4章 → 5章  

―― 某公爵と某協会支部長の会話


「くくくっ、いや、長年の懸案事項がこれほどあっさりと解決するとはな。貴殿は本当に策士だなケンドリクス」


「うふふ、策もなにも、たまたま向こうから機会がやって来ただけですわ」


「その機会を逃さずモノにするのが策士というものよ。しかしあの時、彼に事前に何も伝えていなかったというのは本当なのかね?」


「ええ。前もって伝えるとこちらの企みが漏れる可能性がないではありませんでしたから。まあ、彼は伝えなくとも上手くやるだろうと信じてもいましたけど」


「ふむ、頭も切れる、ということか。しかし短い戦いではあったが、貴殿の言う通り確かに彼の力は図り知れんな。片手で大剣を振るい騎士をまとめて吹き飛ばすなぞ、目の前で見ても信じられん。『王門八極』に匹敵するのではないか?」


「すでに超えているかもしれませんわ。何しろ彼の本領は剣より魔法のようですから」


「それも見てみたかったが……。なるほど彼が味方なら心強いが、果たして御せるのかね?」


「ええ、彼は理性的かつ道徳的な人物なので、こちらが義を尽くす限り問題ありませんわ」


「ふむ……。まあそちらは貴殿に任せるとしよう。しかしこれで、『厄災』への備えが進められそうだ。モンスターより身内に悩ませられるなど、全く忸怩じくじたる思いであった」


「わたくしどもも協力いたします。閣下におかれましては、迷いなく備えをお進めくださいませ」


「まずは内門騎士団の再編成だな。アメリアにはもう少し力を尽くしてもらわねばなるまいな。婚期が遅れると、彼女の父からまた嫌味を言われそうだが」


「うふふ、そちらは協力できそうにありませんわね。わたくしも自分のことで精一杯でございますので」


「くくっ、貴殿ならよりどりみどりだと思うのだが、男女の話はままならぬものでもあるな」


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