第228話 せめて次は、なんて考えない方がいい


 アンデッドと化したプレイヤー達を率い御堂達は改めて次の階層へ向かっている。

 

 一時的に仲間が増えたとはいえ、脅威が弱まった訳ではない。彼等は全員がレベル3~4のパーティ。それを奇襲したとはいえ全滅までもっていったレアモンスターが何処かに潜んでいる以上、一切の油断は出来ない。


 前衛にショコラとクレア。二人を守れる様にアンデッドプレイヤーがすぐ後ろという隊列で進んでいる。


 仲間とはいえ、先ほどまで死んでいてゾンビになっているプレイヤーは見た目からして恐怖を引き起こすような容貌故に、片桐は出来るだけそちらを見ない様に御堂の後ろをぴったりとくっついていた。


【・・・・・・うおおおおお・・・】


≪今気づいたんだけど、ハーレムか? ハーレムなのか? 許せん。ちょっと俺と殴り合わないか?≫


「畜生!? 言われると思ったよ!!」


 御堂の隣に歩いていたリーダー格のプレイヤーの男がスマホで器用に嫉妬のメッセージを叩きつけてくる。


 言われてもまぁ、仕方のないパーティなので御堂としても何も言い返せない。まさかアンデッドになった相手にまで言われてしまうのだから、これからもダンジョンアタック系のミッションで他のプレイヤーに出会ったらずっと同じ事言われるんだろうなと、次からは出来る限り男性も入れたい等を考えている。


 とはいえ、この状況が嬉しくないかと言われればまったくそんな事はない。御堂も精力的な男性なのでこの状況を密かに喜んでいた。無駄にそういう所はクールフェイスで見破られていないが。


≪あ、ごめんなさい。私の半径5メートルから離れてもらえます? なんか死んでても妊娠させられそうな気がしたので≫


「ひどくねぇ!?」


 御堂の叫び声に、女性のアンデッドが【ぐぐぐぐ】と喉を鳴らしている。どうやら揶揄って遊んでいるようだ。 


「いやぁ・・・アンデッドと和やかに会話しつつとか、ホラーに色々喧嘩売ってますよねぇ」


「ハトメヒトのせいでホラーがホラーかっこ爆笑になったからな」


「ホラー映画に出てきちゃいけないキャラ筆頭ですよね。殺されても次のシーンに普通に出てきそうですし」


「あぁ、ハトメヒトなら普通の出てくるな」


「主殿、ディーヴァ殿。流石に我もその辺りのお約束は知っているぞ」


「あ、そうなのか・・・だよなぁ」


「知っていて無視するが」


「するんかいっ!?」


 ハトメヒトと会話をするたびに大体はコントになってしまう。その様子を見ていたアンデッド達も嬉しそうに体を揺らしていた。


 今の所、モンスターの奇襲はない。










 30分ほど探索しただろうか。相も変わらず霧は晴れず、周囲を探索するにも厄介な状況は続いている。道中で2回程モンスターのエンカウントはあったが、どちらもレベル2程度のモンスターで数も少なかったので、アンデッドのプレイヤー達が全て処理していた。


 不安定な体であるにもかかわらず、魔法で形成された死体は戦闘に問題なく対応出来ている。一部攻撃時に腕やら頭部やら吹き飛んだが、戦闘終了後に繋げているのだからまさに不死身の集団と言えるだろう。


「トラップとかはまだ見当たんないねー。油断しきった頃に出てきそう」


「ありそうだし、交互に気を付けてこ?」


「だね。 まーちゃん達はのんびりついてきてー」


 見た目はそのままギャルな二人が先頭を進む姿はまさに異様。


「墓に墓に、墓~見飽きてきましたよー」


「そういうフィールドだもの、仕方ないわ。油断はしない様にして頂戴ね?」


「あいー」


 テルクシノエーに言われてぐったりなディーヴァ。流石に30分も代り映えのしない場所を延々と歩いていれば飽きもするだろう。周囲がよく見えればまだ違っただろうが、霧が辺りを覆い、見えるのは木々と多種多様な墓ではテンションも下がろうという物だ。


 そしておあつらえ向きに周りには味方とはいえアンデッド。出てくるモンスターもやはりと言うかアンデッド系列だった。


 精神耐性がなければ恐怖で発狂しそうなフィールドだろう。御堂達は前回和風ホラーな階層に来ていたので、これで二度目になるからか慣れたものである。というよりサイレーン達はこの状態で一切恐怖等は見せていない。


 追加で言えばそんな状況でやはりというかなんというか色々コントやらなにやらしまくり、アンデッド達に先ほどのダンスの指南を何故か続けているハトメヒトという構図。この中で恐怖で怯えてるのは最早片桐だけだ。


 その片桐もハトメヒトを見てると、「なんで私怖がってるんだろう・・・」と謎の哲学が始まりそうになっている。


「次の階層への階段とか早く見つからんかなぁ・・・」


「だね。このままじゃリバティが震えた小鹿化するし」


「だ、誰が小鹿だぁ!?」


「それじゃ女鹿?」


「鹿から離れろよぉ!?」


「そんだけ騒げりゃ大丈夫だな」


「うー・・・」


「さて・・・」


 ジト目で唸りながら御堂に威嚇する片桐に笑いながら対処する。勿論その間も出来る限りで周囲の気配を探っているが、やはりスキルがないので、自分の直感だけで探るのは難しい。


 気楽にしているように見えて、周辺の様子を把握できているだろうショコラ達を頼りにしつつ、だからと言って気を抜かない様にするのは簡単なように見えて難しい。頼りにし過ぎて任せ過ぎては、万が一があるのだから。


 それは二人には劣るとはいえ、上級のスキルをセットしているサイレーンも同じだ。彼女も彼女で御堂を守るために、周囲の索敵は怠っていない。


 そんな時、サイレーンは微かな気配を――


「クレア!」


「あいよ! そこぉっ!!」


 気配を察知したショコラが銃を乱射し、クレアが投擲ナイフを複数投げつけた。


 狙いすましたその攻撃は今まさに奇襲しようとしてきたモンスターに全弾命中し、大きくのけぞらせる。奇襲した筈の自身が逆に攻撃を受けた所為で混乱したそれは体制を維持できずその場に頽れた。


【ウオオオオオオオオオオオオオ・・・!!】


【ギギ・・・ギイイイイイイイイ!!】


 アンデッドプレイヤー達が騒ぎだす。それは、先ほど彼等を奇襲し皆殺しにしたモンスターだった。先ほどまで落ち着いていた彼等ではあったが、自分達を惨殺した相手に対し冷静では流石にいられなかった。


 それぞれが武器を構え、それでも襲い掛かる事はせず、数体は片桐達の前にでる。


「【速攻指示】! 【エンサイクロペディア】!!」 


 開幕スキルを用いて誰よりも早くモンスターの情報を抜き取っていく。


「ディーヴァ行くぞ!」


「はーい、お任せですよー!」


 レアモンスターとの戦闘が始まった――



―228話了


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レアモンスターとの戦いですね。

レアアイテムください

しっぽきってやくめでしょ

はちみちください

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