第115話 覚えてますか? 割と初期からいます
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中学校生活はそこまで楽しいものではなかった。
彼にとって学校とは単純に学びに行く所であり、友人などと交流を深めるなんて言うのは夢物語だ。
昔からどんくさかった彼にとって学校とはイジメられる場所でしかなく、逆に今となっては腫れ物扱いされている、家族を心配させない為に最低限学校に行っているだけで、卒業した後は高校に行くのを辞めようかと考えている。
現在は冬休み中なので、考える時間は沢山ある。それに命を懸けた戦いも半年後まではないのだから、中学最後の期間を大いに楽しもうと考えていた。
彼の名は
【マキシマムバンカー】の使い手だ。
上に大学生の兄と高校生の兄が居るどこにでもある一般家庭。家族仲はそこまで悪くもなく良くも無い、兄二人に疎まれているという事はないが、大学生の兄からは学力が今一な自分はあまりよく思われていない。
嫌われてもいないが、好かれてもいなかった。高校生の兄は小さい頃は色々構ってくれたが、今は夜遊びが激しくなり、性格もかなり悪くなっている。それでも苛められたりはしないが、今は顔を合わせても一言二言会話する程度だ。
母は事なかれ主義の普通の主婦で、父親は基本仕事で家に居ない。
割とどこにでもある一般的な家庭、その中でも少しダメな方に向いている方だろうか。彼としても多少実家も居心地が悪いが、それでも自分が夜出歩いていても文句を言われる事もなく、時々心配される事もあるので、家族達をそこまで嫌う事は出来なかった。
今は寧ろ、例え徐々に疎遠になりつつも家族を守るためにプレイヤーとして今戦い続けている。
子供の浅い考えかもしれない。
だが、これは親に相談したからどうにかなるものではない。寧ろそれで親を巻き込んでしまったら、ただの一家庭など簡単に壊されてしまう。
相談できるような存在もいなかった。先生に話したからどうなるというのか。自分がいじめられたことを素直に話しても、「それは君の思い込みだ」やらなにやらと頑なに認めなかった彼等に期待する筈もない。
寧ろ彼等に話したからと言って何が出来るのか、誰にも相談する事など出来ないのだ。しても意味がないし誰も巻き込めない。まだ20歳にも届かない、中学生の自分しか戦う事が出来ない。
ならば戦って生き残るしかない。戦い続けこの町を護り家族を守る、誰に知られる事も無い孤独な戦いだった。
だが最近は少しだけ変わってきた。
友人は相変わらずほとんどいない。だがそれでも戦友が出来たのだ。頼りになる戦友達が。
ずっと胸にしこりの様なものを抱えて戦ってきた彼にとって、頼れる戦友というのは本当にありがたい存在だった。
最近ではほどよく連絡を取り合う戦友も増えていた。
その中で一番連絡が多いのは、前の戦いの時に一緒に共闘した【レヴォリューション】だった。本名はお互いに知らない。彼もそういう情報はお互いに秘匿した方がいいと言っていたので彼もそうしている。
主に通信アプリを使ってのメールやチャットでのやり取りではあるが、日々の割とどうでもいい事から、ミッションの事、最近ではそこそこ気心がしれたのかゲームの話までそれなりの頻度で話す事が多い。
レヴォリューションはどうやら彼と同じくRPG系のゲームが好きらしく、王道RPGでどのキャラが好きか、どこにどんなレアアイテムがあったなどの会話もする程には打ち解けられたと思っている。
なので今回来た連絡もいつもと同じ他愛もないものなのかと思っていた。
「・・・エクストラミッションに参加しないか・・・かぁ」
そこに記載されていたのは、次開催されるエクストラミッションへの誘いだった。シーズンも終わりわざわざ参加する理由等はないのだが、前回のラストミッションの時にレヴォリューションは参加していなかったことを思い出す。
ある程度仲が良くなったとはいえ、参加云々に対して余り突っ込んではダメだろうと比較的小心な彼は聞く事も無かったが、もしかしたらポイントが足りなくなったのかと考え、報酬が美味しいと言われたので見てみたが、確かに破格すぎる報酬が載っていた。
「最低でも10連チケットは貰えるんだ・・・凄い、レジェンド30%チケットだなんて!」
