19章 → 20章
―― 北の平原 魔王軍本陣
「……魔王様、北の地で大きな火柱が上がるのが見えました。もしかしたら攻撃を受けているんじゃ……いるのではないですか?」
「ククク、案ずるなバルバネラよ。あれは我が術によるものだ」
「魔王様の術……なぜあんなことを?」
「我が策により目障りな異物を排除したのだ。しかも勇者までまとめてな」
「異物? 勇者も……ですか?」
「そうだ。古来より勇者の一行は、常に奇襲に近い形で魔王城に乗り込み我を討ってきたのだ。そこでそれを逆手に取り魔王城に罠を仕掛けた。奴らを閉じ込め魔王城ごと消滅させる、そういう罠をな」
「……それはっ!?」
「案ずるなと言っている。お前の妹たちはコネリタに任せてあるゆえ、無事に城からは抜け出ているであろう」
「コネリタ……長老が……?」
「もっとも我が術が発動したということは、コネリタは事前に討たれているかもしれんがな。どちらにせよ勇者どもがいつものように甘い奴らであれば、お前の妹は逃がしているであろう。……どうしたバルバネラ、顔色が優れぬぞ?」
「……いえ、妹が無事ならそれで」
「クク……。さて、
「……分かりました。しかしただモンスターを出しただけでは、こちらも結構な被害を受けると思うけ……思いますが」
「余もお前が集めた魔素を無駄遣いするつもりはない。そのための策はすでにうってある」
「策を……」
「国や砦がいかに強固であろうと、人間自体には付け入る隙が多い。それを利用すれば労少なくして莫大な功を得ることができるのだ。もっとも此度は、異物めが我が策をすべて無かったものとしおったのだがな。だがこれよりは我が策を阻むものはおらぬ。
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