14章 → 15章

―― ロンネスクのとある大通り



サヴォイア女王国第二都市ロンネスク。


その大通りには多くの人や馬車が行き来をしている。


その雑踏を縫うようにして今、一匹の獣が走っていた。


獣と言うにはあまりに小さいその姿は、一見すると黒い子猫である。


可愛らしいその姿は、人の目をひかずにはいられない。


しかしその獣の動きはあまりに早く、鋭かった。


何人かがその存在に気付き手を伸ばすが、誰一人として触れることすらかなわない。


風のような速さで身を運ぶその獣は、城門をくぐり外に出ると、一度足を止めた。


大きな目をくりくりと動かして周囲を探り、耳をぴくぴくと動かして遠くの音を拾う。


「にゃあ」


獣の口から声が漏れる。


行く先が決まったのか、獣は再び走り始めた。


迷いなく、主のもとへ。

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