12章 → 13章

――  元上司と元部下の会話


「サーシリア、仕事の方は進んでいますか?」


「あ、副本部長。はい、情報がきれいにまとめられていますので、ほぼこのまま支部長の方に渡せそうです」


「そうですか。そちらから預かった書類の方もよくまとめれていましたね。相変わらず優秀でなによりです」


「ありがとうございます。なにぶんロンネスクも『ある人物』のお陰で情報があふれてまして、まとめる側から次々と新しい情報が入ってくるので大変です」


「ふふっ、『ある人物』、ですか。そういえば、サーシリアは当然その人物の二つ名は知っていたのでしょう?なぜ彼に教えなかったのですか?」


「ああ、それはですね……。教えてしまうと彼が今以上に周りの女性に気を使うようになるというか、遠ざけるようになるんじゃないかと思いまして」


「やはり気を使う人物なのですね?彼は」


「そうですね、女性が周りにいるといつも緊張してる感じなので。逆にだからこそ安心して女性が寄ってくるというか……ハンターとしての実力もありますから」


「ええ、それは今回の審査で嫌と言うほど理解しました。まさか私が足元にも及ばない男性がいるとは思いませんでした」


「副本部長ですら及ばないレベルなんですか?」


「本気で戦えば一瞬で負けるでしょうね。しかもその力を微塵も鼻にかけず、あくまで謙虚な態度。主人として理想的な人物です」


「確かに普段の言動を見てる限り、全然強そうには見えない……え、主人……?ローゼリス副本部長、今……?」


「ふふふっ、審査の時に見つめていたら、私の気持ちを汲んで『一緒にいてくれ』と言ってくださったので」


「ええっ!?」


「時がきたら、私は彼に仕えるつもりです。私の夢がもうすぐ現実に……。彼と会わせてくれたサーシリアには感謝していますよ」


「えっ、副本部長、あのっ、何をおっしゃって……、ああ行かないでください、まだ話が……っ」

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