第45話 運営は悪意の塊ではありません善意ですよ?

今日も閲覧ありがとうございます。

日々寒くなってきていて大変ですね、皆さんも身体には気を付けて下さいね。

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 ドラゴンを痛め続け、気が付けばそろそろ30分が過ぎようとしていた。


 既にドラゴンはギリギリ生きているという状態でまともに動くことも出来ず、ほとんど虫の息状態で無理やり生かされている状態だった。


 あまりの仕打ちに引いているプレイヤーもいるが、残りのプレイヤー達は次のウェーブに備え準備や相談をしている姿が見える。


 その中には御堂と佐伯たちの姿もあった。


 とりあえず防衛対象のリバティの護衛は佐伯がこの後も続けることになった。流川からの指示だったので文句も言わず佐伯は彼女を護衛し続けている。


 スピネルも万が一を考え、と言うか流川の役に立ちたいのと一応スレ住民の縁もあると言う事でともに護衛している。佐伯には難しい遠距離攻撃や魔法攻撃を得意とする彼女が居れば、安全性は更に確保されるだろう。


 御堂の方は次のウェーブが複数体のドラゴンだった場合に対する主力として待機している状況だ。まだどうなるかは分からないが、可能性は0ではない以上万全を期さなくてはならない。

 

 SSスキルの【トランスブースト】はドラゴンが現れた瞬間使う事にしたようだ。一応は切り札の為、開幕使うのは後先を考えれば早々切ってよいものではない。


 雑魚のラッシュが再び来るかもしれない以上、様子見する事にしている。


 この状態の中、流川は現状をおかしいと考えていた。


『敵が温い。普段のプレイヤー防衛ミッションにしては簡単すぎる』 


 最初の雑魚ラッシュもレベル2以上あれば余裕で捌ける数だった。次のウェーブのドラゴンは確かに驚異的だが、たった一体だけと言うのも珍しい。倒せば再復活するタイプなのは分かっているが、今の様に生かさず殺さずで置いておけば後は時間まで待機するだけでいい。


 自分が居るから楽に行けているという事もあるが、その程度でどうにかなるミッションをディザスターが用意するとは思えない。


 彼、彼等?は非参加のプレイヤーを目ざとく見つけ名指しでミッションに巻き込む等と言う事も簡単にやってのける存在だ。


 今現在、このミッションについても【観測】し楽しんでいる可能性がある。


 楽しむことを目的としているディザスターが簡単に終わるようなミッションで満足するだろうか。


『ミッションの内容も少しおかしかった。今回ディザスターは、【クリア】させる事を考えている??』 


 最初のミッション内容、報酬の1つ―


【防衛対象が生き残った場合、1段階のみ緩和】


 と言う流川も初めて見るものが掲載されていた。6000ポイントの報酬を含め防衛対象のプレイヤーは基本的にこのミッションではポイントを獲得することが出来ない。


 生き残ったとしても次のミッションで再び狙われたり、突然死することがあったりプレイヤーキラーに情報が漏れたりして確実に殺されている。


 その理由はクリアしたからと言って、非参加の罪が帳消しになった訳ではないのだ。あくまでも「そのミッション」では生き残っただけに過ぎない。


 だが、今回の報酬は【1段階のみ緩和】これは恐らく、非参加などを続けていたプレイヤーに対する救済処置なのだろう。この報酬を獲得していけば防衛対象のミッション等から免除される可能性がある、と言う事なのかもしれない。


 勿論、それにかまけて次も参加しなかった場合はその次辺りにまた対象になったりするのだろう。流石に同じ事を連続で行う愚かなプレイヤーは居ないとは流川も思っているが。


『毎回殺すだけではプレイヤーを恐怖で縛り付ける事になる。そうすればディザスターが望む楽しいゲームは出来ない。だからこういう救済措置を出す事で参加率を上げる事が目的? いや、穿った考えかもしれない』 


