第46話 終わりが見えない終わりが来ない

今日も閲覧ありがとうございます。

そろそろミッションも中盤から後半でしょうか、

これからどうなるかのんびりお楽しみください。

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 第3ウェーブが開始される。


 周辺のコアから続々とモンスターが出現し防衛対象ではなく、全てのプレイヤーに向かって襲い掛かり始めた。


「ちょっとっ!? 急に数が多いんだけどっ!?」


 ガーディアンが熊型のモンスター達を薙ぎ払いながら絶叫気味に叫ぶ。


 新しく出現したモンスターコアは第1ウェーブの数倍以上も出現し、そこからレベル2のモンスターが絶えず産み出され続けている。その速度は1分間に2~3体というハイスピードで生産されていた。


 そして生まれてきたモンスターはよく見れば最初に出てきたモンスターとこのウェーブで出てきた巨大熊の様な姿のレベル2モンスターの2種類が存在している。


 大熊の戦闘力はレベル2と言う事もあり、先ほどのレベル1のモンスターよりも攻撃力とタフネスが高い。一応プレイヤーのレベルが2あれば1対1で戦うのならば支援系でもない限りは簡単に倒せる程度だが、あまりにも産まれる数が多い。


 それでもサイレーンが直ぐに動き【死へ誘う歌声】を発動させたが、即死させる事が出来たのは先ほどのレベル1モンスターだけで、新しく出てきた大熊にはある程度動きを鈍らせる程度の効果しかない。


 同時にテルクシノエーも動き【発狂の唄】を発動させていた。此方はかなり有効の様で大熊達の動きがかなり無効化されている。


 しかしそれでもその数は驚異的だ、下手な討伐ミッションの比ではない。まるでモンスターの津波の様にわらわらと産まれ襲い掛かってくる。現状二人のスキルが発動して漸く有利と言った状況だ、ガーディアンが叫ぶのも無理らしからぬ事だろう。


「ずぅえりゃあああああっ!」


 雪崩る様に突き進んでくる大熊達に向かって力任せに大戦斧を振るい、周りのモンスター達を蹴散らしていく。奴等は状態異常によって防御や回避がまともに出来る状態では無くなっている為、吹き飛ばすこと自体は容易だった。


 蹴散らした傍からそれ以上の数で襲いかかって来なければだが。


 コアから指令が来ているのかは不明だが、生き残っている大熊達で血走った目でよだれを流しながら、ただプレイヤー目掛けて走ってくる。理性も失い狂った状態で本能のままただ突撃してくるだけだ。


「あぁもう邪魔ぁっ!!」


【ごおおおおおおおお!】


「―っ!? まずっ!?」


 健闘している彼女だが、敵の数が多く複数体のモンスターの接近を許してしまった。

 

 全力を斧を振りおえたこのタイミングでは咄嗟の回避も防御もできない。巨大な質量の突撃が小柄な彼女に襲い掛かる。


 だがそれは、目の前に突如現れた巨大な土の壁によって阻まれた。


―土属性中級魔法【土硬壁どこうへき


 彼女に突撃が命中する直前に羅漢が防御魔法を展開したのだ。


 銃弾だろうがミサイルの直撃であろうが防ぐ事が出来る強力な防御効果を持つが、発動時間は僅か一瞬しか効果がない。攻撃を受けきった後直ぐに土硬壁は解除されたが、逆にそのおかげで大熊達がよろめいた事で大きな隙をさらけ出す。


「どっせぇえええええいっ!」


 轟音一閃。


 見目麗しい彼女の口から発せられる色気も無い咆哮と共に周辺の大熊達は胴体を寸断され消滅した。


 バックステップし羅漢の近くに戻るガーディアン。羅漢はそれを確認しながらもいつでも防御魔法を使えるように準備をし続けている。


「助かったわっ!」


「長くは持たない、連絡通りに集まるぞ!」


「OK!」


 この間も絶えず湧いてくるモンスター達を蹴散らしながら二人はジェミニ達の場所に急ぐ。狙ったかのように大熊達が次々に襲いかかるが、それよりも彼女達の方が速い。


 敵を蹴散らしながら走ること数分。二人は御堂達の居る場所までなんとか到達した。そちらでも既に激戦が始まっていたが、プレイヤー達が協力して撃退を続けている姿が見えた。


