第139話 騎士が清廉潔白と誰が決めました?

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今日は最高気温マイナス6度…寒かったです。

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 剣を地面に突き刺し両手で柄を持ったまま微動だにしない騎士。


 その隣では正義のメタルヒーローになった佐伯達が激戦を繰り広げているが、此方は静かな物だ。


 緊張した面持ちのバンカーだが、既にソウルギアのチャージは終わっている。


 レヴォリューションはソウルギアで強化したショップ産の武器を抜き身の状態にしている。


「さぁて・・・俺は油断はしないから、そこを狙っても無駄だぜ?」


 武器を騎士に突き付けて言う。


 あくまで微動だにしない騎士に、バンカーももしかしたら彼が深読みし過ぎているのではないかと思っていたが、よく見ると剣を持っている腕が小刻みに震えているの事に気付く。


【・・・・・・ふむ、流石にそこいらの雑魚ではありませんか】


「・・・!? しゃ、べった・・・?」


 モンスターは基本的に言葉を喋らない。咆哮したり絶叫したりはするが、あくまでも本能のままに叫ぶ程度である。それは今までバンカーが参加してきたミッションのモンスターが一度も会話出来る知能を持っていなかっただけかもしれないが。


 ハトメヒトは普通に喋っていたが、どうみてもあれはイレギュラーだと選択肢から普通に外れる。


 そう考えると、目の前の騎士が聞き取りにくい以外はまともに日本語を話している事が不思議でならない。


【モンスター全てが下劣で知性の無い、モンスターではないと言う事です。私の隣に居る同僚は確かに知性の欠片もない、本能だけの動物ですが、あれはあれで可愛いものですよ】


「自分より下をみて笑ってるって事かい?」


【私より上など、造物主様のみです。後は須らく下賤、貴方達プレイヤーは我等が造物主様のお気に入りなだけの駒、自分達が世界の支配者などと思わない様に】


「なんだい、結構ぺらぺら喋るじゃないか。同僚があれだから暇だったんだろう?」


【えぇ、私と同格の存在がここにはいませんからね。貴方達如きと会話する事も正直な所、低能と話している感じがして頭が疲れますけどね】


 あからさまにこちらを煽り・・ではなく、本気で目の前の騎士は二人を知能の無い動物レベルだと決めつけて会話している。一応言葉が通じるから、動物に話しかけるような優しさを見せつけているだけだ。


 それが嫌でも理解できたバンカーが少しだけ苛立ちを募らせるが、会話している当のレヴォリューションはどこ吹く風だ。


「そりゃまぁ残念だ。で、そろそろいいかい?」


【えぇ、いいですよ。さぁそこに跪いて頭を垂れなさい。今なら痛みなく斬首してさしあげましょう。下等生物に対する私なりの慈悲です】


「ふ・・・ふざけるな!」


 介錯してやるからそこで無抵抗に死ねと言う騎士にバンカーが怒り食って掛かる。


 それに対して騎士はここからでも聞こえる位深いため息をついた。


【これだから少し喋れるだけの下等生物は。私の慈悲も理解できないのですか】


「お前に殺される事のどこが慈悲だ!!」


【慈悲です。これ以上無いほどの慈悲ですよ。貴方達の様なもう役割を終えた下等生物、造物主様の駒になる事すら勿体ない。そんな我等からすればどれだけ生きたまま切り刻み永遠に痛めつけなくてはいけない大罪人を、斬首だけで許そうとしている私の深い慈悲の心も理解できませんか・・・嘆かわしい。貴方達は動物以下ですね】


「ディザスターが勝手にやって、罪もないプレイヤー達を沢山量産して、それでプレイヤーになった事が罪だって言うのか!? 全部ディザスターのせいじゃないか!」


【拒めばよかったのですよ、そう、そのような恩寵、私達の様な下賤な存在には勿体なさすぎます、この上は自らの命を捨てて、返還いたします。そう言いながら命を差し出せば良かったのです。それが貴方達下等生物が出来る唯一の善行だというのに】


「・・・・お前・・・・!!」


「落ち着けバンカー」


「っ! レヴォ君・・・」


 怒り咄嗟に飛び出そうとしたバンカーの肩を掴んで止める。

 