 まったく関係なく、簡単なミッションなだけの可能性もある。


 ディザスターからの発表がない以上、想像の域を出ない。


『次のウェーブによっては、防衛対象を護れる可能性はあるか』


 油断は出来ない。油断できるほど流川は自分を過信していない。だからこそ全霊を持ってミッションにあたるのだ、生き延びるためにも。


「あ、パパ。見て? あっちのコアそろそろ壊れるんじゃない?」


 ポルクスの言葉に視線だけをドラゴンを生み出したコアに向ける。ほぼ忘れ去られていたコアがゆっくりと地面に落ちていくのが見えた。


 ぐちゃりと生理的嫌悪を感じるような音を立てたコアはそのままドロドロと溶けていく。


【おぼぼぼぼぼぼぼ――――】


 それと同時に死にかけていたドラゴンも漸くと言った感じに死亡しゆっくりと溶けて行った。


 銃弾の雨も止み、辺りがシンと静まり返る。新たなコア現れる様子も無い様子に流川はこのウェーブが終了した事を確信した。


 直ぐに全員に【念話】を用いて次の指示を出していく。


「ポルクス、カストロと二人で周囲の警戒を続けてください。今回のミッション、いつもの防衛ミッションとは少し違う気がします」 


「了解パパ♪」


「任せてよ。あ、御堂のお兄さんはどうするの?」


 カストロの問いに流川は簡潔に答える。


「次のウェーブによっては主力を頼む事も考えてますね」


「大丈夫かなぁ・・・」


 カストロの御堂に対する評価はそこまで高くない。


 経験もないし技術も拙い、流川に守られつつ安全に戦っている御堂では肝心な時に役に立たないのではないか、そう考えている。口に出しはしないがポルクスもそれは考えているようだ。ただどちらかと言うと彼女は御堂の心配をしているのだが。


「緊急ミッションをほぼ無傷で生き延びた、これだけで信頼に値します。それに――」


 万が一を想定する流川。もし御堂の命が危険に晒される事になったなら――



「最悪は御堂君を保護して撤退します。このミッションを捨てる事になりますが致し方ない」


 彼は優先順位を間違える事は無い。


 流川にとって大切なのは自分とソウルギアの命、そしてその次に御堂の命だ。それ以外は佐伯を助けられるなら助け、それ以外は見捨てる。


 どれだけ恨まれようと憎まれようと、流川にとって大切な物を護る為ならば何でもする、そう初めから決めていた。


 余裕があれば、出来るのであれば、護れる者達を護りたいとは考えてはいたとしても。


「マスターは本当にあの人が好きなんだね」


「彼が居なければ今の僕はきっといない。それほどの人なんですよ」


「パパにそこまで想ってもらえるなんて、羨ましいなぁおにーさん」 


「二人ともそろそろ準備を、次のウェーブが始まりますよ」


 その声を皮切りに、再び周りに赤黒いコアが複数浮かび上がる姿が見えた―







「始まったぞ!! 次のウェーブだ! あちこちからコアが見える!」


 ハルペーが武器を構えながら大声で叫ぶ。


 次のウェーブはドラゴンではなく、大量のモンスター達だ。だが最初に現れたモンスターではなく、見た目は巨大な熊の様に見える。


「今度はまた数で攻めて来てるぞ! ジェミニに言われた通り決してバラバラになるなよ!!」 


「ぐおおおおおおおおおおお!? こいつらレベル2クラスのモンスターだ! 油断するな!?」


 突撃してきた熊型のモンスターを盾を展開したプレイヤーが必死に受け止めた。ギリギリ受け止める事が出来たが、モンスターはそれだけではない、何十体ものモンスターが此方に向かって襲い掛かってくる。


【ギョオオオオオオオオオオオ―――】


 突撃を防がれたモンスターの首が吹き飛んだ。


 ハルペーが見事な一撃で首を刈り取ったのだ。周囲から襲い掛かってくるモンスターに対しては無数の斬撃を飛ばして牽制する。


 そして動きが鈍った所をアクセルが猛スピードで切り刻んでいく。全身切り刻まれたモンスター達はそのまま消滅していくが、コアからはどんどん同じモンスターが産まれ、此方に向かっている姿が見えた。


「無事か!?」


 敵を一掃し一旦戻ってきたアクセルがプレイヤーの一人に問う。


「な、なんとか! ま、また即死でどうにかできないのか!?」


「わからん!!」


 初回の様にサイレーンの即死スキルを期待していたのだが、今だ目の前のモンスター達は死ぬ様子はない。


 そう考えた時、再びあの美少女の声、サイレーンの歌が響いてきた。


 しかし――


「倒れない奴もいるみたいです!」


 周囲のモンスターを薙ぎ払ったバンカーが武器を再びチャージしながら叫ぶ。


 サイレーンの歌が響いてきた瞬間、すぐに何体かのモンスターは苦しみだして倒れたが、最初こそぐら付いたものの再び襲い掛かってくるモンスターも居た。


 どうやらレベルが高くなったようでサイレーンのスキルが完全には効いていないらしい。それでも半数近くは効果の対象になっているようで、数は大きく減っているが、それ以上にモンスターが産まれる数の方が多かった。


