第23話 命がけの囮作戦って大体死にますよね

ついに1万PVを突破しました。皆さん本当に有難うございます。

少しでも楽しんでもらえたらとても嬉しいです。

緊急ミッション編、もう少しの間お楽しみください。

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 一度目を閉じ一呼吸置いた後リアリティアクセルは叫ぶ。


「行くぞ!! 俺達であいつを縫い留める!!」


「分かりました!!」


 今も尚狂ったように暴れ狂うイレギュラーナンバーに二人は突貫する。


「よし俺も――」


「いや、兄さんは待ってくれ」


 直ぐに御堂も動こうとした矢先にレヴォリューションに待ったをかけられた。


「っ! 俺に見てろって言うのか?」


「あいつを阻害出来てるのは兄さんのソウルギアの効果だ、永続とは聞いたがそれは兄さんが生きてるからだろう? あんたが死んでソウルギアが消えても残るとは考えづらい」


「うぐ・・・た、確かに」


 それはテルクシノエーも考えていた。おそらく彼の言葉は正解だろう、今の状態は彼女が魔力、マジックを維持しているからこそあの状態が続いている。御堂が万が一死亡した場合、彼女もサイレーンも直ぐにではないが消滅する。


 その場合、発動していた阻害効果はすぐに解除されてしまうだろう。イレギュラーナンバーが解除された後どれくらいで回復するか分からないが、そうなってしまえば弱点を狙うのが更に面倒になる以上、経験の浅いだろう御堂を動かしたくはなかった。


 テルクシノエーとサイレーンも彼の言葉にある程度ほっとしてもいる。御堂が前衛タイプとはいえ、自らの愛する主人を死地に送るなど出来る限りしたくないのだ。その点で言えば彼の提案は御堂の考えはともかく、歓迎できるものだった。


 これだけ貢献している以上ポイントも十分以上もぎ取れる、ならば倒す当てもある以上はここで待機してもらえるのが一番だ。


「あとそれじゃあ兄さんも納得できないだろうし、そこにいる姉さん護ってやってくれ」


「え、私??」


 きょとんとした表情でフェアリーズが零す。


「俺もチャージが終わればあいつを倒しに行くし、そうなるとほぼ一人だろ? プレイヤーキラーが居ないとも限らんからな、ここに一人放置とか、殺してくれって言わんばかりだしな」


 彼の言葉に今更ながら自分の境遇を再認識した彼女はバッグから取り出したフライドチキンを高々と掲げ頭を下げた。


「そういえばそうだ!! 護ってくださいお願いします! あまったフライドチキンあげるから!?」


「いや、いらんし」


「えーーーーー!? 守ってもらえないフラグですか!?」


 涙目になってプルプルと震えだすフェアリーズの周りを妖精たちが適当に慰めている。「だいじょうぶらいせがあるさ」とか「どんまい、つぎがあるさ」など慰めているのか分からない感じではあるが。


「いや、そんなのいらんが守るのは了解したって事だよ。此方はソウルギア含め3人いる警戒するには楽でいいだろうしな」


「あ、有難うございます。顔怖いのに実は優しいんですね」


「顔怖いは余計なんだが??」


 肌が焼けて色黒のスキンヘッドのガタイの良すぎる男性のどこに怖くない要素が、と彼女は流石に言わなかった。その程度の良識はあるようだ。


「よし、決まりだな。後はチャージが終わり次第あいつをぶっ倒せば終わりだ」


「だ、大丈夫? いけそう??」


「確実って訳じゃあないが、なんとかなるさ。姉ちゃんが弱点を探してくれたからな。それに時間はかかるが1回だけって訳でもない、最悪数発叩き込めば死ぬだろ」


 レヴォリューションの攻撃は時間がかかる代わりに極大の威力を放つ一撃だが、別に1回制限という訳ではない。但し再度チャージには時間がかかる上、1回限りではないとはいえ、何度も連打できるものではないのは確かだ。


 だがそれでもレベル4でありながらその一撃は瞬間的にパワーメインのレベル5の一撃すら軽く凌駕する。レベル2~3の攻撃でダメージを受けている程度のイレギュラーナンバーなら1発が無理でも2~3回叩き込めば勝つことはできると考えた。


