第155話 美貌の女神(いもジャージ)

【カクヨムコン9】参加中です。皆さんよかったら応援お願いします。

今日も閲覧ありがとうございます。少しでも楽しんでもらえたら嬉しいです

いいねや☆レビュー、フォローなどとても励みになっています。

日曜も仕事です。

─────────────────────────────────────


 テルクシノエーは意外と自分の服装に無頓着らしい。


 普段から綺麗な衣服を身に纏っては山田や新島が被弾し片桐が時々歯軋りしているが、基本的に安い服を買ってるだけだったりする。


 そして実は彼女が好んで着ている服は上下1000円少しで買えてしまうお買い得なスウェットなのだ。


 的確にダサくなる筈なのだが、そこは敵味方問わず魅了する魅力を持つテルクシノエー。おかしいレベルで似合っている。


 普段のほんわか優しい彼女に更に気安さを追加しましたとくればコロリと行く奴も多かろう。というか俺も被弾したからな。山田なんて泣きながら「俺にテルクシノエーさんを嫁にください、必ず幸せにします!!」と土下座して山崎にどつかれて正気にもどされてたわ。山崎がやらなかったら俺がハリセンでどついてたがな。


 そんなテルクシノエーだが、今日新たなすがたになっていた。その名も「クソダサジャージ」である。


 何をどうしたらこんなジャージを買って着ようとおもうのか、余程捨て値で売られていて家で着るならまぁいいかクラスの代物だ。


 小豆色しているシンプルイズベストと言わんばかりのいもジャージだ。


 こちら上下合わせて2980円とスウェットよりお高めの一品、何方が買ってきたんだと突っ込みたくなるが何を隠そう、テルクシノエーがびびっと来て購入したそうです。


 どういうことなの?


 一緒に買い物していたサイレーンが頑なに止めようとしてたらしいが満面の笑みでこれに決めたと高らかにいもジャージを掲げるテルクシノエーを止めることは出来なかったそうな。


 そっかー


 完璧で純情でうぶで妖艶という、あのテルクシノエーにこんな盛大な弱点があるとは。まさかの俺と同レベルのセンスのなさだとは。


 いや、センス自体はあるんだ。普段着ている衣服もテルクシノエーが買ってきてるんだし、強いて言えばそう、美的感覚、美的感覚がちょっと斜め方向にずれてるのだろう。


 いもジャージを着こなしてにっこにこ笑顔で似合いますか? なんてはにかみながら言われたら、流石の俺でも「うん、そうだね」としか言えなかった。


 ここに誕生してしまったクソダサ系美女に、俺は乾いた笑いをすることしか出来なかった。













「緊急会議ぃっ!」


「おーーっ!」


「はーい」


「まーちゃんが加速度的に壊れてるけど、ま、いいか面白いし」



 俺の部屋に集まった同士達。


 テルクシノエーのあの独特な美的感覚をなんとかすべく心強い仲間達が集まってくれた。


 全身アシンメトリーな奇抜なファッションを大胆に着こなす不思議系美少女サイレーン。


 今時の服はショコラにお任せ。最先端の流行をひた走るギャル系美少女、ミューズより、ショコラ。


 フリフリドレスは誰のため。乙女のかわいさを最大限に見せつけよう。ジェミニからポルクス。


 そしてテルクシノエーと同レベルの俺でお送りします。


 クレアはハトメヒトを抑えてくれる係だ。すまないクレア、お前の犠牲は無駄にしない!


 うん、ハトメヒトいれたら絶対ろくなことにならないと俺は確信をもって言える。ま、ここに絶望的に役に立たない俺がいる時点であれなんだが。


 片桐?


 片桐はほら、テルクシノエーの系譜だから。


「なじょしてこげんこつなってしもうたんや」


「まーちゃん、どこの国の方言なの?」


「あのテルクシノエーがねぇ、一つくらい欠点があれば可愛いを地で行くとはやるじゃない。流石はおにーさんのソウルギアって所かな」


 それはどういう意味で言うてるのかな幼女。


「テルクシノエーってこう、絶妙にダサいのが好きみたい」


「サイレーンのその極端にアシンメトリーな服装も一歩間違えるとダサいを通り越して痛いけどね?」


「がふっ」


「サイレーーーーーンっ!?」


 ポルクスからのマジレス攻撃でサイレーンが倒れた、頼れる仲間が早速同士討ちを始めてるんですががががが。


「とりあえず、おにーさんが似合わないって言えばそれで終わらないかな?」


「ちょっ、皆多分そう思ってるけど言わないのが優しさだしっ!?」


「ぐはぁっ!?」


 再びのマジレスが今度は俺を打ちすえる。頼れる仲間のはずが実は獅子身中の虫だったとは。


 でもはい、確かにその通りなんだがな?


 だけど考えても見てほしい。普段から優しくて真面目で健気な彼女が自信満々に誉めてほしいと言わんばかりの態度と表情で言ってきたら。


「そんなこと言えないじゃねぇかっ!」


「おにーさんはヘタレと……」


「情け容赦がないなっ!?」


「まぁまぁ、まーちゃんがヘタレなのは今に始まったことじゃないしね?」


「味方が、味方がいない……」


 うちひしがれる俺を復活したサイレーンが慰めてくれた。流石だサイレーン、ありがとうサイレーン。


 うちのテルクシノエーがクソダサ系美女と呼ばれるのを防ぐために俺達の戦いは始まるのだった。


 途中二人が大ダメージを受けてしまったが、大丈夫だ、なんとかなる。クレアがハトメヒトを止めていてくれているこの間に、テルクシノエーの美的感覚をなんとかしなくてはならない。


 俺達の挑戦は始まったのだった。



ー155話了


─────────────────────────────────────

とても短いですがご容赦を。

仕事の僅かな時間に漸くここまで書けました(涙

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る