第58話 歯がゆく、強くなりたいが、アテはない。
今日も閲覧有難う御座います。
体調があまり良くない今日この頃、出来る限りを頑張って
少しでも楽しんでもらえますように。
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翌日、スキルが回復したサイレーンに頼んでアクセルを回復してもらった。今はまだ意識を失って目覚めてないが、そのうち起きるだろうな。
朝食はテルクシノエーが疲れてるだろうに全員分作っておいてくれた。俺もさっき起きたばかりで肉体的にも疲労が残ってる。サイレーンに回復してもらうのも考えたが、今回はあえてこのままにしておいた。
今回の防衛ミッション。俺はそこまで役に立てなかったな。まだまだ初心者ってのもあるが、相手が悪すぎた。レベル6ってなんだよレベル6って。
漫画とかじゃ後半とかに出てくるもんだろ? こんな序盤に味方としてなら兎も角敵として出てくるってどうなのよ。リアルじゃこれが普通って感じなのかね。
結局フル状態で挑んでも足止めすらほとんど出来なかった。ミューズ達二人は途中で戦闘不能になっちまったし、まだまだ俺達には色々足りてねぇ。スキルもそうだが、単純にレベル4目指していかないとだな。
昨日も何人か死んだ。ほんとこのゲームは簡単に人が死ぬ。次は俺の番か、それとも・・・ベッドに寝かされてるアクセルも、そういう目にあってこんな風になっちまったのかね。
ソウルギアアプリのアイテム欄にある【蘇生薬】の文字。
昨日はそこまで騒がれてなかったが、こいつは結構やばいシロモノだよな。プレイヤーなら蘇生出来るって言うんだから破格の効果だろ。ただ、その後使用者のソウルギアになるってのが今一よくわからないんだよな。
俺の場合ならミューズの次にその蘇生した奴がソウルギアになるって事なのか? 武器とか変身型の奴はそれに追加して人型のソウルギアも獲得するって事なんだろうか。何にせよ、その生き返った存在がソウルギアになる、それって本当に本人なのか難しい所だよな。
「あ、あの・・・えと」
「ん? あぁ、リバティさんか。どうした?」
「ひゃう!?」
俺に話しかけてきたリバティさんが俺を見て小さい悲鳴を上げて引っ込む。やめてくれ悲しくなるから。やはりスキンヘッドにしてるのがダメなのか? これは別にハゲてるんじゃなくて、剃ってるだけだから生やした方がいいのかもしれねぇな。
なんで剃ってたかといえば、髪切るのとか面倒臭かったんだよ。夏なんて蒸れて臭くなるし、自分の格好に愛着もなんにもなかったから面倒を省くために剃ってたんだ。
勿論それだけならバリカンとかで簡単に坊主頭にすればいいんだが、俺がこれを維持してる一番の理由はケーキ作りの時に髪の毛とかが入るのが嫌だったんだよ。
ちゃんと調理帽被ってても、髪の毛が入る時は入るし、そうなるとショックが激しくてな・・・これからは見た目も考慮した方がいいのかもしれんなぁ・・・もう土木作業員の仕事してる訳じゃあないしな。
「ご、ごめ。ごめん・・・すぅ・・・はぁ・・・」
「ゆっくりでいいぞ? ゆっくりで」
どうにも彼女、予想通りにコミュ障とかオタク系の陰キャみたいなんだよな。それもかなり重症なやつ。俺も対人が得意って訳じゃあないが、普通には話し掛けられるし、別に尻込みしたりはしないが、彼女は相手と対面するだけでかなりの勇気が必要なんだろう。
こればかりは慣れて行ってもらうしかないんだがな。特に俺は佐伯少年達曰く、チンピラとか悪党に見えるって事だし・・・泣いていいか? 俺はどこにでも居る普通のケーキ作りが大好きな優しいお兄さんのつもりなんだよ?