 見れば回りからモンスターに紛れて此方に集まって来ているプレイヤー達の姿もある。


「到着! まさか全員狙いとか予想してなかったわ!?」


「全くだっ!」


 ガーディアンの誰に告げるともない声に御堂が答える。


 御堂自身も襲撃している周囲のモンスター達にショートソードを用いて対抗していた。流石にこの数を素手で対応するには無理があると感じ、あらかじめ用意していたのだ。


 ロングソードではないのは大きな剣は逆に扱い辛かったからである。槍やガーディアンの使っている大戦斧は持つ事は出来ても扱える程の技量が無い。


「くたばれこらぁ!!」


 ショートソードを片手に持ち大熊に向かって切り落とす。


 技も何もない単純なステータスごり押しの一撃。


 しかし御堂が振り下ろした斬撃は簡単に大熊を肩からまるでバターを斬るような勢いで切り裂き絶命させた。その振り下ろした勢いのまま一回転し回転斬りに入る。


 丁度姿勢を下げて突撃してきた大熊の頭部を綺麗に切り裂き絶命させた。華麗とは言い難い喧嘩殺法みたいな戦い方だが、それでも問題なく倒し切る事が出来ている。


 その隣ではクレアが暗殺者の様な動きで大熊の後ろに駆け寄り首を大型のダガーで斬り落としている姿があった。


「どうしたぁ! 手ごたえねぇぞコラぁ!」


 そう叫ぶ御堂自身、相手を斬った時の感触を感じていなかった。


 まるで空気を斬っている様な感覚でモンスターを斬った時の腕にかかる衝撃すら感じない程だ。実際にはちゃんと衝撃も斬撃時の負荷もあるのだが、バフ効果がそれらを一切感じさせない。


 アクセル程の速さはないがこの程度のモンスターならば適当に暴れているだけでも十分以上に活躍できている。


「ほんと、頼もしいけどおっかないわねぇ」 


「見た目だけだとチンピラにしか見えんな」


 御堂の戦い方を見てそうこぼすガーディアンと羅漢。そんな事を呟きながら戦っていると、奥の方から他のプレイヤー達が見えてきた。


 勿論同時に夥しい数のモンスターを引き連れてではあるが。


「遅れました! ここからは僕たちも手伝います!」


「戦死者2! 指揮を無視した奴が死んだ! 槍使いと魔法使いだ!」


「っ・・・! 戦力消費が痛いですね。皆さん支援を掛けます! 突出しない様に! 奴らは行動が制限されてますが、質量と攻撃力は何も変わっていません!!」


 バンカー達を初め、徐々に集まってくるプレイヤー達も討伐に参加し、少しずつではあるが余裕を取り戻しつつあった。


 







「食らえっ!!」


 大熊の首に引っ掛けるように【ソウルギア:ハルペー】を掛け断ち切る。同時に発動させた魔力の斬撃が周辺の大熊に命中し、ある程度ではあるが動きを鈍らせた。


 倒すまでには至らないが、命中した一撃は浅くないダメージを与え、元々鈍くなっている動きを更に鈍らせる。


 その隙を狙ってハルペーが大熊を1体、また1体と着実に倒していく。


「よ、よし、なんとか行ける・・! それに―」


 彼自身戦っていて今さら気づいたが何時もよりも身体の動きがスムーズになっている。攻撃力も普段以上に上がっていた。一瞬の隙を使ってアプリを起動しステータスを見ればかなりの数値が指揮スキルによって上がっているのが見えた。


 それは周り全てのプレイヤーに対して付与されている流川のSレアスキル

【タクティカルコマンド】の付与効果だ。彼の行う指示に従う事で指示下にある全ての対象に強固なステータス上昇効果を与える事が出来る。


 流川の指令効果のお陰でレベル2のプレイヤー達でもこのレベルのモンスター相手なら安定して倒せる程の支援効果を受けているのだ。


 そして【念話】を通してプレイヤー達に逐次スキルを伴わない指示が飛ぶ。


 各自その指揮に従い戦い続けているお陰である程度のダメージ等は受けるものの致命傷などを受けているプレイヤーは誰一人として居ない。 


 ハルペー自身も、指示された通りに動く事で驚くほど安全に且つ簡単にモンスターを倒すことができている。


 四方八方から襲ってくるモンスター達の行動や距離、味方の動きを把握して寸分違わぬ指示を出し続けている流川。更に彼のソウルギアは、此方を援護しつつ、遠距離攻撃が出来るプレイヤーと協力して増え続けているコアを破壊し続けている。


