第238話 貢ぐっていうなよぉ!?
「んー。こんなにあってもなぁ・・・ケーキ屋何か欲しいのある?」
「いや、俺は何も役に立ってないし、これは全部お前のもんだろ」
「いや、それはそうなんだけどさぁ・・・これ全部独占って、気分的にこう、さ? わからん?」
「うむ、リバティ殿、その気持ち我もいたく分からないようなわかるようなそれでいて変わるような気が最近していた様な感じがしなくもなく、それでいて―」
「それ長くなる? ほら、オレンジジュースあげるから大人しくしてて?」
サイレーンがアイテムボックスから取り出してきた100%果汁のオレンジジュースを貰って中断されたハトメヒト。両手にコップを持って静かに飲み始める姿は幼い子供にしか見えない。ほんの数秒迄はカオスの化身だったが。
「あー、続けるけど私にパワーエリクサーとかいらないからさ、それならケーキ屋に使ってもらって強化してもらった方が後で護ってもらえるし助かるんだよね」
「確かに、リバっちがパワー増えても物理攻撃とかしないし意味ないね。てかマジッックも実は関係ないんじゃね?」
「そうなんだよなぁ。私の戦い方って機械を強化して戦う感じだから、必要なのは私自身の防御力なんだ」
片桐の言う通り、マシン・ザ・リバティを用いての戦闘機械での戦いはその機械のスペックとソウルギアの強化具合だけでステータスは意味がなかったりする。
つまりどれだけ自身のステータスが低かろうと、機械が強ければ十分以上に戦えるのだ。逆にレベルが上がりステータスが上昇しても機械が強化される事がないが、そこはソウルギアが強化される事で強化能力も上がるので、そこまで劇的に能力が他のプレイヤーに劣る訳ではない。
その為彼女にとっては自身を守る時のガードとレジストだけが最低限上がっていればいいのだ。完全に機械のスペックで戦闘力が変わるが、そもそもが機械の強化と、その機械を用いての広範囲支援、ついでに戦闘力もあるというタイプなので、実際の所、戦力は二の次だったりする。
そんな彼女がパワーやマジックを増やしたとしても宝の持ち腐れにしかならない以上、それならばステータスが密接に関係する御堂に使ってもらった方が彼の安全にもつながるし、戦闘力の上昇にもつながる以上、合理的に考えても彼が用いる方が利点が高い。
というどうみてもぐだぐだな理論武装だが、正直な話はこんなレアアイテムを一人で独占したくないという小市民的な精神性のせいだ。
ゲームでならば手に入れたレアアイテムは全部自分の物とかも普通にやれる片桐。FPSで煽ってきた奴を秒殺して煽り返したり死体撃ちは基本だが、それはゲームだから出来る事であって、現実では基本的にこんな風なのである。
更に言えば、強くなった御堂が守ってくれると思うと安心できそうと、ほんの少し思っていたりもするが。
「という訳で、折角だからケーキ屋強化計画と行こうぜ~」
「リバティ、私は信じてたよ。実は貢ぎキャラだったんだね」
「リバち、ごしゅの事大好きじゃん♪ お貢ぎキャラ♪」
「変な事いうなよぉ!?」
わたわたと慌てる片桐を見て微笑ましい表情になるサイレーン達。
暫しそんなやり取りの後、漸くアイテムをいくつか御堂に渡す事になった。因みにディーヴァやサイレーン達の分はない。
御堂も御堂でこんなにもらえないと拒否したのだが、お前も巻き添えになれと言わんばかりに色々と押し付けらてしまった。
こうして御堂が渡されたは次のアイテムになる。
パワーエリクサー:2
ガードエリクサー:1
マジックエリクサー:2
小さき太陽の指輪:1
生命の護符:1
ガードエリクサーについては自分で使えと帰そうとしたのだが、後ろで待機するのがメインの片桐より前衛でアタッカー兼タンクを兼ねている御堂が使った方がいいと、これはディーヴァ含めて満場一致で決まった。
マジックエリクサーはこれから武器に魔法属性のエンチャントを使う時に効果時間がマジックに依存するという事で、マジックが低い御堂はそれだけ効果時間が短くなるので、これも使えと渡されたのだ。
後は万が一の生命の護符と、身に着けてさえいれば徐々に回復してくれる魔法の指輪を合計で持たされた。
「いいのかねぇ・・・」
「良いんだよ。という訳で私を守ってくれよな?」
「そんなもん、当たり前だっつの」
「そ、そか・・・そかぁ・・・」
何を当たり前の事をと言わんばかりの表情で言われて、顔が一気に熱くなる片桐だったが、それに気付いたのはオレンジジュースからサイダーに変わっていたハトメヒトだけだった。
そんなこんなの結果――
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【プレイヤー:御堂友樹(ミドウトモキ)】【所持ポイント:48736】
【LEVEL:4】
【ステータス:パワー:10 マジック:4 ガード:7 レジスト:6】
【スキル:ソウルギア:サイレーンLv4】
【スキル:ソウルギア:テルクシノエーLv4】
【スキル:ソウルギア:ミューズLv4】
【スキル:ソウルギア:ハトメヒトLv4】
■スキルセット:C:6 R:5 SR:3 SS:1
