第232話 うん、問題は分配だよね
「どうしましょうねこれ・・・」
「どうしたもんだろうな」
手に入ったアイテムを見て悩む御堂とディーヴァ。出てきたアイテムがとんでもなさすぎて分配しようにもどういう風に分けていいか難しいのだ。
これが片桐しかいなかったならば、彼女なら普通に蘇生薬は御堂に渡していて他は適当に分配で良いという風になっていたが、ディーヴァが居る時点でそういう訳にはいかない。
だが、ディーヴァとしても既に厄ネタになりつつある蘇生薬をもう一つ手に入れるのはお断りしたいし、ポイントで分配するにしてもそもそも蘇生薬を売るには時間がかかるし、どれくらいになるかも分からない。
「僕としては、蘇生薬はケーキ屋さん達に譲って、その分のポイントが欲しいですが、それも難しいですよねぇ」
「だな。売るにしても使うにしても、面倒臭いもんが出てきやがった」
御堂としては出てきた蘇生薬、あまり深く考えずにアクセル・・・山崎に譲ってやるか程度にしか考えていない。報酬ならばディーヴァとは破談になったが、彼の持つ防御アイテムで十分だとも考えている。サイレーンかテルクシノエーに付けられれば安全度も大きく上がるのだから。
片桐は真っ先に拒否。蘇生薬などという危険物は持ちたくないので、それなら残りのアイテムで欲しいの全部くれればそれでいいとの事だ。
「金銀財宝はアプリで販売できるのに、蘇生薬は売れないんだよなぁ」
「出来たら良いんですけどねぇ・・・さて、どうしましょうか? 僕としてはこれからの付き合いも考えれば結構妥協できますよー」
「つってもなぁ、売るアテもないしディーヴァもリバティもいらないとなれば俺しか欲しい奴はいないからな」
「主殿よ。まだ階層は続いている。この後の探索でも何かしらアイテム等を手に入れられる可能性もあるだろう。ボスも倒す事が出来ればレアアイテムにも期待できる。今は保存しておき、最後にどうするか決めた方がよかろうよ」
「おぉ・・・ハトメヒトがマジメな事を言ってる・・・」
「次の階層雨降ってきそうですねー」
急に真面目な事を言ってきたハトメヒトに辛辣な言葉を浴びせるディーヴァ。だが確かにそれもそうだと現状を再確認する。まだまだ3層という浅い階層にいる以上、ボスのいる階層にはまだまだ遠いだろう。運が良ければ次の階層がボスの階層かもしれないが、その可能性は低いだろうし、例えボス階層であったならば撃破しての報酬で美味い具合に分配も出来るだろうと考えた。
「とりあえず今はケーキ屋さんが保存しておいてくださいね。僕だとほら、怪しいでしょ?」
「自分で怪しいとかいうかねぇ・・・」
「それにもう一個蘇生薬持つとか、無理・・・精神的に無理です」
「あ、うんわかるわ」
莫大な価値のあるものを手にすると手のひらが震えるというがまさにそれ。ディーヴァ自身そんな高級品出来るなら持ちたくない。こう見えても金銭感覚は中流家庭程度のタイプなのだ。
御堂としても高級品ばかりなので気が引けたが、ここで押し付け合っても意味がないのでしぶしぶ全てマジックバッグに収納していく。
数分もしないうちにアイテムを収納し終わる頃には輝いていた宝箱も消滅していた。
「うし。それじゃ改めて次の階層を探すか」
「あ、そういえばまだそれがあったよね」
もう十分以上稼いだので、気が抜けていたサイレーン。現状は次の階層の階段か入り口も見つかっていない。
「リバティの方は大丈夫か? あの状態異常結構きつかっただろ?」
「ぅ・・・だ、大丈夫。でもまだ少し怖いから、ケーキ屋の後ろにいていいよな」
「ん? そりゃ構わんが」
「サイレーンさんみましたかー? あれがあざといって奴ですよー」
「全くだね。あざとさの化身って奴だね。そう言うのは私とかの役なのに」
「聞こえてるんだよそこぉ!?」
