第11話 来なくていいもの程必ず来るものだったりする。

最近だと外れてほしい天気予報は大体当たって、当たってほしくない天気予報は

毎回当たる、そんな感じに似てますね。

何時も皆さん閲覧ありがとうございます。

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「マスター大丈夫?」


「だ、だいじょばない・・・」


 鍛錬が終わって翌日、サイレーンの回復を貰っても全身の筋肉痛で死んでいた。


 しかし悲しいかな今日は平日、この状態でも仕事には行かなくてはならない。


 痛む身体を引きずって今日もいつも通りに仕事をしてきましたよ。


 社会人の鏡だろ? ほめてくれていいぞ。


 だがまぁ、帰ってきたら動けないほど精魂尽き果てて倒れ込んでいたりするが。今日は重機を動かす仕事も少ないので、手元仕事―スコップなどを使っての人力仕事が多かったのが更に体を痛めつけてくれた。


 もう少し若かったらなぁ、なんてまだ30にもなってないのに歳を感じる。中学や高校の頃ならまだもう少し元気があった筈だ。


 今はサイレーンが用意してくれたレトルトのカレーを食べてごろごろしていた。


 見た目も何もかも完璧なサイレーンだが、悲しい事に料理はまったくダメだった。流石にコメを洗剤で~とかはやらなかったが超絶的に不器用だった。


 目玉焼きを完熟で、と言いながらいつ完成するのかわからず奇麗に焦がしていたからな。


 この辺りは要練習なんだろう、いつか彼女の旨い料理を食いたいもんだ。それまでは元気なうちは俺が料理やケーキを作ってやることにしよう。


「昨日は張り切りすぎたなぁ、もう少し抑えておくべきだったか」


「それがベッドでのお話じゃないのが悲しいです」


「急に何を言い出すかな、この美少女は」


 俺の魂から生まれた事もあってか、その辺オープンなんだよな。寧ろ常にバッチこい的な感じのサイレーンだったりする。


 召喚時に身に着けているデフォルトの衣服も割と奇抜、悪い言い方すると目に悪いし本当にありがとうございます。


 見た目も俺はその辺のセンスやボキャブラリーが無いので、どうやってほめていいか分からないが、外国のモデルすら凌駕するレベルの美少女~美女って感じだ。


 年齢も見た目から言えば17~20歳って所だろうか。


 腰まで伸びている銀色の髪、今は邪魔なのか適当にポニーテールにしている。いや、俺にどんな髪型が好みかと言われて「ポニテかツインテ」だなって欲望そのままに答えたら、翌日からポニテになったりツインテになったりしてる。


 ほんとありがとうございます。マジでありがとうございます。


 目の色は澄んだ青色、顔も美少女から美女へなっていく中間って辺りか?


 なんて言っていいかよくわからん。俺では「めっちゃ可愛い美少女」としか言えん。身体もナイスバディって奴だ。胸も結構大きいのが嬉しいね。


 テレビなどでよく見る「量産型アイドル、ただしどれも美人」を10段階で5~7と設定しても、サイレーンはひいき目に見なくても10です。


 男の、と言うか俺の理想を体現したような子供から大人になりつつある姿。それが俺のソウルギアであるサイレーンだ。


 性格は割とあっけらかんとしていて、俺に対する愛がグラビティレベルに重い以外は人の好さそうな感じだ。


 口調も女性口調と言うよりは、なんとなく無口系な言葉少ない感じになったり、時々おっさんになったりとこの辺りは少々不安定なのか?