目を引くのはレジェンドスキルチケット。確率が30%と言うのはかなり破格と言えるだろう。彼も一応SSレアスキルは手に入れたが、レジェンドは流石に持っていない。というより彼が知る中でレジェンドスキルを持っていそうなプレイヤーは居なかった。
手に入れれば破格の力が手に入る。下手なレベル上昇なぞ無意味になるほどの効果があるらしい。強さを求めている訳ではないが、家族を護れるような力はある程度は持っておきたいと考えている彼にとっては、これは参加しない手はない。
ダメでもクリアさえすれば10連チケットは貰える、もう一つの報酬アイテムである蘇生薬は確か連絡を取りあえるプレイヤーのもう一人であるアクセルが欲していたアイテムだ。運良く手に入れば安く譲ってもいいだろう。
「僕も参加させてもらうよ・・・と。あ、これ6名揃わなくちゃダメなんだ。凄い制限があるなぁ」
少し前までの彼ならば誘ってもらえたのは嬉しいが、ここに書いてある様に他の知り合いのプレイヤーが居れば誘ってほしいと言われても、無理だと断るしかなかったが、今の彼は最低でもアクセルは誘う事が出来る。
そしてアクセルを誘えれば高確率で、彼と今行動を共にしているとても強いプレイヤー達も誘う事が出来るだろう。
アクセルにハルペー、この地区最強のジェミニとその親友であるケーキ屋。他にもスピネルやリバティ、佐伯と余裕で集まるほどの伝手が彼にはある。
報酬の一つに蘇生薬があるのなら彼も参加してくれるだろう。寧ろ急いで連絡しなくては彼等だけでメンバーが集まってしまう可能性もある。
「急がなくちゃ・・・!」
思い立ったが吉日とばかりに彼は直ぐにアクセルに連絡を取るのだった。
※
結果から言うと返事はOKだった。期待していた通りに残りのメンバーはアクセルの方で集めてくれることにもなり一安心と言えるだろう。
直ぐにレヴォリューションに連絡をとると珍しく感謝された。
ミッション開催時期は5日後。クリスマス手前と言う事で先ほどアクセルを通じてケーキ屋からクリスマスパーティに参加しないかと誘われた。
クリスマスパーティに誘われた事なんて彼には初めての経験、ミッションの後の打ち上げも兼ねていると言う事で、一も二もなく参加を表明していた。一応レヴォリューションにも伝えていたが、そっちはまだ色よい返事は帰ってきていない。
ベッドに寝転びながらスマホを放り投げてぼーっとする。
デスゲームに巻き込まれ、誰にも知られる事なく必死に戦い続けてきた。仕方のない事だと諦めて、家族を守るために。
だが、まだ彼は中学生なのだ。スピネルの様に精神が成熟し過ぎている訳でもない。些細な事で傷つくし、元々繊細であり、気の弱い少年だ。
今でこそレヴォリューションやアクセルという戦友達が増え、悩み事もある程度吐き出す事が出来る様になったが、それでも漠然とした不安が常に心の奥にある。
守り切れるだろうか?
生き残る事が出来るだろうか?
前回のラストミッションで多くのプレイヤーが簡単に死んだ。まるで人が蟻を踏みつぶすかのように容易く彼等は死んでいく。
寧ろ誰も死なないミッションなど彼は見た事がない。誰かしら常に死に、その死を乗り越えて自分達は生き残ってきた。
彼は思うのだ。もし次死ぬのが自分だったら・・・と。
死んだら自分はどうなるのか。家族は死んだ自分をどう思うだろうか。
悲しんでくれるのか、それとも疎ましかったと喜んでしまうのか。考えても仕方のない仮定の話だが、どうしても考えてしまう。
一生懸命、命を懸けて助けてきた家族にそんな風に思われてしまうのはとても怖かった。自分が助けてきたのだから、自分の事を想え等とは流石に思わないが、それでももし自分が死んだ時には、少しでもいいから悲しいでもらえないかな、と淡い期待を抱く。
「・・・・だめだなぁ。考えすぎだよね」
枕に顔を埋め、何も考えずにただただ時間を無為に過ごす事にした。下手に考えて嫌な気分になるよりは、そちらの方がずっと楽だからと。
戦闘では誰よりも勇敢に戦う彼だが、それ以外ではやはりどこにでも居る多感な時期の少年であることに変わりはなかった。
―115話了
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バンカー君登場。
この子割と使いやすいのです、何せいろいろ設定後付けでいいのが特に・・・!!
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