「よ、よかったぁ・・・少しはポイントも貰えそうだし、貯金しなきゃなぁ」


「弱点発見は十分な貢献だ、割り振りもそこまで悪いもんじゃあないだろうさ。あの死んだおっちゃんはともかく兄さん達はその辺見てくれそうだしな」


「流石にがめつくなんてやれねぇよ。俺だって二人のお陰でなんとかここにいる程度だしな」


 一番の貢献者は現時点ではテルクシノエー、つまりソウルギアの所持者御堂だろう。とどめを刺せるのはレヴォリューションなので撃破報酬は彼に流れるだろうが、正直御堂もフェアリーズもそこまで気にしていない。


 寧ろ自分達では倒せないので、あれを倒してくれる彼が居てくれてよかったと思っているほどだ。もし彼が来ていなければ倒し切れるかも分からなかっただろう。


「十分だ。その調子でPKにならずにいてくれよ? んじゃ俺も行ってくる、そっちは任せた」 


 手をひらひらと振り彼もまた二人の元に向かう。

 

「凄いなぁ・・・」


「ん?」


「あ、いえ。あの子中学生位だと思うんだけど、私なんかよりずっと大人で凄いなって」


 少年、レヴォリューションの見た目はマキシマムバンカーの少年と大体似たような背丈だ。マキシマムバンカーは普通の男子中学生という相貌で、特段見た目に変わった所はなく、どこにでもいそうな所謂モブキャラ的に見える。


 逆にレヴォリューションは肩まで伸ばした長髪が特徴的で、着ている防具もあってかどことなく少女の様な見た目に見える。声変わり前なのか声もどことなく少女みたいな声色をしているが、その堂々とした態度と毅然とした姿。射貫くような眼光といい流川と同じレベル4という時点でかなりの修羅場を潜っているのだろう。


「だな。最近の子供はわがままなガキみたいのしかいないと思ってたが、あんな大人顔負けの奴もいるんだな」


「で、ですねぇ・・・」


「・・・・」


 会話が止まる。


 フェアリーズは性格的に他人と会話するのが苦手であり、御堂も御堂で女性と話す機会などサイレーン達と会うまではほとんどない。故に何を話せばいいのかわからず緊張感のある静寂が一瞬二人を包んだ。


 が、そんな微妙な雰囲気をサイレーンがぶち破る。


「ぽっと出の子にマスターは上げません、しっしっ」


「ぽっと出!?」


「そういうラブでコメなシーンは私達がやるべき、貴女はそこの妖精達にお菓子を配ってるといいよ」


「これ以上用意したらお金があかんのです!?」


「だいじょうぶ、私は問題ない」


「私に問題があるよぉ!?」


「貴方達もう少し戦闘中という自覚をね・・・」 


 突如始まった漫才を呆れつつもテルクシノエーが止めるが、他愛もないそれはまだまだ続きそうだった。


 そして御堂は巻き込まれないようにちょっと離れていた。


 




◇◆◇◆◇◆◇◆




 今だ狂乱冷めやらぬイレギュラーナンバーはその不快の元を断つために暴れていた。周辺の家屋をなぎ倒し、電柱を圧し折り、ただただ暴れまわる。


 脳内をかき混ぜられているような激痛と不快感がまともな思考を奪い、それは見えている視覚すら思うように認識することが出来ていない。


 だからこそ周辺でウロチョロと自らを攻撃しているナニカを捉える事も出来ず、ただ暴れるしかなかった。


【オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!】


 怒りの咆哮を上げ手あたり次第に攻撃を加えるが、リアリティアクセルにとっては無意味。振り下ろされた腕に向かって連続で斬撃を放つ。


 血飛沫が舞い刃が肉を抉る。


 しかしそれも一瞬、傷つけられたダメージは早戻しのように直ぐに回復してしまい大したダメージにはならない。


 それでも何度も切り裂けば少しずつ回復は遅れているらしく、これを続ければ倒せないまでも動きを鈍らせる事は出来るだろう。


「唸れ僕の魂・・! 目覚めろソウルギア!! ポイント10消費! 【金剛力】!!」 


 マキシマムバンカーがポイント消費型のレアスキル【金剛力】を発動させる。


 このスキルは一度限り消費したポイントの3倍【パワー】を増加させるバフスキルだ。一度に込められるポイントは10と決められているが、それでも一時的に最大パワー+30という破壊的な火力を得ることが出来る。