 ちなみに猥談も普通にしてくる豪の者だ。恐ろしいね理想の存在。


「あー、明日までには回復させないとなぁ」


「今日の分の回復も寝る前に掛けておくね、これで回復力上がるかも」


「過剰回復にならないって便利だよな。その辺リアルな物語だったら、細胞分裂の限界がどうとか、過剰回復になって逆に体に悪いとか、回復するけど体力とかを以上消費して逆にあかんとかあるし」


「RPGとかの回復魔法みたいに使えるから便利だよ。マスターの役に立てて私は嬉しいかな」


 戦闘では自衛も難しいだろうサイレーンにとって、俺の強化と回復が出来ると言うのが自分のアイデンティティになりつつあるようだ。


 ちなみに漫画や小説などで「アイデンティティ」って言葉をよく見たりするが、こいつは日本語で言うと「存在価値」とかそういう意味らしいな。


 俺自身なんとなくそんな感じかなーと適当に覚えていたが。ちなみにこの説明に意味はない、ただひけらかしたいだけの蘊蓄だ。


 この回復能力、今は1日に3回だけと効果は強力で便利だが使用回数は心許ない。


 だが次のミッションなどでポイントを手に入れてレベル2になれば一気に使用回数が倍になる。現在レベル×2回ってのは高レベルになれば便利になるはずだ。


 もう一つの能力である、強化効果の「ブレイブシャウト」は効果時間こそ決まっているが使用回数については無限らしい。


 重ね掛けは出来ないが、もしこの能力を解除してくるようなモンスターやPKがいたとして、解除されても直ぐに掛けなおせる。


 掛けなおしてる間に殺される可能性もあるけどな。と言うか解除出来るのかも分からんし。


「今週も出来れば何事も無く済んでほしいもんだ」


「マスター、そういうのってフラグって言うんだよ?」


「うん、俺も言ってから後悔した。大体こういう場合直ぐに何か起きるんだよな」


「お約束って奴?」


 フラグは構築させるためにあるからフラグって言うんだよって誰かが言ってたな。


「そうそう、漫画じゃあるまいしそんな直ぐに何か起きたりしないって」


「だね~」


―~~~~~♪


「うぉぁ!?」


「ひゃぅっ!?」


 二人して笑った瞬間に電話が鳴って驚いて飛び上がった。


 直ぐにスマホを確認すると、会社から電話が来ていた。


 心臓がすげぇ勢いで鳴り続けている。本気でフラグ通りにミッションが始まったのかと思ったわ。


 とりあえず直ぐに出ると明日の仕事が急遽中止になったとの連絡だった。


「あー、吃驚した。心臓に悪いわ」


「だね。私もつい飛び上がっちゃったよ。で、何の連絡だったの?」


「あぁ、明日急遽休みになったんだわ。こういう仕事してると割とあったりするんだよ。ま、助かったけどなぁ」


 明日が休みになってくれたお陰で、ずっと寝てられるしな。


 筋肉痛も明日1日ゆっくり寝てれば回復するだろう。明後日からもいつも通りに

過ごして―――


―ピロン♪


「ん、今度は―――――遅れてくるフラグってのも、お約束過ぎるだろ・・・」


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―【MISSION開始のお知らせ】

【本日22時よりモンスター討伐ミッションが開始されます。

ミッション範囲内にいるプレイヤーは必ず参加してください。免除されている

プレイヤー以外が参加を拒否した場合、罰則が適用されますのでご注意ください。

開始場所は各自アプリ内の地図でご確認ください。

沢山の皆さんのご参加をお待ちしております】

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「来やがったか、場所はアプリでって、おいっ!? これ【全世界】でやってるのかよ・・・」


 ついに来た初のミッション。


 モンスターとの殺し合いのデスゲームが始まった。


 今更ながらに血の気が引くが、すぐにアプリを起動して開催場所を調べていく。


 一応、参加できる範囲外に居た場合はそのミッションに参加しなくても良いという

特例はあるらしい。確かに東京に住んでいて、数時間以内に北海道でやるから絶対参加しろって言われても無理にも程があるからな。


 この制限距離はレベルが高くなるほど参加制限距離が長くなるらしい。


 それだけ強くなっていれば実力にも金にも余裕が出来るから、参加位出来るだろってのが主催者側の考えなんだろう。


 レベル6とかまで行ったら回避なんてほぼ無理だそうだ。


 そしてすぐに調べたのだが・・・あまりの驚きで少し声が漏れる。


 近場のどこだろうかと思ったら、最初の検索で【世界】から検索が始まりやがった。試しにアメリカで検索掛けたら、アメリカのほとんどの地域でミッションが開催される感じになっている。


