第52話 可能性が0.06%以下でも当たる時は当たる
今日も閲覧ありがとうございます。
日々投稿していると、難しさが襲ってきて大変ですね。
矛盾もありまくりますが、なぁなぁで見てもらえるととても嬉しいです。
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目の前の二体が面倒くさい。
そう考える彼女、一体一体はレベル4相当でしかないのにてこずっている事にいら立ちを覚える。と言うよりこのジェミニというソウルギアはおかしかった。
先ほどから油断なく全力でジェミニを撃破している。そう、撃破しているのだ、倒し、殺している筈なのに、一瞬の間も無く生き返って攻撃してくる。
『どういう事? 確かに殺してる筈。なのになんで殺した瞬間に生き返る?』
踊り掛かってくるカストルをスキルを発動して消し飛ばした。これで次は後ろで打ち続けてくる女、と思考を切り替える間もなく血煙が逆再生するかのように一瞬でカストルが蘇ってきた。
「流石に強いね、これがレベル6か」
笑みを浮かべながらディオスクロイを振るうカストル。消し飛ばされたはずなのに武器も防具も衣服すら元に戻っている。どう考えてもおかしい状態だ。これでは無敵ではないか、レベル6の自分がレベル5複数体なら兎も角、レベル4二体程度にここまで手こずっている。
『どんなカラクリ? スキルにそんなものが・・・・まさかレジェンド!?』
ガチャでしか手に入れる事が出来ない最強のスキル、レジェンドレア。ソウルギアにしかセット出来ず、その能力はSSレアなど余裕で凌駕するすさまじい効果を持つ物ばかりと聞く。
噂ではレベル9に至ったプレイヤーがそのレジェンドスキルを所持してレベル10も近いと聞いた事があるが、それ以外で出現情報はない。勿論彼女もマスターである男もSSレアスキルが限界だ。
もしそんなレジェンドスキルをセットしているのならば、この驚異的な再生能力も説明がつく。一旦態勢を整えてこの二人ではなくマスターを殺しに行けばいいと思考するが、二人の猛攻は弱まる所か少しずつ勢いが増してきている。
この二人を完全に殺さない限りはマスターの支援にすら迎えないだろう。
レベル4程度の雑魚に苦戦を強いられている現実にいら立ちが隠せない。
「そろそろ死んで――」
手加減なしの一撃でカストロを叩き潰すが、1秒も待たずに再びカストロが再生しディオスクロイを振り翳す。いい加減にうざくなってきたのでその鎌を叩き折ってやろうと掴みかけた瞬間、強烈な寒気を感じて急遽回避する。
振り切られた鎌がぶれて居るのが見えた。
「SSスキル【次元断】・・・!?」
「よく見切ったね! 流石に当たれば君でも死ぬでしょ?」
死ぬ所ではない、SSスキルの一つ【次元断】は購入に30万というふざけたポイントが必要になるとんでもスキルの代表格である。
その効果は相手の防御などを一切無視して攻撃を通すというシンプルな物。だがシンプル故に対抗策がない。この一撃の前にはどのような防御も意味をなさないのだ。結界を張っても結界が斬られるだけで終わるし、防御を固めても無意味になる。
そして一番恐ろしいのは発動にコストが一切必要ないのと、【アクションスキル】という所だ。パッシブスキルなら常時展開されているので脅威と判別できる。それはそれで十分脅威だが、それなら対応が出来るが、アクションスキルとなれば話は変わる。
普段は通常攻撃や他のスキルで攻め油断させ、ここぞという時に発動させれば油断でもすればそれで終わりだ。格上殺しスキルの筆頭である。
殺しても直ぐ復活し、その一撃は此方を殺しうる事が出来る。こんなレベル4が居てたまるか、彼女は脳内で吐き捨てる。
『まずいなぁ、このままじゃ』
ジェミニ達も正直な所余裕など全くなかった。相手が此方のからくりに気づいてしまえばそれで終わりだ。レベル6ともなればこちらを殺しうるスキルも所持しているだろう。していなければいつかは殺し切れるかもしれないが、それは希望的観測である。
何度も殺され、痛みを感じていない訳ではない。直ぐに再生するとはいえ、消し飛ばされれば多少なりとも流川に精神的なダメージがいく。これが続けば流川が戦闘不能になる可能性もある以上、そう何度も死ぬ訳にはいかないのだが、やはりと言うか相手が強すぎた。
【次元断】が命中してくれれば勝機はあった。慢心して油断している状態なら当てられると踏んで発動させたが、まさか避けられるとは、と内心では非常に焦っている。
しかしこれで相手は迂闊にこちらに攻め込む事が難しくなった。次元断は何度でも発動できるしコストも無い。攻撃時に次元断を発動させ続ければ相手は此方を攻めにくくなるだろう。
相手は此方の戦力を見誤っている、冷静さを取り戻すにはしばらくの時間がかかるだろう。その間に殺せるならば殺すという勢いで攻撃を続ける。
『おにーさんの方がまずいかも』
『あっちはこっちに比べればまだマシだよ、耐えてもらうしかない』
ポルクスが心配そうな声色の念話を飛ばす。
このソウルギアを縫い留める事が限界の二人では彼方に援護に向かう事など出来ない。敵もさるもので、ポルクスの射線が自身のマスターに向かない様に間合いを取りながら攻撃しているので、援護射撃も出来ないのだ。
『マスターの作戦は聞こえたよね?』
『うん、でも大丈夫かな?』
『乗るかどうかは彼等次第。乗らないなら死ぬだけだよ』
