第95話 言いたい事は沢山あるけど、とりあえず死ね。

今日も閲覧ありがとうございます。

日々寒くなりつつありますね、少し前まで熱中症云々で騒いでたとは

思えない感じです。ストーブも常に全力、大変です(汗

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 あまりにも予想外過ぎる、というより行き当たりばったり過ぎるディザスターのやり方に怒りを通り越して呆れがくるが、だからといって状況が好転する訳もなく、巨大化し暴れる元リジェクションからプレイヤー達はそれぞれ距離を取っていた。


 既に作戦が破綻した御堂と流川達のパーティもリジェクションから離れている。急なルール変更。確かに記載自体はあったが、突然すぎてどうしようもなかった。


 確実にハトメヒトの蛮行とリジェクションの処理の為に行われたものだろう。


 ハトメヒトを他の誰かが倒せればいればそれで終わった可能性もあったのだが、御堂が思うに、誰が倒しても結局はリジェクションがレイドボスか何かになったのではないかと考える。


 とはいえ、レベル9のどうしようもないレイドボスという訳ではなく、自我の無い本能で動いているだけのレベル6の化け物であるならば、まだ勝てる可能性はある。


 周りのプレイヤー達もレイドボスが結局現れた事に恐怖したものの、ボスのレベル6という事でまだ希望を見出しそれぞれ戦っている。


 彼等も彼等でレベル3やレベル4のプレイヤーではあるのだが、やはりレベル差があるせいか効果的なダメージを与える事は出来ていなかった。


 サクラとしてリジェクションに雇われていたプレイヤー達もこうなってはポイントも貰う事は出来ないと愚痴りつつも攻撃を仕掛けているのが御堂の所からでも見える。


「予想通り、って訳じゃあないがやっぱりあれで終わらなかったか」


「ですね。ディザスターからすれば最終的には予定通りにレベル6のレイドボスを出せたと言った所でしょうが」


「何で二人ともそんな冷静なんだよぉ!? あ、あんなのに勝てるのか!? もう10人近く殺されてるんだぞ!?」


 リバティが悲鳴に近い叫びを上げる。


 リジェクションがレイドボスに変化してからこの数分で既に二桁に近いプレイヤーが死亡していた。巨体な肉塊になったので動きは鈍いがその分攻撃力と攻撃範囲の広さは広く、無造作に動くだけで近くにいたプレイヤーはひき殺され、飛び上がって逃げようとしたプレイヤーは腕の一振りで吹き飛ばされ地面にたたきつけられ即死している。


「攻撃自体は通るが、ダメージになっているかわからないな・・・後、あいつの攻撃何かおかしい」


「アクセル殿もそう見えたか。奴、中々に面倒臭い能力を持っているようだ」


「あぁ、あの程度のスピードを避けられないのは流石におかしい。腕を叩きつけられたプレイヤーは跳躍したときに【リジェクション】に引き寄せられていた」


「・・・あれは危険。下手に近づくと逃げられない」


 注視していたアクセルにはリジェクションの攻撃のネタが見えた。


 よく見れば全員の肉の塊が徐々に凹んでいくのが見える。時々それが爆ぜてまた膨らみ、萎んでいるのだ。動き方もぎこちないというより押さえつけられているように見えた。


「・・・多分自分のスキルで束縛されてる、恐らくは・・・」


「重力系、ですね」


「・・・・ん。流石です」


 流川が答えを言うと花が咲いたような笑みを浮かべるスピネル。


 彼女と流川の想像通り、目の前のレイドボスは自分が所持していたスキルによって縛られていた。彼が本来得意とするのは相手の動きを止める重力系のスキルだ。

 

 それを用いて相手の動きを止め、甚振り続けるというのを好んで行っていたのだ。流川達に使わなかったのは【遊び程度の仕事】なのでセットしてなかったのと、現在は流川達に使う事が出来ないので見ていなかっただけである。