 これ、どれだけ世界にプレイヤーがいるんだよ、っていうか世界中巻き込んだゲームなのかよ。


 俺はてっきりこの辺り程度、広くても日本で始まったゲームだと勝手に思ってたが

まさか世界を巻き込んだとんでもない規模のゲームになってるなんてな。余りの規模に思わず背筋が寒くなる。


 参加地域にプレイヤーが居ない場合はどうなるんだこれ? その場合は開催されないのかそれとも・・・


「これ、世界にどれだけプレイヤーが居るんだろうな・・・パソコンで検索すればプレイヤー同士の掲示板とかでも見つかったりするのかもな」


 今はそれより俺が参加範囲に居るかどうかだ。直ぐに日本の自分が住んでいる地区に検索をかける。それはあっという間に見つかった。


 俺達は参加範囲内に居た、と言うか開催場所が俺の住んでいる場所のすぐ近くだった。流石にこれを回避は出来ないだろう。


 というよりこれを回避したいとは思わなかった。この場所は、俺の仕事場の同僚や後輩が住んでいる場所が範囲内に巻き込まれていたからだ。


 モンスターは俺が襲われた時みたいに、稀に外に出てくる可能性がある。その時同僚のおっさん達や、後輩が巻き込まれでもしたら生きて帰れる可能性は殆どないだろう。


 いや、殺されるよりも【プレイヤー】になんてなってしまったら家族の居るあいつらが、そんな物に巻き込まれてしまったら、そう考えると俺の柄でもないが、そうなる前にクリアしてやりたいと思ってしまった。


 勝てるかどうかもまだ分からないのに、慢心してるって言われたら言い返せないな。


「マスター・・・ついに、来たんだね」


「あぁ。俺達の初戦闘になる。できれば明日の方が良かったんだがな」


「私、頑張るよ。マスターの足手まといにならないように」


「多分流川も来てくれるはずだ、あいつの傍を絶対に離れるな、ってもうメールがきたか」


 流川から直ぐにこっちに向かうとのメールが来ていた。


 俺達は現場に向かわずここで待っていて欲しいとも書かれている。


 俺も初の殺し合いになる以上、出来る限りの安全策を取って向かいたいからな

黙って待つことにする。


「今は19時、あと3時間か。3時間後にはモンスターとの殺し合いが始まるんだな」


 あの恐怖を耐えて戦えるか。


 サイレーンの強化を受けても、トラウマってのは早々消えないもんだ。土壇場で動けなくなるかもしれないと考えると今更ながらに怖くなってくる。


 気が付いたら腕が震えていた。


「マスター」


「っ!? さ、サイレーン」


 震えている俺の腕をサイレーンが自分の胸に押し当てて抱きしめた。


 感じる暖かいサイレーンの体温と感触。震えはまだ止まらないが、それでも少しだけ心が楽になっていくのがわかる。


「怖いよね。私も怖い。私が死ぬのじゃあなくて、マスターが傷つくのが、死んでしまうかもって考えるのが」


「サイレーン・・・」


「こういう時、なんて言えばいいんだろうね。分からない、分からないから」


 サイレーンはゆっくりと抱きしめていた俺の腕を離した後、俺に抱きついてきた。


「生き残ろうね。二人でずっと。私頑張るよ。強くなってマスターと一緒に」


「―――あぁ、当たり前だろ? こんな可愛い子を死なせてたまるかってんだ」


 死にたくない。


 俺達は生き残る。絶対に生き残って見せる。


 俺達には今、流川もいる。俺達よりずっと強い流川が味方でいてくれる。だから今回はきっと生き残れると信じている。


 そこから強くなって、ずっと強くなって。


「いつか今の日々を思い出して笑えるようにしてやろうぜ?」


「―――ん」


 強く俺を抱きしめるサイレーンに俺も強く抱きしめ返した。


 まだ相手を殺す覚悟なんて決められないが、


 せめて、サイレーンの前でだけは頼れる男になってやりたい、そう思った。



―ミッション開始まであと2時間47分



―11話了


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ついに初めてのミッション開始です。

どうなるかはどうぞお楽しみにです。

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