・・・確かに、歌で色んな効果だしてたしな」
そうか、これからの事をサイレーン達もちゃんと考えてくれてるんだな。俺もずっとこのままがいいなんて現状に溺れずに鍛錬を続けないとならんな。
まだトランスブーストもサイレーンと以外は成功してないからな。テルクシノエーやショコラとクレア、そしてハトメヒトとも多分行ける筈だし、次のシーズンが始まる前にはあと1種類位は出来る様にしておきたい所だ。
「・・・俺も頑張らねぇとなぁ」
「そうですね、私も今以上にならなくては」
「頼りにしてる、これからも頼むぜ?」
「勿論です」
嬉しそうに微笑むテルクシノエーの笑顔が眩しすぎてつい顔を逸らす俺。
あぁ、ほんと頑張らねぇとな。
だけど今はこの平穏をもう少し。
―191話了
──────────────────────────────────────
恐らく一番ヒロインパワーが高いのはテルクシノエーですね。
芋ジャージですが。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます