第72話 これは予想してなかった。どれだけ盛ったのか。
今日は日曜日、いつもより気楽に執筆出来て嬉しい限りです。
時間があるのはいいですね。とはいえ、その分ゆったりしたい欲望が
あさねこを襲ってます(ころがってる
皆さんいつも閲覧ありがとうございます。今日も少しでも楽しんでもらえたら
とても嬉しいです。【告知】コメント返信させて頂きました、大感謝です
──────────────────────────────────────
―◎◎社前
現在18時過ぎ、冬も近く辺りはもうほぼ暗くなっている。
流川も今日は多少残業して、残りの作業を終えて帰宅していた。ステータスが上がっているお陰で、体力も精神力も集中力も上がっているので、この程度の作業は苦でもなんでもない。ただ、今は御堂達の事を見なくてはいけない理由があるので、仕事よりも親友と知人を優先しているだけだ。
ふとスマホを覗く。今もまだミッションの告知が来ていない。予想通り今シーズンは次のミッションがラストになるのだろう、どれだけ早くても最短で一週間程度は間を置くので、この次のミッションはシーズン外になるので行われる事はない。
心地よい疲れの中、今日の夕飯とデザートに想いを馳せる。
最近は御堂がほぼ毎日ケーキを作ってくれているので、日々の生活が潤っている。ジェミニの二人も御堂が作るケーキの虜なので、やはり自分の魂から生まれたソウルギアなのだなと、小さく苦笑した。
帰りはいつものセーフハウスなので距離がある。いつもは近くにある買い取った家で過ごしているが、今はそちらには帰らない。そこなら徒歩で帰れるので便利ではあるが。
流川も免許は持っているが正直運転は好きではない。ドライブなどが好きという同僚やバイクで北海道一周したいと愚痴っていた同僚もいたが、それよりも流川は家でのんびりしたい性格だ。基本的にはインドア派なのである。
ゲームなどは御堂の付き合いでやる程度で、趣味は映画鑑賞や動画閲覧。小説等も御堂や同僚に勧められたが、普段から活字に目を通す生活をしているのに、これ以上読書したくないという、見た目に反してものぐさな性格である。
どちらかと言えばそう言うのは御堂がそれに当たる。小説やラノベを読み漁り、ネット小説はお気に入りのものがあればフォローして逐一チェック。ゲームアプリや据え置きゲームで遊びながら動画を垂れ流し、オタク生活の様な自堕落な生活を好む。
それでいてケーキ作りが趣味でその腕は超一流。見た目はガテン系の逞しい兄貴の様な風貌と、流川と御堂は中身と外見があまり一致しないのも特徴だった。
一応車は家に置いてあるので、帰宅すると見せかけてからセーフハウスに移動する。車で走れば1時間もかからずに到着できる場所だが、やはり普通に仕事をしているときは近くに帰れる家があるのが一番ですね、と心の中で愚痴る。
強めの風が吹いてくる。少々の肌寒さを感じながらも会社を後にしゆったりと歩いて行る流川、周りにはまだちらほらと誰かが歩いている姿が見えた。
彼等もこれから帰るのだろう、家族が待っているのか、それとも一人暮らしなのかは分からないが、戻る場所があるというのはいい事だと取り留めのない事を考えながら、微かに感じている気配をあえて無視して歩きだす。
いつも通りに歩き、家とは離れた場所にゆっくりと歩を進める。
その間も微かに、ほんの僅かにだが何かが付いてきている気配を感じ取っていた。普通なら気付かないほどの微かな気配、意識を後ろに集中しても歩いてくる音も何も聞こえないが、わずかに気配が漏れている。
確実に普通の人間ではないだろう、となれば思いつくのは同じプレイヤーか、プレイヤーキラーのどちらか。
折角早く帰ってのんびりしたいと思っていた流川なので、少々イラついても仕方ないだろう。基本的に温和で柔和な性格に見える流川だが、それは御堂や護る対象が居る時だけであり、それ以外はごく普通の男性とそう変わらない。
あえてすべて無視し、徐々に人が来ない場所に向かって歩を進めていく。相手は気づいているのか居ないのか、それとも好都合と思っているのか、気配は変わらず、ただ付いてきていた。
※
裏通り、この辺りは人通りもほとんどない。それゆえにガラの悪い人間等が集まりやすい場所だが、運がいいのか悪いのか今日は誰もまだいないようだ。
目的の場所まで歩いてきた流川はそこで歩みを止め、透き通るような声で後ろの気配に向かい声をかける。
「ストーカーとは、趣味が悪くありませんか?」
反応はない。
ただ、一瞬だけ気配が強くなったのを感じた。
流川はいつでもジェミニを呼び出せるように準備を整えている。
「どんな御用事で? 僕は仕事で疲れているので、用件を伝えてもらえないでしょうか?」
「・・・貴方、本当にレベル4なんですか? てか、そこから虚偽報告とか、どれだけ自分を持ち上げたいんですかねぇ」
中性的な声が響くと同時にこの場には不釣り合いな格好をしたゴシックロリータに身を包んだ少女が現れた。
右手には畳んでいるピンク色の傘が見える。
薄暗い場所で普通なら相手の表情も分からない距離だが、レベルが高いお陰で視力も底上げされているので、相手の姿がばっちりと見える。
高校生程度の少女だろうか? 感じる気配は強者特有のもの。何故ゴスロリ服なのかは流川も理解できないが、友好的な存在には見えなかった。
一方で相手の方も流川を見て驚いていた。
予想以上の強者の気配、それは間違いない。だがスキル【エンサイクロペディア】を使用した結果、相手のレベルは依頼に書いていた5ではなく、4だったのだ。
レベル6がレベル4に負けたのが恥ずかしくて1レベル盛ったのかと更に依頼主であるリジェクションの評価を下げる。元々最安値だったが更に更新した。これ以上はもう下がりようがないレベルまで落ちている、これ以下はこの世界で一番嫌いな虫と同等にまで落ちる
途中までは気づかれてないと思っていたが、途中どう見ても誘導されている事に気付いたが、あえてそれに乗った。此方としても他の一般人を巻き込みたくはなかったので丁度良かったのだ。
依頼のターゲット【ジェミニ】
◎◎商事で働く一社会人であり、この地区では最強のプレイヤー。
直ぐに調べれば名前も出てくるほどには簡単に情報も得られることからあえて隠していないのだろう。プレイヤーキラーから見ればこれほど襲いやすい相手もいないが、それでも尚まだ生きているという事は、レベル以上の実力者だと言える。
実際にプレイヤー防衛ミッションを攻略し、レベル6と言う実力はともかく圧倒的強者を退かせたというその力は油断出来るものではない。
油断してかかればレベル差云々前に殺されるのは目に見えていた。低レベルの相手からのダメージを軽減できる装具は最高でもレベル3まで、レベル4の相手も軽減できる装具もある事はあるが、1個数百万ポイントが必要と現実的ではないので、持っている相手はごく一部だ。勿論所持していない。
故に相手がレベル5ではなく、レベル4だとしても攻撃は通るので万が一を考えなくてはいけないだろう。
「ジェミニであってますよね? あ、違うとかそういうのはいいです。こうしてきてる時点で予想はついてると思うんですけど、プレイヤーキラーです宜しくおねがいしますね」
「これはご丁寧に。ジェミニと申します。色々調べていらっしゃるようですね」
「はい、依頼で頼まれましたからねぇ。余程恨まれてたんですね」
「どうでしょうね。依頼と言われた時点で相手は一人くらいしか思いつきませんが」
「クライアントの事は基本的には内緒ですよ、ええお仕事ですからね」
やばくなったら話す気ではいるが、あの様子では誰が依頼してきたかも予想しているのだろう。疲れたように頭を抑えている。
直ぐに立ち直ったのか、流川はゴスロリ姿のプレイヤーキラーに向かって交渉を開始し始めた。
「おいくらで雇われました? 上書きは可能で?」
「10万ですね、20万なら手のひら返すかもですよ~?」
「それは流石に難しいですね」
呆れともつかない声が漏れる。どうやらあの時一杯食わされたのがよほど気に食わなかったらしい。まさか格下のレベル4程度を殺すのに10万もかけると言うのが信じられない。それだけ知っているなら自分から殺しにくればいいのにと流川は思っているが、それは無理である。
プレイヤーキラーしか、それも前回の様に敵対者として呼ばれたプレイヤーにしか通達されない、ミッション後の制限があるため次のシーズン開始までリジェクション自身が流川達を殺す事は禁止されているのだ。