「すぅ・・・はぁ・・・ごほん!? げふげほ・・・」
「む、無理すんなよ?」
顔を真っ青にしてるリバティ。
寧ろこのレベルなのによくあの開催地点までこれたな。プレイヤー結構多かったしプレッシャーで喋れないだろ普通。流川もよくこの状態の彼女に武器強化してもらえたよ。
とりあえずゆっくりと落ち着かせる事にした。近くに流川が居ればいいんだが今は佐伯少年とスピネル少女と色々話をしているので援軍は期待できない。
サイレーンとテルクシノエーがこういう時にとても役に立てそうだが、二人はアクセルを看病して離れてるので、ここには俺と彼女しかいないのだ。
ミューズ? 呼ぼうと思えばすぐ呼べるけど、あんな陽キャの塊を彼女の隣に置くのは最早苛めだと思う。多分何もできずに泣いて逃げる気がするんだ。俺もあの陽キャパワーにはおされがちだからな。あとエロい。
「し、しらべ・・・た」
ゆっくりと一文字一文字をしっかり言う様な感じで彼女が俺に話しかけてくる。こういう時はあまり相手の邪魔をしちゃいけないんだ。折角考えている言葉が頭からすっぽ抜けるらしいからな。
かと言って無言過ぎるのもいけない。俺みたいな奴が無言で立ってるだけで陰キャとかコミュ障には重圧になるんだよ、そういう奴も現場に来てたからな、流石に覚えて来てる。こういう奴らには強い言葉とか態度を見せすぎちゃならん。それだけで折角振り絞った勇気が消えちまうらしいからなぁ。
「お? そうなのか?」
だから努めて明るく、人の良い感じで話すのが大事だ。あまりしゃべらずに相手の言葉を待つのがベスト。
「そ、そう・・・えと、あ、貴方とジェミニの事、う、噂にはなって、ない・・・ジェミニは・・その、えと・・・凄いって・・・書かれてる・・・けど」
ぽつりぽつりと話してくれるリバティ。
何でも昨日の車に乗ってた時点からデスゲーム関連の特殊スレみたいなのは既に存在してるらしい。あぁ、やっぱりそういうのあるんだな。世界規模でやってるんだし、無い方がおかしいと思ってたが。
どうやってみるのかは分からないから後で聞くとして、彼女の話を聞いて行くと内容はこうだ。
1 先日参加したプレイヤーが防衛ミッションクリアのスレ立てしてた
2 参加した中に流川が居て、流川の活躍でプレイヤー防衛ミッションがクリア出来たという報告
3 蘇生薬に関しては一切の情報は漏れていない
4 俺は【ケーキ屋さん】ではなく、【ハーレム男】として認知された模様。
5 他のスレにも蘇生薬云々の情報はなかった。
6 この後出てくる可能性もあるので、注視してくれる
え? 何、この人、優秀過ぎない?
俺はPCなんで動画とかゲームとかネット小説閲覧とかそんな簡単な事しか出来ないし、裏関連のスレとかなんて辿り着ける気がしないぞ? 流川もその辺実は結構苦手だし、PCなんて仕事に使う程度にしか使ってないって言ってたからな。
ていうかさ、流川ってそんなスレ世界で有名なの? 最強のレベル4とか有名人過ぎてこの地区じゃ知らない奴がほとんどいないとか何よ? どれだけやらかしてきたんだよ流川君? もしかしてレジェンド? レジェンドなの?
そして俺・・・・ハーレム野郎って・・・ハーレム野郎って・・・言い返せないのが辛い・・! 実際俺の状況ってハーレムだしなぁ、それも皆有難い事に俺を好いてくれてるし、わざとに近いエロハプニングとかしょっちゅうだし。その度にテルクシノエーに怒られてるけど、テルクシノエーさん? 正直貴方が一番エロいんですよ?
そ、それはともかくだ。
もしかしなくても彼女が居れば、裏の情報とかを収集したり、俺達の情報を確認するのにはうってつけの存在なのではなかろうか?