今も全員に流川の指示が飛んでいる。この状況をどうにかするために流川は全力で動いていた。御堂にレベル6という脅威を任せている以上、出来なかったではすまないと、最善を尽くしている。
このソウルギアを倒すことが出来ればこのミッションは成功だが、先ほどの攻撃を避けられた現状、勝てる可能性はとても低い。ならばもう一つの勝利条件に賭けるしかなかった。
それは防衛ミッションだからこそのもう一つの成功条件。
【制限時間限界による防衛成功】だ。ウェーブは一定時間耐えきればクリアになる以上、最後のこのウェーブも制限時間まで持ちこたえる事が出来れば防衛は成功になる。その間を耐え凌ぐ事が出来れば、全員が生き残れる可能性がある。
言うだけなら簡単な条件だ。
現状は誰もが限界が近づいている。アクセルは半死半生、バンカー達プレイヤーはアンデッドの対処に手一杯でほぼ戦力外。御堂が気合だけでボスであるプレイヤーキラーと戦っているが、完全に押されている。
何とか戦えているのが、自分達だけという状況だ。それもタネが割れてしまえば終わりというギリギリの状況。頼みはマスターである流川の策しかない。
「・・・そろそろ本気で苛立ってきたわ」
「そりゃどうも。そろそろ諦めるつもりは?」
「ある訳ないじゃない。雑魚に翻弄されてる私自身に苛立っているのよ」
縦横無尽に繰り出されるカストロの斬撃を巧みに回避し、出来た隙を狙って攻撃を通していく。そのどれもが鋭く完全な一撃の為、カストロの回避力をもってしても回避できず致命傷になる。
彼女の放った貫手がカストロの胴体を貫いた。
激痛とこみ上げる血で思わず意識が薄れるが、千載一遇のチャンスとばかりに全身に力を入れ抜けない様に腕を固定させ、次元断を発動させ――る前に胴体が切断された。
そのままカストルは死亡するが、同時に生き返り急速に再生する。そのスピードはほんの一瞬だ。
「あーもう、あと少しだったのに」
「次元断にレジェンドスキル・・・? お前達はここで殺すべきね」
「出来るものならねっと!」
彼女がレジェンドスキルと呟いていた。どうやらジェミニ達の高速再生はレジェンドスキルが関係していると考えているらしい。それは好都合だと、何も言わずに攻撃を再開する。
斬撃全てに次元断を乗せての攻撃。防御も出来ず当たれば致命傷になる以上、回避するしか出来ない。
『もういい、全力で行かせてもらうわ』
堪忍袋の緒が切れてきた彼女。最初は遊ぶつもりだったが、流石にいら立ちが頂点に達してきた。
「その再生力、確かに凄い。でも―――」
「っ!? うぐっ!」
彼女が右手をかざすとカストルの動きが止まった。恐らくはスキルで動きを止められたのだろうと考えるが、予想外にそのまま動きを止められただけだった。
「殺せないなら、再生するなら、このまま止め続ければいい。後は豆鉄砲撃ってくるだけの小娘も止めればそれで勝利よ」
殺して再生するなら、動きを封じて止めておけばいい。そうすればこれ以上相手にせずに済むとスキルでカストルの動きを停止させた。制限時間ありの捕縛スキルだが、低レベルでは解除は不能という有能なスキルである。
後はもう一人も止めてしまえば、あっちで何かしているだろうマスターを殺しに行ける。それで勝利だ。この二人を殺し切れないという苛立ちはあるが、マスターが死ねば流石にこの二人も死ぬだろうと、ソウルギアではなくマスター狙いに切り替えた様だ。
しかし、ここで彼女の予想外の行動をポルクスが取っていた。
「え―――!?」
「やぁ、お姉さん。隙が出来たね――!!」
「ぅあ!?」
次元断の一撃が右腕を掠った。切断こそされなかったが回復は暫く無理だろう。この程度なら痛い程度で済むが、それよりも心臓がバクバクと鳴り響き痛みすら感じる。
もう少しで死ぬ所だった――
目の前には再び激しい攻撃を仕掛けてくるカストルがいる。先ほどまで動きを封じていたカストルがだ。封印が破られた訳ではない、彼が動き出したのは――
「その程度で弟が止まる訳ないじゃない」
「いやぁ、久々に妹に殺されたよ――はぁっ!!」
ポルクスがあろうことか、封じられているカストルを殺したのだ。ソウルギアがそれも同一存在であろうそれが、躊躇なくそれを殺すという狂気。
そして殺された事で一瞬で再生し封印から強制的に抜け出してきたのだ。
あまりにも予想外で、あまりにも気が触れているその行為に怖気が走る。
これがジェミニ。これがこの地区で最強を謡われるレベル4。
彼女は認識を切り替える。
「認めるしかないわね・・・悔しいけど。お前達は・・・脅威だ――!!」
目の前の二体は雑魚ではない。レベル4という立派な敵だと彼女は一切の油断と慢心を捨て戦う事に決めた。このままでは負けるのは此方だと嫌でも理解したのだ。
「油断してくれてればいいのにねぇ」
相手が本気になったのを理解し寒気を感じるジェミニ達。この状況でギリギリ戦闘になっているのに、本気で来られたら止めきるのも難しくなるだろう。
『マスター。早めに頼むよ? そろそろ限界になりそうだ』
『大丈夫よカストル。パパはいつだって最高なんだから―――』
戦いはさらに激化する―――
―52話了
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ジェミニ奮闘中。
ネタがばれたら一瞬で負ける可能性が高いです。
さて、どんなネタでしょうか。あさねこはとびっこが好きです。
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