第186話 今までは作る側、今日からは貰う側

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部屋の温度が7度からあがらないんです・・・・

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「メリーバレンタインクリスマスあけまして!!! という訳で本日ついにバレンタインがやってきた今日この頃、皆の者如何お過ごしであろうか、我は今日もいつも通りに右側にエンジンが回っている感じである、しいていうならばそう、右側の回路がぎゅるんぎゅるん、所謂一つの厨二回路という奴であるが、今日には全く関係な―」


「どやかましいっ!!」


「ジェバンニッ!?」


 きらんと一昔の漫画のギャグ落ちの様に綺麗に吹き飛んでいくハトメヒト。クレアもどこから持ってきたのか木製バットのフルスイングだった。


 とまぁ、あさからハイテンションだが、今日はついにバレンタインである。


「あぁぁぁぁ・・・俺今日もう死んでもいい・・・・!」


「逝くな! まだいくなーーー! 山田あああああああ!!」


「新島さん・・・俺、もう人生に悔いがねぇっす・・・」


「山だあああああああああああ!」


 そしてそこでは寸劇をやらかしてくる山田と新島。その手にはいくつものチョコが握られてとても幸せな表情で死んでいた。


 サイレーンとテルクシノエー、そしてショコラからの義理チョコを貰ったらしく、凄まじいほど絶叫して喜んで居た。ここまで逆に喜ばれればまぁ・・・渡した甲斐はあるだろう。若干サイレーンとテルクシノエーが引いているが。


 ショコラはあの寸劇を見たかったようで大爆笑中である。


 因みに俺はスピネルと片桐から義理チョコを頂いた。


 片桐が頑なに、義理チョコだからな!と言ってたが、寧ろ本命がいるのかと言いたい俺である。


 スピネルは結構自信満々な表情で・・・いや、基本感情を表に出さないのでわからんが心なしか顔が満足そうだったのでうまくいったのだろう。


 俺はケーキとかの先生だから流川以外で唯一作ってくれたそうだ、いい子過ぎて有難いね。こりゃお返しに美味いキャンディーを作ってやらないとな。


 で、本番はここからだが、割とダイジェストで行きたい。


 理由は俺が砂糖で死ぬからだ。


 最初にチョコをくれたのはミューズの二人だった、二人が背中合わせになりながらこっちを見て上目使いで「本命チョコ」だよって渡してくるんだぞ? 何この男の夢。誰にもやらんからな? このチョコは俺のだ。


 二人が用意したチョコはスタンダードなハート形のデコレートチョコらしい。赤い包装に綺麗なリボンを巻いてあるそれは遠目でバレンタインを見ていた俺が、他の男子が恥ずかしそうに受け取っていた様なあのバレンタインチョコそのものだった。


 更にサプライズと言うか、二人の格好がチョコの包装のような激しい赤色に赤色のテープを巻きつけたような姿という、普段のギャルの姿からかけ離れたアダルティックな姿に流石の俺も心臓が飛び跳ねそうになった。


 隣ではサイレーンが「くっ・・・! やはり裸リボンがよかったか・・!」などと悔しがっているが、なぜ君は俺の理性にそこまでダメージを与えてこようとするのか。てか確実にテルクシノエーにハリセンでどつかれて終わるだろうが。


「流石にショコラちゃん達じゃチョコ作るのあれだったから、高級品チョコだったけど、来年はおいしいのつくったげるからね♪」


「ごしゅならチョコボンボンも美味しく食べれそうだし、次はあーしもそれで考えてみるかな」


「いや、手作りじゃあなくても十分嬉しいよ、ありがとな二人とも」


「にひひ、まーちゃん顔あかーい♪」


「その顔見れただけで用意した甲斐があったね」


 俺の両隣で指で俺の脇腹をつんつんと突いてくる二人。やめてくれ、そういうのに凄く弱いから俺。


「・・・・し、死んでる・・・!?」


 俺達の空気に当てられたのか、新島と山田が白眼を剥いて倒れていた。なんか口から呪詛みたいなのを延々唱えているのがキモいというか怖い。


 あ、山崎はそもそも参加してないので居ない。こういう催しにはまだ参加する精神的余裕はないんだろう。今は俺がディーヴァから取引内容を聞いて伝えている所だ。山崎がその内容で良しとするか、譲歩するか断るかはあいつの連絡待ちだな。


 次にチョコをくれたのはテルクシノエー。


 此方は彼女らしくチョコのアソートだ。多種多様な一口チョコを作ってくれたらしい、少し大きめの箱にまるでプロのチョコの様に完成したチョコが色々と並んでいる。


「ご主人様なら色々な味を好まれるかと思いまして・・・あまりうまく作れなかったのですが」


「テルクシノエーがマウント取ってきた。あの出来で上手く作れなかったら私のなんて準チョコ扱いになるにょふ」


「そ、そういう事じゃあなくてね!?」


 あわあわとしている姿がもう愛らしいよな。この中で一番大人のような色気と魅力があるのに、この中で一番純情で可憐で清楚とか、清純派サキュバスみたいな矛盾の塊と言わんばかりである。


 もらったチョコも少しずつ楽しめるような感じで、俺の為を思って作ってくれたのが本当によくわかる一品だった。こりゃ俺もお返しは本気でやらないとならんなぁ・・・元々手加減するつもりもなかったが、がんばらにゃあ。


「トリは私、やはり元祖ヒロインは強い」


「自分で元祖とか、もうヒロイン周回遅れてるみたいな事いってる?」


「ショコラそこ! 黙らシャラップ!!」


 普段と見た目は不思議系、でも喋ると愉快系筆頭なサイレーン。


 そんな彼女が普段の快活さとは真逆に少しもじもじとしながらチョコレートを渡してくるのは中々にくるものがある。


「私のはテルクシノエーとかみたいに凝ってないけど・・・でも、愛情は沢山籠ってるから・・・勿論本命、だよ?」


「がふっ・・・」


「まーちゃんが死んだ!?」


 その言葉にクリティカルヒットを受けた俺は山田達の様にその場にパタリと倒れた・・・効いたよ、効いたぜお前のパンチ・・・いや、チョコ。


 何ていう破壊力なんだ、それまでも十分とんでも破壊力だったが何とか耐えてこれたのに3連コンボは俺にも耐えきれなかったよ。


 俺は幸せそうな表情で天に召されていった。












「ふふ、賑やかでカオス溢れる光景だな。願わくばこのような騒がしい平穏がいつまでも続かんことを」


 いつの間にか戻ってきていたハトメヒトが、大騒ぎしている御堂達の姿を見て基本変わらない無表情が、少しだけ笑顔になっていた。


 初めてのバレンタインチョコ、それも本命を連続で受け取った事で許容量を超えた御堂が倒れそれを介抱しているサイレーン達。


 ミッション中とは違う、そんな小さくも賑やかな平穏。


 彼女が騒がずとも、誰かが笑っていられるこの時間がいつまでも続けばよいと願わずには居られなかった。


「まだまだ、これからも難儀な事が多かろう。だが、いま暫くはこの喧噪を楽しまれるといい」


 大騒ぎの様子を見ているハトメヒトが、近くにあった椅子にちょこんと座る。


 そこには普段御堂が着ている服が無造作に投げ捨てられていた。


「確か、ハッピーバレンタインはあっていたかな? 主殿よ、お礼の対価は貴方の笑顔で―」


 小さな小さな、小箱に入ったチョコがそこに置かれていた。



―186話了


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バンアレン帯!!!

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