「ぎゃああああああああああああああああ!!」


「!?」


 絶叫が響く。


 槍を振るっていたプレイヤーが何体ものモンスターに押しつぶされ食い千切られていた。耳を塞ぎたくなるような叫び声が響いたがすぐにそれも止まる。


 隣にいた女性のプレイヤーも既に倒れ動かず、そこにもモンスター達が群がっている。


「や、やめろおおおお!!」 


「まてバンカー!!」


 アクセルが止めに入るが、激高したバンカーは止まらずプレイヤーに群がっているモンスターに向かって突撃する。


 此方に向かってくる気配に気づいたモンスターがぐるりと振り向いた。食い千切られたプレイヤーの頭部を咥えてかみ砕いている悍ましい姿がそこにはあった。


「お前等あああああああああああああ!! スキル! 【ストラグルアタック】!!」


 チャージを終えたマキシマムバンカーに攻撃力上昇のスキルを込め怒りのままに叩きつける。ガチャンと凄まじい音を立ててマキシマムバンカーの杭がモンスターの胴部を貫き衝撃波が周りのモンスター全てを吹き飛ばす。


 衝撃に指向性を持たせる事が出来るようになったため、プレイヤー達には衝撃を与えず周りのモンスターだけを吹き飛ばすことに成功したが、既に遅く男は完全に死亡していた。女性も顔が潰れ首が千切れかけている、ギリギリ生きてはいるが手遅れだった。

 

 彼等二人のプレイヤーは流川の話を聞いてはいたが、1ウェーブ目の様に全てのポイントをサイレーンに全て奪われる事に不満を持っており。ある程度稼いで下がるつもりでいたのだった。


 だがレベル2のモンスターを大量に相手出来るほどの実力は持っていなかった。判断を見誤り死んだ以上、それはただの自己責任でしかない。


「畜生・・・! 畜生!」


 目の前でまた護る事が出来なかったバンカーが地面に拳を何度も打ち付ける。


「何やってんだ! 戻れバンカー! あいつらは話聞かずにまとまってなかったのが悪い!」


「は、ハルペーさん・・・」


「急げ! モンスターはまだまだ湧いてきてるぞ!」


 駆け寄ってきたハルペーが放心していたバンカーを掴み走り出す。気が付けば先ほど以上のモンスター達が襲い掛かってきている。


「っ! わ、わかりました!」


「あっちの盾持ちと合流して戦うぞ! こいつら防衛対象じゃなくて、俺達を狙って来てやがる!!」


 そう言われてみればとバンカーは此方に向かって襲ってくるモンスターを見る。


 防衛対象のリバティと自分達の場所はほぼ真逆だ。モンスター達の狙いがリバティならそちらに向かっていくモンスターを倒せばいいのだが、このウェーブのモンスターはどうやら【全てのプレイヤー】を対象にしているようで、誰かを護ればいいという戦法を取るのは難しい。


「戻ってきたか! 馬鹿野郎! お前も死ぬぞ!!」


「す、すみません」


 アクセルに怒鳴られたバンカーだが、落ち込んでいる時間などない。この間にもモンスターは夥しい数で襲い掛かってきているのだ。


「お前等! 集まってくれ! ジェミニからの通達だ」


 盾を持っているプレイヤーが大声を上げる。


「このウェーブは全員ひとまとめになって対応する! あっちに居るジェミニ達に合流するから俺に付いてきてくれ!!」


「で、ですが間に合いませんよ!? この数じゃ!?」


 周りのモンスターを倒しながら言うバンカー。1体1体は今の彼なら問題なく倒せるが、レベル2のハルペーには荷が重いだろう。代わりにアクセルが凄まじいスピードで駆逐しているが、それでも制圧力が足りていない。


「大丈夫だ! あっちもこっちに合流するために近づいてきてるし、その間なら俺が――」


 盾を持っていたプレイヤーがスキルを発動させる。


「盾衛術!!【城塞防御】!!」 


 プレイヤーの背に巨大な城塞のシルエットが浮かび上がると同時に彼を中心に白色の防御結界が形成される。それは攻撃していたバンカーやアクセル達を囲み、結界内に入っていたモンスターを弾き飛ばす。


 モンスター達がそれぞれ力任せに発生した結界を殴りつけていくが、スキル【城塞防御】で形成された防御結界は生半可な攻撃では破られることは無い。


 弱点としてスキルを発動させると【攻撃】に属する行動が一切取れないというデメリットが発生するが、移動は出来るし一定時間は強固な防御壁を張る事が出来る。


 無敵という訳ではないので、これだけの数のモンスターに攻撃され続けていれば10分も持たずに破壊されてしまうが、数分あれば流川達と合流は容易い。


「づっ・・! 俺に付いてきてくれ! 結界の外に出るなよ!!」


「こ、こんなのあるなら早くやってくれよ!?」


「消費が激しいんだ! 何度も使えるもんじゃあない! 死にたくなければ急ぐぞ!」


 モンスターに囲まれながらも動き続ける結界は徐々に流川達に近づいていた。



―45話了



──────────────────────────────────────プレイヤー二人死亡

死亡理由:欲張りすぎ

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