それを破れば殺されるか、死ぬよりひどい目にあわされる。それなりに長くプレイヤーキラーをやってきたリジェクションはそれをよく理解し、それでも尚、自分をこのような目に合わせた流川を次のシーズンまで待つことが出来ないほど殺したかったのだ。
自分で殺せないなら他の奴に殺させればいい。殺人依頼なら自分が直接手を下している訳ではないので、問題にはならないのだ。小賢しい上に自身で殺せないのは悔しいが確実に殺し切れると踏んで依頼を出したのだろう。
「ですよねぇ。僕としてもレベル4を殺して10万って、実は騙されてるんじゃないかなって思うんですけど、これもまたお仕事ですから」
「仕事人タイプのプレイヤーキラーですか。聞いた事はありますが本当にいたんですね」
「数は少ないですけど結構いますよ? さて・・・直ぐに殺すというのも禁止されてまして、相手に実力差を分からせてから圧倒的に痛めつけて殺せって言う無理難題言われてるんです。参っちゃいますよね?」
実際はそんな条件は書かれていないが、流川の実力を試す為にあえて適当を言っている。会話も軽い感じにしているのは、万が一負けた場合に交渉するためだ。相手を殺す依頼とは言うが、依頼が届いたのは師匠であって、自分はそれを勝手に受けて見に来ているだけなのだから、本気で戦う理由もない。
そんな相手の様子に流川も少し訝しんでいた。
どう見てもこちらを殺そうとする気配と意欲が感じられないのだ。そんな意欲を出さなくても軽く殺せるほどの実力があるからなのか、それとも上手く気配を隠しているだけなのか判別がつかない。
どちらにしても戦闘は避けられないだろう、ならば生き残る為に全力を出す必要がある。こんな場所で戦えば人も来るだろうが、それをどうにかできる手段は既に相手が発動させていた。
「【極大結界】本当は味方を護る防御魔法ですけど、この内部だったらどれだけ暴れても破壊音も音も漏れないですからね。辺りが壊れたらまぁ、そこはディザスター達が何とかしてくれるでしょう」
ミッションでの異空間とは違い、結界内部は普通の現実空間なので、辺りを破壊すれば勿論そのままだ。結界内部に人が居れば気付かれるだろう。とはいえこの辺りには人はほとんどいないので、暴れても結界内部でなら何ら問題はない。その過程で周辺に被害が出たとしても、そこはいつも通りにディザスターが何とかするのだろう。
「そこから抜けて逃げるとは考えてない訳ではないですよね?」
「そりゃあもちろん指定出来ますからね。ジェミニさんはここから出られません。もうちょっと気付くのが早かったら出られたんですけどね。ふふふ、可愛い僕の巧みな話術に引っかかりましたね?」
「逃げても追いつかれるだけですし、腹をくくっただけですよ」
「おぉ、肝が据わってる・・・大体殺しのターゲットって喚いたり騒いだり逆上するんですよ?」
「それで何とかなるのなら同じ事しますよ。何ともならないなら生き残る術を手繰り寄せるだけです」
「わぁぉ、こりゃあ手強そうですね。参ったなぁ」
レベルが低い以外は度胸も何もかも座っている流川に少し気圧される。
だがこちらは依頼を受けた側で、相手はそのターゲット。ならばそれを確実にこなすのみである。殺すつもりはないが寸前までは、全力を出し切ろう。持っていたピンクの傘を投げ捨て、ソウルギアを顕現させる――
「これから死ぬ貴方に、バトルネームを教えておきますね。僕は【ディーヴァ】レベルは5。どぞ宜しく」
背中に天使の羽が生え、右手に持つのはスタンドマイク。
まるでゴシックロリータ調のアイドルの様な姿になったプレイヤーキラー【ディーヴァ】が決めポーズを見せつけた。
―72話了
──────────────────────────────────────
という訳でプレイヤーキラー【ディーヴァ】が登場です。
流川君はどのように戦うのでしょうか。そしてアイドルでソウルギアがマイクと言う事は、サイレーンに全力で喧嘩を売ってますね。きっと彼女は買うでしょう、
23円で
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます