1章 異世界転移?異世界転生? 07
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名前:ケイイチロウ クスノキ
種族:人間
年齢:26歳
職業:なし
レベル:25(8up)
スキル:
格闘Lv.5 長剣術Lv.6 短剣術Lv.5
投擲Lv.4 四大属性魔法(火Lv.4
水Lv.6 風Lv.6 地Lv.6)
時空間魔法Lv.5(new) 生命魔法Lv.3
算術Lv.6 超能力Lv.7 毒耐性Lv.3
多言語理解 解析Lv.1 気配察知Lv.5
暗視Lv.3 隠密Lv.3
称号:
天賦の才 異界の魂
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さらに4日が経過した。
しばらくニードルボアの肉ばかり食っていたので、たまには魚を食おうと思ってインベントリから取り出したら腐っていた。
そりゃそうかと思いつつ、『入れてる間は時間が経たなければいいのに』とか念じていたら『空間魔法』が『時空間魔法』に変化していた。
久々の「それはおかしいやろ」案件だな。
新しいスキルを取得するのはもう慣れたが、既得のスキルが変化するのは予想外すぎる。
千里眼を使うと、森の端がかなりはっきり見えるところまで来ていた。
遠くの城塞都市も、少し前から間違いなく都市だと判別できるようになっている。
視線を下げると、この先に小さな湖があるのが見えた。
もしかしたら魚を補充できるかもしれない。
千里眼を解き、湖の方に歩き出した。
森が急に開けると、そこには美しい湖があった。
広さは野球場二つ分といった所か。
水の透明度はかなり高く、水底を泳ぐ魚がよく見える。
湖なので、水の流れはほぼない。
ということで、水面に映る自分の顔をようやく見ることができた。
「……何となく元の面影はあるな」
そこに映っていたのは、確かに20代中盤と思しき男の顔だった。
前の世界での顔を5割増しほどイケメンにしたような感じ。
「思ったより違和感はないな。そこそこいい男になってるし、ありがたいことなんだろう、多分」
前の世界では、もう顔の造作など気にする年齢ではなかった。
今更イケメンになってもそれほどの感慨はない。
俺は水面をのぞくのをやめ、本来の目的である魚獲りを始める。
念動力投石で取るには、魚はちょっと深い位置にいる。
「電気ショックとかがあればいいんだが……いけるか?」
テレビで見た、電気を流して魚を麻痺させる漁がふと頭に思い浮かんだ。
魔法で電気を起こせれば……電気、静電気……いや、雷のイメージか?
右手を水面に向けて雷光を想起すると、ズドン!という衝撃と共に水面に電撃が走った。
「うぉっ!?」
「きゃあっ!?」
思ったより大きな衝撃があったことに声が漏れてしまった。が、それはいい。
問題は、俺の声に明らかに女性の悲鳴が重なったことだ。
しかもその声は、5メートルほど左の位置……つまりかなり近い位置から聞こえたのだ。
気配探知に感はなかった。
今の自分にとってはかなり異常な事態と言える。
俺は鎌を右手に構え、素早く飛びのいて声の発生源から距離を取った。
目の前にいるのは女……いや、少女か?
人間に見えるが、彼女を人間だと断ずるには何かが引っかかる。
「こんにちは。私はクスノキ、旅の者です。あなたは?」
俺は周囲を警戒しつつ、それでも社会人としての礼儀を思い出し、やはり棒のようなものを構えている女性に声をかけた。
「……私はネイミリアです。エルフで、ニルアの民」
鈴のような声と言うのだろうか。美しい声だった。
その女性を改めて観察する。
身長は150~160か、俺と比べるとかなり小柄だ。
濃い緑の、
胸の部分にはやはり装飾が施された胸当てを着けているが、その胸当てがやたらと前に出っ張っているのは……社会人としてそれ以上の言及は避けよう。
下は白のスカートに、オーバーニーソックス?というのだろうか、ふとももまで隠れる靴下をはいている。
かなりの小顔で、腰まである銀髪に、切り揃えられた前髪の下には形のいいツリ目、瞳は緑で、ありていに言って現実離れした超絶美少女といった
しかもその銀髪からのぞく耳は先が笹穂状に左右に突き出ていて、その女性の現実離れ感をこれでもかと増大させている。
と、冷静に見ていったが、俺がひとこと言いたいのは、
『お嬢さん、絵面的にメチャクチャ浮いてませんか?』
ということだ。
いや、耳が尖ってるとか超絶美形であるとかその辺りに目をつぶったとしても、彼女の服装はどう見てもこの森を出歩く格好ではない。
この世界がゲーム的だからあえて言うが、ゲームとかアニメとかに出てくるやたらとキラキラした主要キャラ、というよりメインヒロイン臭すらうっすらと漂う出で立ちである。
ことにその短いスカートが、前世でスカートを短くする長女とのバトルを思い出させて俺の胃をチクチクと攻撃する。
しかしエルフか。今まで考えたこともなかったが、確かにこの世界にならいてもおかしくはなさそうだ。
『ニルア』というのはおそらく氏族か集落の名前だろう。とすれば、彼女以外のエルフがいて、この辺りに住んでいるという可能性が大きい。
彼女の出で立ちを見る限りこの森を長時間歩いているとは思えない。近くに居住地があると考えるのが自然だ。
「今言ったように私は旅の者です。もしあなたたちの土地に無断で入ってしまったのなら謝罪します」
「ここは別に我々の土地ではありません。謝罪は不要です」
「それでは、私に何か用がおありだったのですか?」
俺は敵意がないことを示すため構えを解いた。
エルフの少女・ネイミリアも棒のようなもの……先に水晶がついているところを見ると魔法使いの使う杖のようだ……を下ろした。
「人族がこの湖に来ることはめったにありません。ですので、あなたが何者なのか、目的はなんなのかを観察していました」
「なるほど。私がこの湖に来たのは魚を獲るためです」
俺はそこで湖面に目を移した。先程の電撃で気絶した魚が水面に何匹も浮いている。
「……魚、ですか。それでは先程の魔法はそのためのものだということですか?」
「ええ、自分の世界……国ではあのような漁法があります」
「漁法……あれが漁法……?」
ネイミリアは口元に手を当てつつ、形のいい眉を寄せる。
一瞬の沈黙ののち、エメラルドのような瞳をこちらに向けた。
「先程の魔法は、もしかして『雷龍咆哮閃』ではないのですか?」
らいりゅうほうこうせん?
なんだろうか、とても……そう、とても必殺技っぽい響きがある。
「その、らいりゅうほうこうせん、というのは?」
「あ、いえ、申し訳ありません。
「お気になさらず。……先ほどのような魔法はこのあたりでは珍しいのでしょうか?」
「え、ええ、そうですね……」
ネイミリアの言葉の歯切れの悪さに、何かありそうな予感を覚える。
これは仕事の時によく感じたアレだ。面倒な仕事がいきなり増える前兆だ。
恐らく、恐らくだが、この娘さんは放っておくとこの後「今の魔法について詳しく教えてください」などと言ってくるはずだ。
だが今はまずい。俺はこの世界の事を何も知らない。
何も知らない状態でいきなり『ヒロイン臭のする超絶美少女エルフ』とか『らいりゅうほうこうせん』とか、いかにも曰くのありそうなモノに関わるのは絶対に避けるべきだ。
「もし何もないのであれば、私はおいとまさせていただきますね。森の向こうにある都市に急いでいるものでして」
俺は一礼すると、早足にその場を離れた。
「あ、お待ちを……」
という声は聞こえないフリをして。
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