「色々調べてくれてたんだな。助かったよ。俺も流川もその辺はダメでなぁ」
「・・・ふ、ふへへ・・・よ、よかった」
両手の指をもじもじさせて俯きながら言うリバティに少し保護欲が湧く。流石に社会人っぽいが、まだ20代前半って所だろうか? 親と暮らしてるのか、それとも一人暮らしか分からんが・・・このまま放置してたら、次は今度こそ死にそうなんだよなぁ。
―ピコン
「ぅえ?」
「あ、あぁ、悪い。実は前から結構やってるゲームのアプリがあってよ、それのメールだな」
スマホ画面を彼女に見せてやる。
もうかれこれ、8年は遊んでる歴史のあるアプリゲームだ。
最近の派手なゲームとは違って、シンプルな所もあるが、ガチャだけじゃあ強くなれないゲーム性と相まって、いまだに結構な人気がある。最初は手慰みに適当に遊んでたんだが、少しずつやってると楽しくてな、気が付いたら廃人にはなってないが、それなりの上位層にはいたりする。
ミューズの二人にも布教して、今は3人で遊んでたりもしてるな。主に俺がボスとかを倒して素材とか集めてやってるレベリングがメインだが。
「・・・それ、私もやってる・・・」
「お? そうなのか? 周りに遊んでる奴はあんまりいなくてなぁ」
土木作業員の仕事は大体年齢層が30~60とかそれ以上ばかりだ。若い奴は入ってきても直ぐ抜けたり、違う場所に引き抜かれたりするからなぁ。後輩の奴今頃ちゃんと仕事してるかね? あいつはゲームに興味なくて布教できなかったんだよな。
「れ、レベルいくつ??」
「あー、今の所はカンストだな」
年に1~2回最大レベルが解放されるので、その度に必死にレベルあげたりしてるんだが、戦闘自体は慣れると作業なので、片手間に出来るのが良いんだよな。
「上位陣!? もしかしてレジェンド結構持ってる!?」
「お、おう。大体のイベントは参加してるからな、レジェンドはほぼコンプしてるぞ?」
「見せて!? あわよくばトレードして!? 私も被りのレジェンド結構もってるんだ! 欲しかったレジェンド、体調悪い時があって取れなかったんだよ!!」
「ど、どれだ? 一応大体2~3個は集めてるが」
「【乖離槍】ジェネシス!! ある!?」
「あ、それなら無駄に集まったからな7本あるわ」
「貴方が神だ!?」
先ほどまでとは一変、オタク特有な早口言葉で、問答無用とばかりにマシンガントークを掛けてくるリバティ。あー、そうか、ゲームとかやってたら気安くなれるタイプか。あるあるだよな。同じゲームやってるって知ってるとなんとなく嬉しいってのもわかる気がする。
楽しそうにうれしそうに俺のスマホを覗いてはしゃいでいるリバティ。
はっと、自分が何をしているのか気が付くと咄嗟に離れて自分のスマホで口元を隠している。なんだそのあざとい行動は。最初のスチームパンクな姿は解除されてるので、目の前に居る彼女はどこにでも居そうな服装の可愛い系美人さんなので、俺にダメージが来るんだが?
サイレーン達が美女なのは間違いないが、他の人に対する耐性が出来るなんて夢物語なんだよなぁ。つまり可愛い訳だ、なんだこの可愛い生き物。
「ご、ごめんっ!? つ、つい・・・」
「あー、うんまぁ、気にするなって。その槍なら余ってるし、適当なもんで交換してやるよ」
「いいのか!? 助かるんだけど!?」
「1本でいいのか? 4本あればいいし、最大3本までなら出してやるぞ?」
「じゃ、じゃあ2本! 私の前衛は2体だから2本あればいいんだ! あんた、良い奴だなぁ!」
砕けた口調のリバティ。どうやら素の彼女はこういう感じらしい。蓮っ葉って奴か? 意外と年齢も相まって、大人の女性って感じがするな。まぁ、普段は陰キャのコミュ障な気配に戻るんだが。
「よし、ID教えてくれ、トレードだすからさ」
「う、うんっ! 諦めてたからめっちゃ嬉しい!」
花が咲いたような笑顔のリバティを見てると、助かってよかったなぁと改めて思う。それだけで参加した意味が出来たってもんだよな。
「あ、キャラ名もケーキ屋なんだ・・・なんでケーキ??」
「あぁ、俺の得意なものがケーキ作りだからな」
「ケーキ作れるのか!? え? ほんとに!? その見た目で!?」
「やめろ、見た目で判断すのはやめるんだ!?」
「そっかー・・・ケーキ作れるのかぁ・・・モンブランとか作れる?」
「得意な方だな。寧ろ簡単だし、食いたいなら今日明日にでも作ってやるよ」
「ほ、本当か!? やった・・・!」
「あー!? マスターが他の女にとられそうになってる!?」
「ぴぃ!?」
アクセルの看病から戻ってきたサイレーンが此方を指差して叫んでいた。何事だと流川達もこちらに気付いてみている。
リバティに至っては俺の背中の後ろに隠れてしまっていた。
「ずるい!? マスターの背中は私のものだよ!?」
「違うけどな?」
「け、ケーキ屋ぁ!? た、たすけてぇ!?」
そこから始まる大騒ぎで、1時間位俺等は騒ぎ続けるのだった。
あぁ、アクセルはその1時間後に目覚めたのと、リバティが俺には普通に話し掛けられるようになったことを報告しておく。
―58話了
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リバティ、御堂君に懐くの巻でした。
これは仲間になりそうなフラグですね。
そしてアクセルさん回復の模様です、四肢欠損も回復しました。
超便利枠サイレーン。
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