ガーっと騒ぐ片桐の姿に笑うサイレーンとディーヴァ。どうやら二人とも彼女を弄るととても面白いと思っているようだ。事実一つ一つのリアクションが可愛らしいので弄られるのも仕方のない事だろうか。なにせ二人に言われたように割と行動があざといのだから。片桐自身はそんな事欠片も考えてないが。
なんだかんだと少し体を休める事が出来た一向は再び次の階層に向かう。
既に遺体はないし、ただの気休めでしかないが小さな墓の様なものを6つ程作って。
※
再び探索を開始した御堂達。あの後も数回ほどモンスターに襲われたが、それ等のモンスターはレベル1~3程度の少数だったので直ぐに撃破されていく。トラップ等もあったが、そちらについてもショコラ達が一瞬で片付けていくので、時間をとられる事はほぼなかった。
時間的にそろそろ半日ほど過ぎたが、未だに次の階層への入り口は見つからない。
疲れはしないが少々小腹が空いてくるのは人間である以上仕方のないことだが、流石にこのよどんだ場所で、周囲の確認もとれない所では食べ物を食べるのも憚られた。
一応こういう時の為に直ぐに飲める栄養ドリンクなどは各自持ち合わせているので、適宜栄養補給は出来るのだが。
「長いなー。もう数時間位歩いただろ」
辺りをきょろきょろしながら御堂の後ろにしっかりとついて行っている片桐が零す。周りの様子は最初の頃とほぼ何も変わらない。色々な墓や枯れ木と変わらない景色ばかりが続いている。
澱んだ霧も相まってもしかして道に迷ってぐるぐる周囲を歩いてるのでは、と疑ってしまいそうになるが。そこは【神の右手】をセットしているクレアとショコラがそれはないと断言しているので、確実に先に進んではいるのだろう。
但し、周囲が森の様になっている階層なので、どこに次の階層への道があるかは分からないのでしらみつぶしに歩くしかないだけだ。
「他の奴等はどこまで進んでるんだろうなぁ」
「このダンジョンはどうやら時間軸も歪んでいるみたいですので、まだ1層にいるプレイヤー達もいればボス近くにいるプレイヤーもいるかもしれませんね」
「運が良ければ開幕ボス~ってのもあるんでしょうねぇ」
「それは運がいいのか悪いのか悩む所ね」
御堂達もケーキ作りの階層や直線の階層など、色々不思議な場所を進んでいる。他のプレイヤー達ももれなく不思議な階層を進んでいるのだろう。
御堂としては自分含めて、仲間が皆生きて帰れるのならボスを誰が倒しても構わないと考えているので、そこまでボスの階層に到着したいとは考えていない。
いっそ、誰かがボスを倒してくれても構わない位に気楽に考えている。
それは勿論片桐も同じだ。というより片桐にしてみれば出来れば参加しないでのんびりとセーフハウスで遊んでたい位なのだ。伊達にニートしていない。
この中で唯一ボスを倒したいと考えているのはディーヴァ位だろうか。そのディーヴァも別段自分で絶対にボスを倒したい訳でもないので、かなり気楽な物である。
山崎の様に蘇生薬を求め、そしてディザスターを滅ぼすためにボスを倒す事を目的としている者もいるだろうが、御堂達はその辺緩かった。
「ん? まーちゃん。あっちに階段っぽいのあったよ!」
「お? 漸く次の階層に行けそうだな。ここに何時までもいたらキノコでも生えてきそうだったぜ」
「よーしっ! 次の階層いくぞー!!」
「リバティさんここを抜けられるとわかって急に元気になりましたねー」
漸く見えてきた次への階層への階段を見つけた一行は、色々な想いを残し次の階層に向かうのだった。
―232話了
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売るにも面倒、持つにも面倒、1個しかないので更に面倒。
高すぎるアイテムは面倒ですよね。
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