 先ほど欲に目が眩んだ二人以外は誰一人として戦闘不能にはなっていなかった。


「ごしゅ、大丈夫?」


 近くにいた大熊を刈り取ったクレアが御堂の傍に戻ってくる。体力もまだまだ問題ないようで、汗一つ流していない。


 逆に御堂は先ほどから全力で動いているのと緊張と恐怖と同時に戦っている為か、全身が汗だくになっていた。


「あぁ、なんとかな! それに前よりはずっと戦えてる!」


【おおおおおおおおおおおおおお!】


「叫びがワンパターンなんだよっ! はぁ、はぁ・・・!」


 ショートソードを振るいまた一体の大熊を撃破する。大きく肩で息をしているが戦う事に問題はまだない様だ。

 

「あー、うざっ! まーちゃんの邪魔になる奴は死ねっ! 死に晒せっ!」


 両手を頭上でクロスしたショコラがスキル【ジャッジメント】を発動させ周囲の大熊達を雷撃で薙ぎ払った。電撃の鞭の様な姿になったそれは周りにいる全てのモンスターを薙ぎ払い、更に距離を伸ばして辺りのコアも破壊していく。


 だが破壊した先から新しいコアが出現する為、敵の総数はまったく変わらない。


「ショコラ、余り魔力を消耗し過ぎないで! これで終わりじゃないのよ!」


「わかってる! でもこのままじゃまーちゃんが!」


「疲労は余裕が出来次第サイレーンが回復できる! 落ち着きなさい!」


 テルクシノエーの指摘に発動していたジャッジメントを消滅させるショコラ。


 直ぐに魔力を消耗しない銃器を用いての攻撃支援に切り替える。


 勿論支援するのはマスターである御堂だけだ。その表情は真剣そのもの、普段のギャルの様な態度からは一変し、真剣な表情で御堂を護るために攻撃をし続けている。


 そんなショコラの姿を見た御堂は彼女を心配させまいと大きく息を吸い、体調を整え強く剣を握る。凄まじい数のモンスターを相手にしつつ、素手とは違う戦い方で普段よりも体力を消費しているが、この程度でへたっている訳にはいかないと気合を入れなおした。


「ったく、ほぼ唯一の前衛なのに心配させるなんざ情けねぇよな」


「半身だからわかるけど、ショコラって結構心配性だからねぇ」


「てことは、クレアもか」


「何言ってんのさ、あーしだけじゃあないよ。ショコラもサイレーンもテルクシノエーの姐さんも全員、ごしゅが心配だっての」


 そう言いながらナイフを数本投擲する。寸分違わずナイフは大熊の頭部に次々と命中し絶命させていた。


 再びナイフを両手に構えながら彼女は更に続ける。


「多分さ、どれだけごしゅが強くなっても。あの流川のおっさんよりずっと強くなっても、これは変わらないよ」


「クレア・・・」


「好きな男が傷ついて、死にそうになって何も思わない女はいないって事」


「ぐっ・・・」


 困った様な笑みを浮かべるクレアの表情に一瞬見惚れる御堂。


 直ぐに気を取り直し頭を振った後、両の手のひらで自分の頬を叩いた。突然の謎行動に呆気にとられるクレアに、御堂が振り向く。


「なら、これ以上情けない所は見せられねぇな」


 すぅ、と大きく息を吸い―


「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


 大音量で咆哮する。


 これ以上情けない所は見せまいと、彼女達をこれ以上心配させまいと、御堂はもう一つの切り札を切る―!!


「行くぞ! SSレアスキル【トランスブースト】おおおおおおおおお!」


 御堂の全身が、金色の光に包まれた―――




―46話了



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今日は短いです、皆さんどうかご容赦を。

そろそろ漸く御堂君、主人公を頑張る様です。

どうなるでしょうか。

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