 チャージ攻撃で莫大な火力をたたき出す彼のソウルギアとの相性は抜群。


 右手のマキシマムバンカーが赤色に発光し、白い蒸気が漏れた―


「食らえええええええ! マキシマムバンカー!!」


 ミサイルが落ちたと錯覚するような轟音と爆発がイレギュラーナンバーに叩き込まれる。衝撃が周辺の家屋を吹き飛ばし、粉砕していく。


【ヴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!】


「くっ、これでも効いてないのかっ!?」


「一度離れろ! 攻撃が来るぞ!!」


「は、はいっ!!」


 だが、イレギュラーナンバーは体のあちこちが焼き焦げているものの、一切弱まる事無くその場で唸りを上げる。


 ダメージを受けていない訳ではなく、先ほどの一撃は十分にイレギュラーナンバーに痛痒を与えていた。だがその痛みよりも脳を侵される激痛の方が上回っているだけだ。そちらの激痛のせいで肉体的な痛痒を一時的に感じていないに過ぎない。


 これほどの一撃、緊急ミッションのモンスターとはいえ何度も立て続けに受けていればコア云々関係なく倒し切れるだろう。連打できれば、だが。


 直ぐに体が回復しダメージを受けているように見えない姿を見てしまえばこれが効いていると認識はしづらいだろう。現に二人は効いていないと誤認している。


「ダメージは当たっていないし、縫い留め切れてるのかも分からない・・・!」


 自分の攻撃力でも効いていない現実に無力感を感じる少年。


「その場に縫い留めればいい!! ダメージを与えるなんて考えるな!!」


「分かりました!! こいつ、これで動きが阻害されてるのか・・・!」


 イレギュラーナンバーは確かにこの場からほぼ動かない。だがその攻撃力と耐久度はほぼ衰えていない。


 唯一攻撃速度と命中率は激減し動く的に近いが、二人ではダメージを与えてもそれ以上の回復力で上回れている。唯一マキシマムバンカーの連続攻撃が通れば倒し切れる可能性はあるが、そこはあまりの回復力と痛覚を感じていないと誤認してしまったせいで、選択肢から外れていた。


「なんにせよ僕は出来る事をやるまでだ!! もう一度――」


「待て!? 避けろぉぉぉ!!」


「っ!!」


 リアリティアクセルの叫び声のままに全力で後ろに跳ぶ。

 

 そこを巨大な質量の尻尾が通り過ぎていった。


 あれに当たっていれば次に死んでいたのは彼だろう。


「はっ!? はっ・・・・! あ、危なかった・・・」


 あと少しで死んでいた、その恐怖で体が震える。


 直ぐにリアリティアクセルが駆け寄ってくるのが見えた。


「無事かっ!?」


「は、はいなんとか。その、有難うございます」


「無事ならいい。だが油断するな! あいつの攻撃で一番やばいのはあの突然来る薙ぎ払いだ。だが、あれがもっともでかい隙になる」


「隙に、ですか?」


「あぁ、ただ力任せにその場で回転しての薙ぎ払い。終わった後はよろめいて動きが鈍っていた。そこで足を狙えば転倒を狙えるかもしれない」 


「成程・・・! なら僕の役目は転倒を狙う事ですね!」


「そうなるな、俺が切り刻んでもいいが。一撃の火力で吹き飛ばすのはお前の方が有利だ」


 武器を握りしめ、リアリティアクセルは言う。


「俺が次の薙ぎ払いを誘発させる。お前はその隙を逃さずに撃ち込め。そうすれば後はあいつがやってくれる」


 親指を後ろに指す、彼がその方向を見るとレヴォリューションが凄まじい力を放ちながら立っていた。持っているナイフからはバチバチと雷撃の様なものが弾けている。あれが恐らく切り札なのだろう、二人はそう感じた。