【C:先手】
【C:念話】
【C:蓮華】
【C:毒耐性】
【C:攻撃力強化】
【C:命中力強化】
【R:小剣との親和】
【R:リジェネレイト】
【R:ストラグルアタック】
【R:三散華】
【R:四奏蓮華】
【SR:バトルオーラ】
【SR:カーネイジ】
【SR:五爪雛芥子】
【SS:トランスブースト:未熟】
■装備
【小さき太陽の指輪】
【生命の護符】
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御堂も漸くではあるが、武器型のソウルギアを持たないレベル4としては十分以上のステータスを獲得するに至った。
サイレーン達のブーストがあればステータスも身体能力も大きく上がるが、それ以外では流川の様に個人としてのステータスは武器持ちのプレイヤーより大きく下回る。
分かりやすく山田、ハルペーのステータスを見れば御堂の微妙さが分かりやすいだろう。
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【プレイヤー:山田雄太(ヤマダユウタ)】【所持ポイント:?????】
【LEVEL:4】
【ステータス:パワー:9 マジック:6 ガード:6 レジスト:8】
【スキル:ソウルギア:ハルペーLv4】
【ステータス:パワー:14 マジック:8 ガード:10 レジスト:10】
■合計ステータス
【ステータス:パワー:23 マジック:14 ガード:16 レジスト:18】
■ハルペー固有スキル
【マジック*10】mまでの距離に【(パワー÷マジック)+Lv】の威力を持つ無属性の斬撃を放つ。
【投擲自在】投擲する事で、相手に【絶対に命中】する。この時ハルペーは
自身の意思をもち首や腕、足などを刈り取り確実に手元に戻る。
【邪剣術:最上級】装備するだけで【邪剣術】を最上級で扱う事が出来る。
【剣術:最上級】装備するだけで剣術を達人級で扱う事が出来る。
【オートリフレクション】射撃攻撃や物理攻撃を装備者が認識していなくても
ハルペーが認識し勝手に反撃を行う。この時所持者の身体に負荷は与えない
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装備型のソウルギア使いは自身のステータスとソウルギアのステータスを合計した総合ステータスになるため、基本的には御堂達の様な特殊タイプよりフィジカル含め全てのステータスで上になる。
だが、ステータスの高さだけが勝敗に繋がる訳ではないし、ステータスが高くても扱いきれなくては宝の持ち腐れなため、最近は頑張ってるとは言えそれまで自堕落な生活をしていた山田では素の流川にも簡単に抑えられることが多い。
とはいえ、ハルペーのスペックの高さは同じレベル4の中でも高い方なのだが。アクセルもここまでの高いステータスは保持していない。
「ステータスブーストのエリクサーなんて去年なんか出てきただけで大騒ぎだったんですけどねぇ。今年・・・去年位から獲得ポイントと言い、少しインフレしてる気がしますよー」
「そうなのか? いや、そうなんだろうな。俺がもうレベル4なのに、流川があのレベルなのは確かにおかしいからなぁ」
初めて助けてもらった時の流川のレベルが4だ。流川自身は既に数年間戦い続けてきた実績を持つ古強者と言っても過言ではないのに、今ようやくレベル5になり、ほんの数か月戦ってきただけでレベル4に至っている御堂自身を考えれば、ポイントの配布が高くなっているのは自明の理だろう。
勿論それだけミッションの難易度も上がっているし、ダンジョアタックミッション等という様な変わったミッションも始まった。恐らくはディザスターの内部で何かが変わってきているのではないかとディーヴァも感じている。
「よっし、全部しまったぞー。そろそろ行かないか??」
「お、分かったわ、いやぁ、最初は戸惑ったがリバティのお陰で余裕でクリア出来たな。出来れば次も簡単で頼みたいもんだ」
「まーちゃんそれフラグだよ」
「ですよー、ケーキ屋さん? それに次からは5層。多分次からはトラップにも即死系の奴とかも出てくるタイミングですし、気を付けないとですね」
「そういやそうか・・・ま、それはショコラとクレアを信頼してるからな」
あっけらかんという御堂の言葉に顔を逸らすショコラとクレア。
「こういう所だよなぁ」と顔を赤らめながらも漸くこの階層を抜け出すのだった。
御堂達が居なくなったこの階層で、なくなった景品がいつの間にか補充されている事には誰も気づく事はないだろう。そして、他のプレイヤー達がこの階層に到着する。はたして彼等は24時間以内に、この階層を抜けられるのかは神かディザスターしか分からないだろう。
―238話了
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景品が補充されました!
難易度は変わりません!
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