「いろんな意見があるもんさ。後、話半分に聞いておいた方がいいぜ? こいつ単純にお前さんを馬鹿にしてただけだから」


「え・・・?」


「怒り狂ってくれた方が対処しやすし、殺す時に楽しい。そういう理由だろ?」


 一切態度を崩さない騎士が初めて苛立ったような声を出す。


【下等生物の分際で随分と小賢しいですね・・】


「何言ってんだ。下等生物だからこそ頭を働かせるんだろう? 後、バンカーを弄るのはそろそろやめて、かかってきたらどうだい? それとも―」


 ニヤリと笑って彼は続ける。


「普通に戦いを挑まれたら勝てる自信がないのかい?」


【・・・! 下等生物が・・・! 良いでしょう、私がお前達に聖なる断罪を与えます! 我が慈悲を受け世界から去ねっ!!】


 怒りが頂点に達した騎士が突き刺していた剣を抜きさると同時に渾身の力で振り落とす。


 その斬撃に対してレヴォリューションが軽く武器を両刃の剣に沿えるように卸す事で普段以上の速度と重量が騎士を襲う。


【むぅっ!?】


 避けられる所か自分の斬撃に合わせた一撃が剣を地面に突き刺した。咄嗟に剣を引き抜こうとするが―


「そいつは悪手だぜ?」


「ああああああ! マキシマムバンカーぁああああ!」 


【っ!? おおおおおおおおおおおおおおおおおっ!?】


 轟音と共にマキシマムバンカーの杭が射出されるチャージによって破壊力を増した一撃を騎士はぎりぎり躱す事に成功したが、その代わりに両手剣が粉々に粉砕される。


 攻撃を回避した騎士が一気に距離を取った。


 目の前で失った自分の剣。騎士にとって剣は命と同義だそれを失った事で騎士はこれまでにないほどに怒りだす。


【下等生物!! 下等生物!下等生物!下等生物!下等生物!下等生物!下等生物!下等生物!下等生物!下等生物!下等生物!下等生物!下等生物!下等生物!下等生物!下等生物!下等生物!下等生物!下等生物!下等生物!下等生物!下等生物!下等生物!下等生物!下等生物!下等生物!下等生物!下等生物がああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!】


 怒号がこの空間に響きわたる。


【我が魂を!! 造物主様より賜れた我が剣を! よくも――】


「いや、お前さん必死こいて避けたじゃないか、剣を置き去りにして」


 レヴォリューションの言う通り、バンカーの一撃を必死に回避しようとした騎士は自分曰く命より大切な騎士の剣をあっさりと見捨てて逃げ出していた。


「それでよく騎士の魂とか言えるよな? あれだろ? 実はそこまで大切でもないんだろ? 最悪自分の命よりは捨ててもいいものだよな」


【・・・お、のれぇえええ! 私が愚弄するかぁああああ!!】 


「いや、事実を言っただけなんだが・・・沸点低いな、あんた。それで騎士になれるってモンスター世界の騎士ってのはならず者でもなれるのかい?」


 レヴォリューションは事実確認をして居るだけで煽っている訳ではない。奇しくもほぼ似たような事をやられる騎士のモンスター。


 全身がぷるぷると震えこれまでにないほどの怒りを覚えていた。絶対にこの下等生物は殺す、そう心に決めた騎士はこれまでにないほどの憎悪を込めて二人を睨みつけた。


【必ずだ! 必ず殺す! いいやその前にお前達に死んだ方がマシともいえるような絶望と苦痛を与えてやろう! 生きたまま切り刻み、泣いても叫んでも許しはしない! 私をコケにした代償は絶対に払ってもらうぞ!!】


 剣を失った騎士がショルダータックルを仕掛けてきた。


 巨体を生かしてのその攻撃は大型トラックが猛スピードで突っ込んできたレベルの速さと破壊力を持つ。二人ともその敏捷性を生かして咄嗟に回避に成功した。


 そのまま壁に激突する騎士、先ほどモンスターが壁に吹き飛ばされ凹み壊れた壁以上にバラバラと壁が崩れ壊れている。それでも扉以外ではここから出る方法はないのか、それ以上には崩れる事はなかったが。


【ええぃ、ちょろちょろとうっとおしい! 下等生物が何も偉そうに回避するのです!!】


 騎士剣を用いれば最上級の剣技を容易く扱えるが、格闘はほとんどした事がない。故に破壊力とスピードはあれど、直線的なタックルしか出来ない騎士は二人にとって面倒くさいだけで、勝てない相手ではなかった。


「レヴォ君。あいつを倒そう・・・あんな奴をこのまま生かしておいちゃいけない」


「ま、どちらにせよ倒さないとボスにはいけないしなぁ。んじゃ俺が切り込んで隙を作るから、一撃は頼むぜ? 多分まともに命中すれば一発だろ。じゃなきゃ避けないしな」


 軽く地を蹴り、一瞬で騎士に肉薄するレヴォリューション。


 その接敵に驚き動きが止まった騎士だが、直ぐに我に返り、待っていたとばかりに力任せに殴る蹴るを繰り返していく。


 だが剣を用いての戦いならばともかく、素手技術を持たないパワーとスピードだけの攻撃はレヴォリューションにとって回避しいなす事は容易い、まるで暴風の様な連撃を避け、躱し、見切り、いなし、受け流していく。


 イライラを募らせた騎士は更に攻撃を繰り返すが、単調になっていく攻撃などその気になれば数時間程度余裕で捌ける。感じるプレッシャーもレヴォリューションにとってはそよ風の様なものだ。


【何故だ! 何故当たらないのです!?】


「あんた、自分でやろうとしてたことだろう?」


 相手を挑発し、怒りを向けさせ攻撃を単調にして自分は冷静に技術を持って対応する。そうすれば勝つのは自分。騎士がバンカーに対してやろうとしていた事をレヴォリューションにやられているだけだ。

 

【か、下等生物があああああああ!】


 一度怒り狂った心を冷静に出来る程、騎士は立派な精神を持っていなかった。


 我武者羅に攻撃を続ける騎士をしっかりと見つめ、バンカーは再びマキシマムバンカーのチャージを始めたのだった。




―139話了

  


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言葉が喋れる=話が通じるという訳ではないという事ですね。

明日のお仕事を頑張れば土曜日がおやすみで連休・・・少し風邪気味なので

ゆっくり休みたい所です。

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