17章 → 18章

―― 首都ラングラン・サヴォイア  ハンター協会本部 本部長執務室



「本部長、緊急の用件とか?」


「ああローゼリス、忙しいところ悪いな。王家からの連絡でな。遂に『邪龍』が動き出したらしい」


「それは……! どこに出現したのでしょう?」


「カントレアの南から北上中だと。通り道の集落とかは焼き払われてるみたいだが、事前に住民が逃げ出したところは人的被害は少ないようだ。どうも北に一直線に進んでいて、周りには目もくれないような様子らしい」


「この首都に向かっているのではないのですか?」


「いや、真北に進んでるそうだ。カントレアに向かっている感じだな」


「確かにカントレアはそれなりに大きい街ですが……。いえ、カントレアのさらに北にはロンネスクがありますね」


「おう、その通りだ。多分そっちに向かってる。これは重要機密だが、実は『邪龍』を倒せる武器が密かにロンネスクに移送されてる」


「そのようなことが……もしや『彼』が関係しているということですか?」


「可能性は高い。どちらにしろ、『邪龍』の目的はその武器だろうな。自分の弱点を真っ先に潰すってのは実に自然な行動だ」


「そうですね。もっとも『彼』がいるなら問題ないような気もしますが……」


「『邪龍』は手下、『邪龍の子』だったか、それを百匹以上引き連れてるそうだぞ。それでも大丈夫か?」


「百匹以上!? ……それでも『彼』ならば……」


「おいおい、それはいくらなんでも過剰評価じゃないのか?どちらにしろ国軍を出すことは決定、うちも当然手伝うんだが、お前には先行して敵の様子を見てきてもらいたい」


「『黒雷』として動けということですか?」


「そうだ。ついでにロンネスクでアシネーや『奴』とも情報の擦り合わせをしておけ。北の魔王軍が呼応しないとも限らない。スピード重視だ、頼むぞ」


「分かりました、すぐに行動を開始しましょう。それでは」




「……フッ、クククッ。あの『黒雷』ローゼリスが嬉しそうな顔するなんて面白いこともあるもんだ。クスノキか……本気で戦っているところを俺も見てみたいんだがなあ。ったく、本部長なんてやるもんじゃねえわほんと」

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