 だがレイドボスとなり人から化け物に変わった事で本来使えていたスキルが暴走しているらしく、重力系のスキルが自分自身を縛り付けていたのだ。


 それでも尚ここまで動く事が出来るのは化け物になった事もあるが、スキルを半分は使いこなしているからだろう。


 自分自身を縛り付けている重力だが、それは自分の周囲にも発生し続けており、近づけば重力による引力で引き寄せられそのまま押しつぶされる。そこに巨体の重量が乗るのだ、普通に耐えらえるものではない。


「つまり、近づいたらやばいって事でOK・・・?」 


「OK」


「マジかぁ・・・また俺後ろからハルペー振り回すしかできねぇの?」


「それが出来るだけいいじゃねぇか!? 俺なんて接近戦しか出来ねぇんだぞ!?」


 効果的な遠距離攻撃持たない佐伯、アクセル、バンカーがこの時点でほぼ戦力外となってしまう。御堂も接近系なので同じくだが、彼の場合はソウルギア達が遠距離攻撃を得意としているので、そちら任せになるだろう。


 ハルペーも項垂れているが、この状況では十分ダメージを与えられるプレイヤーの一人になる。偃月型の魔法の衝撃波を飛ばせる上に、その威力はレベル2の白兵型とは思えない火力があるのだ。


「い、一応強化した銃器があ、あるから、そ、それ使え!!」


 攻撃手段の半分以上を封じられた御堂達の窮地を救ったのはリバティだった。


 彼女のソウルギアの効果を使えば機械に属する武器などは一線級にまで強化できる。彼女が持ってきていた銃器はそれぞれ安物の武器ではあるが、この状態においては下手な武器やソウルギアよりずっと役に立つ。


「やったねリバティ、活躍の時が来たよ。武器の強化オネシャス」


「頼むぞリバティ。お前の強化が頼みになるわ」 


「・・・! そ、そうだよな! 私だって役に立てるんだ! ま、任せろ!」


 褒められたのが嬉しかったのか、いつも以上にやる気になっている彼女がそこにいるが微笑ましい様子を見ている時間はあまりない。御堂達はそれぞれ強化した武器を所持していつでも攻撃できるように準備を整えていく。


「射程内に入らなければあのスピード、僕達が被害を受けることは無いでしょう。ある程度知能があれば家屋や車などを投げてきそうですが、その様子もありませんし」


 現状リジェクションは束縛された状態で目に付く物を薙ぎ払っているだけで他に能動的な行動を行っていない。プレイヤーを攻撃したのも近くにいたのがたまたま攻撃に当たった、踏みつぶされただけだ。


 まともな思考能力があれば重力スキルを操りその巨体と攻撃力で蹂躙する様なバケモノになる所だったが、近くにいけない以外はその辺のモンスターよりも弱いと言える。


 絶えず自身の放つ重力で潰されては新しい肉が湧き出て巨大化しているので、そのまま放置すればいずれは動く事も出来ない肉の塊になりそうだったが、いい加減にそろそろディザスターがそんな生易しい真似をする訳がないと全員認識している。


 間違いなく早めに斃さなければ面倒な事になる、それが分かっているから他のプレイヤー達もそれぞれ攻撃を続けているのだが、やはり致命的なダメージには程遠い。


「とりあえず撃ちまくるしかねぇか・・・リバティ、強化と補充頼むぞ!!」


「ま、任せろ!!」


「全員攻撃だ! 流川は何かあったら指示を頼む!」


 こうして御堂達も攻撃を開始するのだった――






◇◆◇◆◇◆◇◆






「・・・まーちゃん。これって効いてるのかな?」


「わからんが撃ちまくるしかねぇだろ!!」


 一斉射撃から5分ほどたっただろうか。雨あられの様に銃弾を浴び続けているが目の前の巨体は倒れる事もなくその場で永遠と暴れ続けていた。


 テルクシノエーの発狂スキル等も試しているが、既に自我が壊れているのもあり何の効果もなく、それぞれが出来うる限りの遠距離攻撃を続けている。


 戦い方を覚えたプレイヤー達だが、それだけでしかなく、攻撃はほとんど効いていなかった。


 ダメージ自体は与えられている。


 ただダメージを与えた傍から肉が弾け、新しい肉が生まれ膨れ上がっていくのだ。頭部や口内、目なども攻撃しているのだがそれも爆ぜては直ぐに元に戻る。そして更に膨れ上がっていくだけだった。