「わかりました――」


 死にかけた恐怖が足を止めようとする。


 だがそれでも、思い切り足を踏み込み無理やりに恐怖を抑え、彼は前を向きマキシマムバンカーを再びチャージさせていく。


「隙作りお願いします。後は僕が――」


 再びの【金剛力】使うポイントもMAXの10。


 全力の一撃を叩き込むため、次の一手の為の致命的な隙を作るため。


 全員で生き残る為、彼は自分の魂に力を籠め、叫んだ――


「僕が! 勝利への道を作ります!!」


 その言葉を聞き届けリアリティアクセルは駆けた。


 一瞬でイレギュラーナンバーの間合いに入り、縦横無尽に全身を切り刻む。


「おおおおおおおおおおおおおおお!!」


 腕を胴体を足を頭部を、ソウルギアで形成された剣が全身をなます切りにする。


 途中衝撃に耐えきれなくなって両方の剣が折れたが、直ぐにソウルギアに力を籠め新しい剣を創造させ、攻撃を続ける。


【ガアアアアアアアアアアアアアア!!】


 大した痛痒にもなっていないが、全身を攻撃されて苛立つイレギュラーナンバーが我武者羅にほとんど見えていない周辺を攻撃するのだが、その程度の攻撃では彼を捉えることはできない。


 返す様に再びの斬撃の連打。


 何度剣が折れようとも創造し直し、全ての攻撃を避け次の布石の為にその攻撃を待つ。


 その目は使命とモンスター達に対する憎悪で染まっている。


 モンスターの全てを、そして最後にはディザスターを、この世界から全て消し去るまで彼は死んでも戦い抜くと決めてから何度も戦ってきた。


 今更この程度のモンスターに手間取っている訳にはいかなかった。


 その為にはふざけたシステムだとしてもそれを使いレベルを上げ、強くなりこのふざけたゲームを終わらせる。


『そうしなきゃ、あいつらが浮かばれねぇ!!』


「お前等は、お前達はああああああ!! この世界から消えされえええええ!!」


【グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!】


「っ! 今だ!! バンカーあああああ!!」


 再び襲ってくる尻尾の薙ぎ払い。


 それを彼は待っていたのだ。直ぐにそれを回避し一瞬で離れる。


 リアリティアクセルの叫びに呼応するように、動きを一瞬だけ止めたイレギュラーナンバーに向かって全力の一撃をマキシマムバンカーが放つ――


「これでぇええ! たあぁあおれろぉぉぉおおおおお!!」


 足に向かっての全力のマキシマムバンカーが再び叩き込まれた。


【ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!?】


 薙ぎ払い後の足に先ほどの様な激痛が走る。


 その一撃は強靭なモンスターの肉を削り骨を叩き折った。


 ぐらりと態勢を崩し轟音を上げてついにバランスを保ち切れず転倒する。


「倒したああああああ!!」


「今だ! 頼むぞ!!」


 二人が咆哮し、最後の一撃を待つ。


「十分だ兄さんたち。後は俺に任せてくれ」


 チャージが終わったナイフを構えレヴォリューションが真の力を発動する。


「目覚めろ俺のソウルギア。進化の軌跡をここに」


 その言葉を紡いだ瞬間、ナイフがこれまで以上に光を放つ。それはソウルギアが展開された時に発現する光。


 光が収まると、彼の手には先ほどまでのナイフではなく細く長い1本の小剣が握られていた。それを軽く振るって調子を試す。


「よし、これならいけるだろ。【速剣術】」


 【速剣術】はスキルで様々な【剣技】を習得し技を使う事が出来る中、速度と命中率、必殺確率がとても高い技が多く、連続で使う連鎖攻撃を得意とする技の一種。


 総じて他の剣技に比べれば威力は低いが、派生攻撃はその全て一瞬で行われ、全てが【一撃】として発生する。その全ての連撃を合計した時の威力は計り知れない


「5文字まで行ってくれるなよ? 【蓮華】――!!」


 呟いた瞬間、彼はその場から掻き消えた――




―24話了



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マキシマムバンカーさん、リアリティアクセルさん、レヴォリューションさん

皆さん名前が長いんですよね、地の文の時に文字数持っていかれるんですが

なんとかなりませんか??(ムリイウナ


Q 連撃は1撃ではないのでは??

A だ、大丈夫1ターンの間に全部使うから多分一撃(何

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