3章 都市騎士団 07

「む、5等級の反応あり。3体……だと?」


7番目の扉の前で、騎士団長が眉をひそめた。


これまで3等級のオークソルジャー、コカトリス、4等級のオークキング、バジリスクが混じって出現したが、5等級は初めてだ。


確かにこの遺跡は5等級まで出現するということだが、3体同時と言うのは珍しいようだ。


「団長、どうしますか?」


騎士コーエンが聞く。彼は副長扱いのようで、探索中は度々団長の指示を仰いでいた。


「うむ。クスノキ殿、1体任せられるか?」


「2体まで任せてもらって問題ありません。ネイミリアもおりますし」


本当は3体でも余裕だが、さすがにそこまでイキがらなくてもいいだろう。


「分かった、それなら2体任せよう」


騎士団長はこちらを探るような目つきで見てから、騎士コーエンに向き直った。


「1体は私がやる。コーエン以下は後詰ごづめを」


「はっ!」


あ、騎士団長の戦いは見てみたい。こっちは一瞬で片づけるか。


「ネイミリアは大丈夫だよね?」


「はい、問題ありません」


エルフ少女は杖を掲げて自信ありそうに答えた。


まあマンティコア程度なら問題ないだろう。オーガエンペラーだとちょっとフォローが必要かもしれない。


「よし、扉を開け」


俺たち3人が扉の前に立ち、脇に控えた騎士が扉を開けた。




部屋にいたのは、ライオンの身体にワシの頭と翼、前足を持つファンタジー世界では有名なモンスターだった。



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グリフォン(成体)


スキル:

強風 気配察知 高速飛行 


ドロップアイテム:

魔結晶5等級 

グリフォンの羽 グリフォンの爪


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身体そのものはライオンを二回りほど大きくしたくらいだが、翼のせいでかなり大きく見える。


3匹のグリフォンはキエエェェ!と叫び声をあげながら飛び上がり、こちらに爪を向けてダイブしてきた。


ネイミリアは瞬時に炎を圧縮した槍・『焦熱炎槍しょうねつえんそう』を発動。


さすがに瞬殺とは行かなかったが、左の一匹に大ダメージを与え動きを止めることに成功する。


一方で俺は真ん中のグリフォンにメタルバレットの散弾を浴びせ、落ちてきたところを大剣で唐竹割りにした。


そのグリフォンが霧になって消える頃にはネイミリアも二発目の『焦熱炎槍』を獲物の腹に撃ち込み、見事討伐を完了している。


これでネイミリアの2級昇格は決まりかな。


逆方向を見ると、大爪の一撃を軽やかに盾で弾き、炎をまとった短槍を刹那に三突きしてグリフォンを霧に還す美人女騎士の姿があった。


「やはりお強いですね」


「貴殿らこそな」


赤いポニーテールをなびかせて振り返る女騎士に気負いはなく、キラキラが5割増しくらいになっているように見えた。





「やはり異常が発生していると見るべきではありませんか?一度戻って戦力を整えるべきだと考えますが」


次の部屋へ続く扉の前で、騎士コーエンが騎士団長に意見具申をしている。


扉の向こうに5等級モンスター5体の気配がある、というのがその理由だ。


扉をにらんでいた騎士団長は、厳しい顔をしたまま口を開いた。


「異常が発生しているのは確かだろう。だが、ここで退くことは賢明ではあるまい。異常が発生しているのがこの遺跡だけならよいが、他の場所でも発生していた場合後手に回る。部屋はここを含めてあと二つ。このまま進み、異常の元をここで絶っておく」


「それは確かに……しかし……」


騎士団長は騎士コーエンを手で制し、こちらを向いた。


「クスノキ殿、ネイミリア殿、貴殿らにはどれほどの余力がある?」


「私はまだ魔力に余裕があります。先程使った『焦熱炎槍』なら、まだ20回は撃てます」


「私も先程と同等の戦いでよければ、1刻程度なら継続できますね」


「それは頼もしいな。先程言ったように、この遺跡には異常が発生している。貴殿らに依頼したのはあくまで調査の補助ゆえ、これ以上我々に付き合う義務はない。しかしできれば手を貸してほしいのだ。いかがか?」


俺が目配せすると、ネイミリアは「師匠にお任せします」と一言。


「報酬5割増しで協力いたしましょう」


「結構だ。よろしく頼む」


差し出された女騎士の手を握り、契約を更新した。

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