第22話 緊急時に普通で居られると言うのは普通じゃない才能
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これはもしかしたら今日にも1万に到達してしまうかもしれません。
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「兄さんはレベル2だろ。見た所ソウルギアも戦闘系には見えないし自分で戦うタイプだから、出来ればこっちで大人しくしててもらいたいんだが」
レベル4レヴォリューションのソウルギアを持つ少年が厳しく告げる。
見た所装備も貧弱、体こそ恵まれているようだがそれとステータスはそこまで深く関係しない。見た目華奢でも戦闘系のソウルギア装備なら全てにおいてステータスが勝る事など普通である。
「囮は多くいた方がいいと思うんだが? そりゃ俺も出来れば戦いたくなんてないが、俺の場合支援貰って前衛に出るタイプだからな」
「俺は賛成だ、彼はジェミニの知人だしなそれなり以上には役に立ってくれるだろうさ」
「ジェミニ? 兄さん結構な有名人の知り合いなんだな」
この近辺にいるプレイヤーでジェミニをソウルギアを持つ流川はかなり有名だった。個人戦闘力はさて置いて、ソウルギア・ジェミニの戦闘力は目を見張るものがある。彼等が知る限り流川は参加したすべてのミッションを悉く成功させており、スキルを巧みに使う陣頭指揮のお陰で全員の生存率もかなり高いのだ。
「しかし。ジェミニには俺もあった事あるけど、そっちのソウルギアもジェミニなのかい? 人型ってだけで割とレアなのにな」
「と言うか改めてみると、なんじゃの美女二人はっ! 悔しい、なんだかとっても悔しい」
フェアリーズの女性がサイレーン達を改めてマジマジと見つめた後とても悔しそうに愚痴る。とても悔しかったらしい、色々な部分が。
「改めてこの前ぶりです! 今日はよろしくお願いしますね」
「あんたならPKじゃないと確信できるから安心だ。ジェミニも来てくれてたらもっと良かったんだがな」
「悪いな兄さん親睦深めてる場合じゃねぇんだあの状態、後どれくらい続くかわかるか?」
その問いに答えたのはテルクシノエー。
「相手の精神抵抗力が低ければ永続、最終的には発狂し自我崩壊を起こして精神的に死ぬわ」
「えぇぇぇ、せ、制限時間とかないの??」
「ないわよ? 発動すれば私が解除するまで永遠にあの状態、安心していいわ」
「それほんとならひどくない・・・」
あまりのえげつなさにドン引くフェアリーズ。あ、これは敵対したらダメだと心の奥で白旗を上げていた。
それは周りのプレイヤー達も同じ様子だったが、リアリティアクセルとバンカーは彼女の言葉の裏をある程度読み取れていたようだ。
『敵に回したくないな。いや、そうか。そういうことか』
『プレイヤーキラーになるつもりはない。もしくはPKではないって暴露してくれてるのかな。でもえぐいですよその能力』
テルクシノエーの言葉にレヴォリューションは少し考えこんだ後結論を出す。
「なるほど、つまりあいつはほとんど詰んでる訳だ」
「あれで発狂死は相当時間かかりそうだけど、ね。やはり―」
「あぁ。ソウルギアの姉ちゃんの言う通り、今のうちに相手の弱点、コアを探して俺が倒すしかないな」
「レベル4とはいえ、行けるのか?」
「アクセルの兄さん。あんたの攻撃は通ってただろう?」
「切り刻む程度にはな。そこまで硬くはないが再生力が高すぎてダメージにはならなかったが」
「なら大丈夫だ。兄さんの攻撃が通るなら俺の一撃は確実に通る。後は弱点目指して攻撃すれば行けるはずだ」
「えーと、こうエネルギー砲とかそういうのみたいに全部いっぺんに焼き尽くすー、とか出来ないのかな??」
フェアリーズが身振り手振りでわーっとジェスチャーしながら言う。
「それが出来たら始めからやってるよフェアリーズの姉ちゃん。俺の一撃は一転集中タイプなんでな、それに何度も使えるもんじゃないんで弱点を狙わんと詰む」
「そ、そかー・・・」
「という訳でだ、姉ちゃん早速弱点探し頼むぜ?」
「え? やっぱやらないとだめ・・・?」
お前の役目だぞと周りの全員。御堂以外の目が突き刺さる。
その視線に耐え切れずに目を逸らしたり顔を動かしたりするフェアリーズ。
「ほ、ほらもうモンスターも割と詰んでるし? わ、私は応援とかで・・・?」
「姉ちゃんあんた何しに来たんだよ・・・」
呆れたように言うレヴォリューション。周りも日和った彼女のセリフに少々呆れていた。
「こんな化け物とかおもってなかったー!」
崩れ落ちるように所謂『orz』状態になって魂の叫びをあげるフェアリーズ。
「緊急ミッションの敵が優しい訳ねぇだろうに。と言うかなんも出来ねぇならポイント分割もさせられねぇし、このミッションは逃走可能だから帰ったらどうだい?」
「やらせていただきまひゅっ!?」
