第235話 1回200ぽいんと=現金200まんえん



 御堂達の番が終わり続いてはディーヴァが500ポイントを入れてクレーンを開始する。


「ふむむー、ふむー」


 1回目は何も掴めずに失敗し


 2回目は少し掴んだがやはり直ぐに落ちた。


「なぁ、ケーキ屋ぁ?」


「どうした??」


「これってさ、今気づいたんだけど200ポイントって現金200万円って事だよな」


「そういやそうだ・・・最近200ポイント位なら1日で稼げてるから忘れてたけど、現金で考えればサラリーマンの数か月の月収がこれ1回で飛んでるんだな」


 1プレイ200ポイントで、5回連続プレイでおまけで500ポイントでクレーンゲームが行える。そこだけ聞いていれば普通のクレーンゲームだと思えるが、普段御堂達がスキルやレベル上げ、様々な物を購入するのに使っているポイントは1ポイントが1万円に相当するレートである。


 このレートは時々変動し、少し前までは1ポイントで10万円相当の価値になっていた事もあるらしい。今はプレイヤーが多くなりポイントも配布が多くなった事で、交換レートは下がっているが、プレイヤーが減っていけば再び価値が上がる可能性ががある。


 500ポイントは500万円、平均的な社会人の年収に近いお金がゴミしかなさそうなクレーンゲームで溶けていくのを改めてみると、胃が痛くなりそうだった。


 続いて3回目も失敗するディーヴァだが、どうやらアームの調子などを色々調べているらしく、1回1回動かす度に、アームを注視している。


 そして続いての4回目・・・


「よっし!」


 運よくアームが強くなる確率を引いたのか、それとも技術によるごり押しか。アームはカプセルボールを美味く捕らえ取り出し口に運んでいく。途中で落ちる可能性も考えたが、カプセルは見事確保に成功した。


「やりましたよー♪」


「あ、あのアームの弱さをものとものせず・・・ディーヴァは恐ろしいよ・・・!」


 何故か妙に劇画チックな表情でディーヴァを見るサイレーンが居たが、もれなく全員スルーした。


 取り出し口から出てきたのはてのひらに収まる程度のカプセルボール。数百円で置いてる少し大きめのガチャポンのボールの様だ。


 簡素な作りでどう見ても安物のそれを開けると中には虹色に輝くコインが1枚入っている。直ぐに鑑定を用いて調べると予想通りのアイテムだった。


──────────────────────────────────────

【運命のコイン】 値段:非売品 

七色に輝く力を持ったコイン。

所持しているだけで【自身の一番高いステータス】を永続的に+1する。

複数所持しても効果がない。

食用する事が可能で、飲み込んだ場合生命力と精神力が全回復する。

四肢切断も軽度の物なら回復可能。 食べた時の味は【自分の一番の好物】と同等。

────────────────────────────────────── 


「かなり便利なアイテムだね。まーちゃんの為に数枚欲しいかも」


「確かにレアだが、これが運命云々なのか?」


「大丈夫みたいだよまーちゃん。ほら、クレーンの上部の文字書いてたけど10から9になってるし」


「あぁ、あの電光板の文字ってそういう意味だったのか」


 ディーヴァが運命のコインを1枚獲得した事で、クリアの為のフラグを一つ確保出来ていた。後はこれと同様のアイテムを9個手に入れる事で、次への階層が開かれる。


 勢い着いたディーヴァだったが、5回目は普通に失敗し次は片桐の出番になった。


「クレーンはあんまり好きじゃないんだよなぁ・・・」


「ゲームなら全部好きそうだと思ったんだが・・・」


「だって当たらないのが基本だし、欲しい物は大体取れないし、そもそもゲームセンターなんて怖くて行けないし」


「お、おぅ」


 筋金入りの出不精、ヒキオタニート力に流石に御堂もたじろぐ。


 とはいえ、後9枚の運命のコインを集めなくてはならない以上、否応でもクレーンをやらなくてはならない。


 500ポイントを断腸の思いで投下する。500ポイントもあれば欲しいゲームや最新型のパソコンやゲームツール。気楽にゲームをするための必要な物、食料やらなにやら余裕で買い込めるのだから、そうなるのは仕方ないだろう。


 御堂自身、200ポイント~500ポイントという言葉のマジックで気にしてなかったが、いざ現金数百万と思い出すと何無駄な事に散在してるのだろうと思わないのでもないのだから。


「それにしても制限時間が面倒ですよねぇ」


「1日あれば何とかなるんじゃないか??」


「そこまでにポイントをどれだけつぎ込む事になるかもありますし、ポイントが足りなかったら詰みますよー?」


 脱出も進む事も出来ない上に、24時間以内に目標のアイテムを集めきらなければ死神と呼ばれるレベル9~10相当のモンスターがこの狭い空間から現れてプレイヤー達を確殺していく。


 それに対抗できる存在はこのランク帯には一人もいないだろう。ディーヴァも流石に自分の師匠よりレベル的に上位で、恐らく最難関クラスのモンスターと戦って勝てるとは思っていない。更にはこの空間はとても狭いため、まともに戦う事すら難しいだろう。


 ゲームをするのに自身のポイントを消費すると言うのもプレイヤーにとっては痛手になる。御堂達や将来を見据えているプレイヤーならばそれなりに貯金しているだろうが、昔のハルペー・・・山田の様に刹那的にポイントを消費した生活をしていれば、そもそもプレイするためのポイントがない。


 6人パーティで参加する以上、死者がいなければ他のプレイヤーが代わりにやってくれるだろうが、全員が他人等のパーティの場合、その後のやり取りも難しくなるだろう。 


 一応救済処置としてガチャや購入などで手に入る所持スキルを担保にポイントを借りれるとはいえ、それ以外にポイントを増やす方法はほとんどない。そして誰もポイントがなくなってしまえば、待っているのは確実な死だ。


 たかがクレーンゲームと感じるかもしれないが、ここはやはりディザスターの開催したデスゲーム。対処出来なければ容赦なく死ぬ。


「んー・・・よし、やるかぁ」


 言うや否やクレーンゲームを開始する片桐。


 1回目はディーヴァと同じように動かすボタンをどこまで動かせるのか、感度はどうなのかと調べるために最大限まで動かしていく。


「・・・・」


 この1回で200万円が消えた事実に背筋が寒くなる片桐だが、その直後・・・


「よし」


「いや、何取ってるんだよ・・・」


 流石のゲーマーとでも言おうか、たった2回目で確率機がどうだのという事すら無視してアイテムの獲得に成功した。それはサイレーンが先ほど取ろうとしていた人形ではあったが。


「ちゃんと意味があるんだよぉ。ほら、サイレーンこれあげる。私要らないから」


「やった♪」


 片桐から小さな人形を貰って嬉しそうにするサイレーン。序にディーヴァが調べたが、普通に数百円程度の価値しかない安物の人形だった。


 だが、それを取ったおかげで次にとれるアイテムが見えてくる。


「なぁ、ケーキ屋にディーヴァ」


「どうした?」


「はいはいー?」


「これ、私で全部終わらせてもいいよな?」


 マシン・ザ・リバティのバイザーの奥できらりと片桐の目が輝いていた。



―235話了



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200まんえんあったら、あさねこはお引越ししたり、ほしいものかったり

けーきかったりします・・・!!! 

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