第239話 チュートリアルはそろそろおしまい
ディーヴァとしても今回のダンジョンアタック、侮っていた訳ではない。
しかし3層でのユニークモンスター以外ではまともな戦いをしていない事のかなりの肩透かしを受けていた。
前回のダンジョンアタックでは、こんな簡単な階層は全くと言っていいほどに存在せず、馬鹿みたいに広い場所では即死トラップや絶えず襲ってくるモンスターを撃退していく、そのような場所ばかりだった。
だからこそ今回の様な、1層目は何故かケーキ作って
2層目はただ直線を歩いて
3層目に漸く戦いになるかと思えばテルクシノエーの独壇場
4層目ではまさかのクレーンゲームだ。
前回のミッションと同じ物を受けているのか? と首をかしげてしまいそうに成程手ぬるい階層ばかりだ。勿論その階層のほぼすべて、何かを間違えば容赦なく死ぬ可能性はあったが、かなり難易度は緩和されている。
今回のミッションの予告通りに本格的に難易度が上がるのは、ここからだと気合を入れなおした。チュートリアルはそろそろ終わりと言わんばかりに。
だからこそ―――
「なんでやねん」
つい漫才のツッコミが出てしまうのも仕方のない事だろう。
何せ目の前には、先ほどクリアしたクレーンゲーム機がまたあったのだから。
「お、落ち着けディーヴァ。俺もそう思う、そう思うが落ち着け」
「おちついてますよ、ちょー、おちついてます。僕をおこらせーよなんて、ふかのーにちかいですからねー」
「口調がいつも以上に怪しくなってる。語尾伸びる感じが平坦に」
「そこのさいれーんさん、だまらっしゃいですよ!!」
ぐあー、と叫びたくなるのを必死で抑える事に成功したディーヴァ。だが、そうなるのも仕方ないとも言える。難易度が上がると聞いた5層クラスの階層で、まさかの天丼だ。モンスターが出てくる気配すらない再びのクレーンゲームではそう叫びたくなるのも仕方のない事だろう。
もう帰りたいとぶつぶつ呟くディーヴァを尻目に、御堂達も肩透かししているのは仕方のない事だろうか。
ただ、中身の景品を見てみると完全に先ほどの階層と同じという訳ではなかった。中身は補充されていたし、そもそもの景品も色々と変わっている。
クレーンゲーム機自体も先ほどの物とは微妙に違っているので、似たような階層が続いただけとも言えた。このダンジョンアタック、次の階層は完全にランダムなので、こう言う可能性もない訳ではないのだ。
それにどうしようもない階層に飛ばされて死ぬ事に比べれば、片桐がいれば簡単にクリアできる場所なら寧ろラッキーとも言える。
「まぁ、つまりあれだな?」
「だね」
「リバティ無双その2の開幕だ」
「おぅふ・・・」
片桐が「うげぇ」と言いたそうな表情で言う。
1回目は興が乗ったのと、ここいらで本格的にいい所をという事で全力を出したが、それが2回目ともなれば流石に恥ずかしさの方が勝る。
とはいえクリアしなければ先に進めないのは確か。そして機械も中身も先ほどの物とは色々と違うが、機械である以上はやはり彼女の独壇場である。
今回は先ほどと同じくご丁寧に立て看板が盾てあり、【アイテムを10個獲得】した時点でクリアとなっていた。前回の運命のコイン10枚獲得に比べれば、取れる者なら何でもいいので難易度はさらに下がったと言えるだろう。
「今回はポイント交換カードとかが多くて、薬系はあんまり見当たらないな」
「人形とかお菓子とか多いね、リバティが取り切ったから在庫切れたとか?」
「私の所為じゃないよそれ、取られる可能性を考慮してなかったディザスターが悪いんだよぉ」
「それは確かに」
色々言っていたが、結局はクリアしなければ先には進めない。
腕まくりをした片桐が再びクレーンゲーム機を【強化】しアイテムを取り切るまでにそう長い時間はかからなかった。
※
「しょぼっ・・・」
片桐の口からつい声が漏れる。
今回の機械はそもそもそこまでアームが弱くもなく、余り強化しなくてもそれなりにポイントをつぎ込めばクリアできるタイプの機械だった。
恐らくは似たような階層はいくつかあり、難易度や手に入るアイテムにもランク差があるのだろう。
そして今回のクレーンは難易度は普通程度で報酬は並から並以下と言わんばかりの物だった。
クリア条件も前回の様な指定ではなく、何でもいいから10個取ればクリアとなっているので、運が良ければこの難易度の階層に来ることが出来るのだろう。
しかしながらプレイに必要なポイント自体は1プレイ200、5プレイ500と変わっていないので、ポイントが枯渇気味ならきついことに変わりはないが。
とりあえずは一番レア度が高そうな薬やカードを等をあっさり手に入れた片桐だったが。前のとは大きく違い、一番良くてヒーリングポーション。
後はキュアーポーションという毒になった時に回復できるポーションが数個、ポイントカードも高くて500ポイントとお世辞にも良い物はなかった。
10個取った時点で次への階層に進める事が出来るようになったので一度辞めた片桐だが、この程度のアイテムでは全て取るのは無駄な行為だなと早々に見切りをつける。
「前回のが凄かっただけなんでしょうねぇー。とはいえ難易度もやばかったんですけど」
「寧ろそういうレアアイテムばかりだから難易度が高かったんじゃねぇか?」
「そういう考えもありますねー。あんなに簡単にとれたのもリバティさんがいたからですし」
「ふふん。褒めてもいいよ?」
「わー、すごいー、わーすごいー」
「それやめろぉ!?」
ショコラが笑みを浮かべながらぱちぱちを渇いた拍手をして調子に乗っていた片桐を揶揄う、なんだかんだと片桐は彼女達ソウルギアに御堂以外で割と好意的に受け入れられていた。
何はともあれ必要なアイテムは取り切った事で次に進む階層が解放される。
「これで次もクレーンゲーム機があったらどうする?」
「ディザスターにクレームいれる」
「クレーンだけにか?」
「まーちゃん、「クレー」しか合ってないよ・・・」
「いうな、俺も言ってて、ナイワーって思ったんだから」
親父ギャグをつい言ってしまい自分で落ち込む御堂。まだまだ精神的に若いつもりでいるのだが、こういう時に何故かこういう親父ギャグ出てしまうのは、若くない証拠なのかもしれない。
ショコラ達の生暖かい目に耐え切れずそっぽを向きつつも次への階層に向かっていく。
次の階層に向かう階段は下に向かう物や上に向かう物、螺旋階段など多種多様にあるが、今回は螺旋階段タイプだ。
1歩ずつ踏み外さない様に階段を進んでいく。階段の周りは材質が不明な壁に覆われており、次の階層につくまではそれが永遠と続く。
長さは短ければ30段も降りれば次の階層にいけるが、長い時は100段以上の時もある。恐らくはそうやって階段を進んでいる道中で次の階層への選定がされているのだろう。
今回は40段程でそこまで長くなく、降りていく先に光の様なものが見えてきた。
そして―――
そこには待っていたと言わんばかりに、御堂達を見ている超大型のドラゴンが立ちふさがっていた。
―BOSSエンカウント―――
―ネームドモンスター:灼熱のヘルカイト
―239話了
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立て続けに気の抜ける階層を超えた先に
理不尽ボスが待っているおやくそく。
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