がばっと起き上がって口どもりながら立ち上がる。彼女としても命を懸けた場所に来たのにポイントも貰えずに帰ったら来た意味がない。役に立てるかは微妙だが。
そんなまるでコントの様な様子にいくらか周りの雰囲気が落ち着いていた。
彼女も意を決したように一歩後ろに離れソウルギアを展開する。
「おいで、私のソウルギア!!」
ソウルギアを展開する時に発生する円柱状の光、それが収まるとそこには複数体では済まない数の羽の生えた妖精が漂っていた。
体長は大体20~30センチほどあるだろうか、大体の人間が想像する羽の生えた妖精そのものと言った姿。
身に纏っているものは布切れや神秘的な格好ではなく、それぞれ小さく誂えた普段着の様なものを身に着けている。
その後ろから羽が生えて飛んでいる姿は割とシュールだった。
性別があるのかは見た目からは分からないが、男性タイプも女性タイプもいる。基本的な性能は何も変わらないが、性格は個体でそれぞれ違うらしい。
「ますたー、よんだー?」
「あぁ、またじゅうろうどうがはじまるー」
「くいものよこせー」
喧々諤々、悪戯好きの妖精を思わせるそのものの様なソウルギア達だった。
「ちゃんと用意してるよ~。だからお願い聞いてくれるかな?」
ソウルギアフェアリーズは他の人型ソウルギアとは違い、【願い】を言う事で初めて行動する特殊なタイプだった。ジェミニやサイレーン達のようにマスターの為に率先して動くと言う事を勝手きままな彼等がすることは無い。
但し、願いを言われた場合はそれが叶えられる願いならば確実にこなす事が出来る。簡単なモンスター討伐程度なら、このフェアリーズ達でも問題なく可能だった。
「しかたないな~。じゃあおかし! おかしくれたらがんばるよ~!」
「10えんとか30えんのじゃないよー。100えんとかだよ~?」
「なにいってるだおめぇ、さいきんはしょうひぜいで100えんでかえるやつなんてあまりないんだよー?」
「それでも! それでも100えんでかえるおかしがあるってしんじたいんだ!!」
「え、えーと聞いてくれるかな?? はいお菓子。結構いい奴買っておいたんだ」
そう言うと彼女は持ってきたリュックサックから色々な菓子類を取り出しフェアリーズ達に与えていく。
我先にとお菓子に飛びつくフェアリーズ達。最近は甘いのよりポテトチップスや煎餅などのしょっぱいお菓子が好みのようで、彼女が好きな争いや戦争が起きるチョコ菓子はあまり見向きもされていない。
それぞれがお菓子を頬張っている中、一体食べ終えたフェアリーズが次のお菓子に手を伸ばしつつ対価を得た報酬を払う事にしたようだ。
「いいよー。じゃあおねがいおしえて~?」
「ほっ。良かったぁ・・・それじゃあれのコアどこにいあるか見つけてきてください!!」
お願いを聞いてくれる事にほっとしつつ彼女は今なお狂い暴れ続けているモンスターを指差した。
それを見たフェアリーズも、お菓子を食べていたフェアリーズも、お菓子の取り合いで負けていじけていたフェアリーズも指差された方を見る。
【ごぎゃあああああああああああああああああああああああああああ!!!】
ここからでも聞こえてくる怨嗟の咆哮。
たっぷり10秒ほどフェアリーズ達は止まり続けた後、それぞれ口を開いた。
「我等に死ねと申すか」
「然り然り」
「おうばかてめぇ。あれにお菓子だけで突撃しろとか、銅の剣やるから魔王倒してこい張りにひでぇだろうが」
「某、この程度の報酬では動こうにも動けぬ。ますたぁよ、兵糧と言うものをもっと大事に考えるべきであるぞ」
「然り然り」
「せめて戦車とかそういうの用意しろよ? 残機減るぞおめぇ? 主にぼくらの」
途端に流暢になるフェアリーズ達。先ほどまでのかわいらしさから一変、どこぞの侍か何かですかみたいな事言いだしてきた。
「クッキーも追加するから!? お願い!?」
「出来る事と出来ない事をな? 考えろ? な?」
ぎゃーぎゃー騒いでいる様子を見ていたレヴォリューションがぽつりとつぶやいた。
「すげぇ使い辛そうなソウルギアだな」
「俺は装備型でよかった・・・」
「俺の所の二人は大当たりでよかった・・・」
サイレーンとテルクシノエーがフェアリーズみたいなソウルギアだったらと思うと寒気が走る御堂。わがままな美女や美少女と言うものもそこまで悪くないとは彼も思うが、それはそれとして扱いきれるかと言われれば無理ですと言うしかない。
そしてそんな言葉が聞こえてきた二人は―
『どうでもいい所でご主人様の好感度が上がった気がする・・・・!!』
『私達はマスター第一だからね!!』
と、簡単に好感度がさらに上昇していた。彼女達は基本マスターにはちょろいのである。特にこの二人はかなりちょろかった。恋愛ゲームで例えれば開幕好感度がMAXという奴だ。
あそこまで大変なのはフェアリーズが特別なだけともいうが。
「うわぁぁん! フライドチキンとポテトも付けるよおおおおおお!!」
フェアリーズ渾身のガチ泣き。
「しょうだんせいりつだねー! みんな、がんばっていこー!!」