 寧ろ攻撃し続けた事で巨体になったリジェクションはその大きさが既に2倍以上に膨れ上がっていた。最初はまがりなりにも人型をしていたが、今は巨大な肉の塊から歪な腕や足が何本も生えているという、生理的嫌悪を催すものに変わり果てている。


「参りましたね。このままではジリ貧です。そして嫌な報告もあります」 


「聞きたくないけど言ってくれ!!」


 御堂の隣で強化されたライフルを連射している流川が、ダメ押しの最悪な情報を告げる。


「このミッション、制限時間が無くなりました・・・倒すまで、終わりません」


「ふざくんな!?」


 怒りに任せてマシンガンを乱射する御堂。


 アプリに表示されていたルール変更部分に、レイドボス撃破でしかミッションから解放されませんと掲載されていた。


 一応通常のミッションは制限時間があり、それを超えればミッションは失敗になるがとりあえずは生きて帰る事が出来るのだが、今回に限ってやりたい放題しているように見えた。


 もしかしたらディザスターも今回の事で苛立っているのではないかと御堂は考えてしまう。命令違反をしたというリジェクションや、ハトメヒトの事があってこんなことをしているのではと思ったが、答えを知った所でどうにもならない。


「パパ、まずいかも・・・」 


「・・・!! 貴方達! 下がってください!!」


 ポルクスの焦った様な声と同時に流川が自分達より前の方で攻撃し続けているプレイヤー達に下がるように声をかけるが、わずかに遅かった。


 攻撃を受け続け膨れ上がっていた最早腕というよりは触手になっている部分が風船を弾けさせたように乾いた音を立てて弾ける。


 弾けた肉の塊はそのまま弾丸の様に降り注ぎプレイヤー達を貫いていく。


 何人かは致命傷は避けられたようだが、残りは全身を貫かれてそのまま死亡した。


「爆発の威力が上がっている・・時間がたてばたつほど不利なのはわかってましたが・・・」


「流川さん!? どうすれば!?」


 佐伯が不慣れな銃を撃ちながら助言を求めるが、この状態では流川と言えどどうにかする手段が見つからない。即座に復活出来るカストルが先ほど直接攻めて攻撃してが、結局ダメージはほぼ通らず重力に巻き込まれて潰されて死亡している。


 即座に復活して戻ってきたが、彼もあれではどうしようもなかった。


「レーザー砲でも用意しなきゃ無理なんじゃねぇの!?」 


「・・・そんなもの売ってないからどうしようもない・・・!」


 この中で一番貢献出来ているのは魔法使いタイプのスピネルと【斬撃】の衝撃破を飛ばせるハルペーだ。後は魔法をセットしているテルクシノエー達も魔法などで攻撃しているが、手数はやはり彼女達に大きく劣る。


 特にハルペーの斬撃属性の衝撃波は銃弾の様に打ち貫くのではなく切り裂いていくので、爆発させずに切り飛ばせている。惜しむらくは火力が足りな過ぎて再生に追いついていない所だろう。


 宝石を生成する魔法では銃と同じなので、スピネルもセットしている魔法スキルで攻撃し続けているが、此方もやはり焼け石に水だ。


「ま――?! 御堂君!?」


「っ!?」


 再び爆発を起こし肉の弾丸が降り注ぐ。今度は更に射程が伸び御堂と流川、リバティたちに降り注ぐのだった――



―95話了


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お肉が膨らむ恐怖・・・・


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