11章 → 12章

―― 首都ラングラン・サヴォイア  ハンター協会本部 本部長執務室

   とある男女の会話


「ロンネスクから3段位審査の願いが出された?どれ、見せてみろ」


「こちらになります」


「ふぅむ、人族男、26歳。昇段理由は7等級、8等級の単独討伐。得意分野は剣術、魔法。人格、知性ともに問題なし、か。クスノキなど聞いた事もないが……こんな奴がいきなり出てくるか?」


「ケンドリクス支部長、そしてコーネリアス公爵閣下の署名付きです。ロンネスクから流れてきたハンターに聞いたところ、登録から3~4ケ月で2段まで上がった男だそうです。目の前で7等級を魔法の一撃で仕留めたのを見たとか」


「おう、裏を取るのが早いな。どうにも信じられんが……」


「それを確かめるための審査では?」


「確かにな。しかし3段位審査など久しぶりすぎてな。誰に審査させるか、まずはそこからだな」


「私以外に適任がいるのですか?」


「ああ?まあそうなんだがな。だがいいのか、副本部長の仕事と同時はいくらお前でもキツいだろうが」


「いえ別に。それにその男は私自身で試したいところもあるので」


「ほう?3段位の先輩としてってのは分らんでもないが……」


「いえ、そうではありません。ロンネスクのハンターによると、クスノキには別名があるそうです」


「何と呼ばれてんだ?」


「『美女落とし』。ロンネスクで有名な美女を全員落とした上に、教会の聖女にまで手を出しているとか」


「ぶはっ、そりゃ面白え。お前が『気になる』はずだな」


「その中にはケンドリクス支部長も含まれているそうですよ」


「はぁ!?『魔氷』アシネーが落とされたっていうのかよ!?そりゃなんつうか……本当なら色々ヤバいな。俺も興味が湧いて来たぜ」


「私が担当しますので、本部長は手をお出しにならぬよう」


「ちぇっ、そういう事は早く言えよな。まあいいや、ここんとこ『厄災』がらみでロクな話がなかったからな。そいつが本当に3段に相当するならそれはそれでありがてえし、久しぶりに楽しみができたってことにしとくか」

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