「おー!」
「わたしぽてとー!」
「おいらはふらいどちきんかなー!」
「それがしははんばーがーが・・・」
「てきだー!? ここにてきがいるぞー!!」
泣きの追加報酬で漸く動き始める妖精たち。それぞれが【お願い】によって強化され、イレギュラーナンバーに飛び掛かっていった。
「消費が・・・激しいよぅ。ポイント多めに換金しないとなぁ」
「ご、ご苦労さまです」
あまりのお労しさにマキシマムバンカーもそう言うしかなかった。
同時に「あぁ、だから使いたくないんだな」と言うのも嫌でも理解できた彼だった。リアリティアクセルと同じく自分も装備型でよかったなぁと思うほどには。
「人型とかそういうタイプは扱いが大変そうだなぁ。ご機嫌とるのも必要って事か」
ナイフにチャージを続けながらサイレーン達を見て言う。
「あー。確かにな、ソウルギアとか言っても見た目は普通の女性だしなぁ、俺も何か報酬用意してやらんとなぁ」
御堂の言葉にテルクシノエーとサイレーンが想像を膨らます。
『こ、これはお願い聞いて貰えるフラグ・・・!! ご、ご主人様に撫でてもらったりとか、手を繋いだりとか・・・!! あ、あわよくばデートとか・・・!?』
見た目と裏腹に少女か、と突っ込みたくなるような可愛らしい願いのテルクシノエー。そこにサイレーンが小声で耳打ちしてきた。
「やったねテルクシノエー! これはマスターに×××とか! ××××××とか! ×××××とか! 私とテルクシノエーでダブルで×××とかいけるかも!!」
「ごほっ!?」
サイレーンのあまりにもあんまりな、確実に子供にはお聞かせできないあけすけな事を嬉々として言う言葉にテルクシノエーが咽た。
「ド変態かぁあああああ!?」
「ばっかおめぇ! こういう時こそ攻める! これ定石だよ!!」
サイレーンは肉食所か、肉食獣や超野獣の類の様だった。
「寧ろテルクシノエーの純粋さに驚いてる私。見た目的に何方かと言うとそっちのセリフだよね」
「私は貴女の思考パターンに驚いてるわよ・・・あ、フェアリーズが戻ってきたわね」
トンチキ話をしている間にも事態は動いていた。
数体の妖精がフェアリーズの元に戻ってくる。
「おかえりなさい! コアとか弱点みつかりました?」
「まずはいたわれー!」
「そうだそうだー」
「板持ってきた、「はい割ったー」とかやったらゆるさんぞー!」
「あぅぅ、はい、これどうぞ」
100円位で売っているわたがしを手渡す。出費が激しそうだ。
「あまあま。じゃくてんというかコアっぽいのみつけてきたよー」
「そうそうー、むねのぶぶんがとてもかたかったー」
「だねー、ちからがそこからあふれてたよー」
「あれはじゃくてんですねまちがいない」
「しゅうへんがかたすぎるからー、ないぶからこうげきするしかないかなー?」
「ぜったいにやりたくないー」
「だ、そうです!!」
話を纏めると、イレギュラーナンバーのコアが胸、わかりやすく心臓部分にある事が判明した。但しその部分はコアを護るために極端に硬く、フェアリーズの攻撃力では貫通は不可能だった。
口の中に飛び込んで内部から穿つ作戦もあるがそれはそれでお願いしなくてはならないだろう。
どこまで確実に情報を持ってこれるか分からなかったが、それだけわかればとレヴォリューションが全員に伝える。
「心臓部分か、分かりやすくて何よりだ。だが狙うにはちょっと面倒だな、その間に抑えてもらわんとならんか」
「ならこちらに向かってくる可能性も0じゃない以上、俺が周辺で囮になろう」
「尻尾の薙ぎ払いに注意すれば攻撃は散漫ですから僕も行けると思います!!」
「助かるよ兄さん達。あともう数分でチャージも済む。その間だけあいつを抑えておいてくれ。後は最後に隙を作ってくれれば――」
持っている右手のナイフが白熱し始める――
「俺が一撃で斃す」
不敵な笑みを浮かべ、彼は言った。
―22話了
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【プレイヤー:粉骨砕身】※HNの様なもの
【LEVEL:2】
【ステータス:パワー:7 マジック:0 ガード:3 レジスト:0】
【スキル:ソウルギア:装備型:粉骨砕身Lv2】
―パワー:20 マジック:0 ガード:0 レジスト:0
―巨大なハンマー型のソウルギア。
―【破壊力】と【粉砕力】に特化し、当てるだけでその事象を発生させる
―攻撃力ならばトップクラスの性能だが、武器としては扱いにくく
―防御性能は皆無なので、そちらはスキルや装備の補助が必須になる。
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お願いを聞くだけでお菓子を貰えるなんて・・・なんて羨ましいのでしょう。
あさねこはお菓子も稀にしか食べられませんに(涙
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