1章 異世界転移?異世界転生? 02

あれから1時間ほどを使って、スキルをすべて確かめてみた。


『四大属性魔法』については、


火魔法は指先にライターの火程度の火を出現させられる


水魔法はちょろちょろと指先から水が出せる


風魔法は扇風機の強くらいの風が起こせる


地魔法は手で握れるくらいの石を作り出せる


ということが分かった。


ゲームのようなファイアーボール!みたいな感じにならないのはレベルが低いせいだろうか?


ちなみに何度か使っていると、それぞれ少しづつ発動が早くなり、出る火が大きくなったり風が強くなったりした。


ピロリン、と電子音が脳内に響いたと思ったら、スキルのレベルがそれぞれ2に上がっていた。


空間魔法は現在意味不明。


魔法より驚いたのは超能力だ。


河原の石に『浮け』と念じたら拳ほどの石がフワッと浮いたのだ。


そのまま『飛べ』と念じたら凄い勢いで真っすぐ飛んでいき、木に命中して表面に大きな着弾痕を残した。


これ魔法より強力なんだが……。


つい楽しくなって石を何個も飛ばしまくっていたらピロリン、と鳴ってレベルが上がった。


透視とか瞬間移動はできなかったが、この『念動力』だけでも驚きである。


なおこの石射出を水中に行った結果、大きめの魚が何匹か獲れた。


解析スキルで見ると食用可とのこと。


水魔法で飲み水問題は解決していたが、食糧問題もひとまずあっさりと解決したのはありがたかった。




さて、火魔法で焚火をおこし、魚を焼いて食べたところで日が中天を過ぎた。


ひとまず生きていく最低限の事が可能ということが分かったが、それでも現状はまったく解決していない。


なにしろ今自分がどこにいるのかも分からないのだ。


石を解析した時に表示されていた『逢魔の森』というのが今いる森の名らしい、というだけしか分かっていない。


しかし『逢魔の森』とは……『魔』といえば人ならざる物を示す言葉だが、ステータス画面といったゲーム的な感覚で言うなら『魔物』を指すのではないだろうか。


つまりここは魔物が出る森ということだ。


そうなると、自分は結構、いやかなり危険な状況にいるということになる。


自然とナイフの柄を握ってしまう。


これを自衛に使えるようになることも必要かもしれない。


立ち上がって、ナイフを振り回したり突きの動作をしてみたりする。


当然そんな動作をするのは初めてであるが、空手の素養があったからなのか、10分ほど身体を動かしていると動きが滑らかになってきた。


ピロリン。


確認すると『短剣術Lv.1』がスキルに追加されていた。


いや待ってほしい、さすがにそれはおかしいだろう。


いくらなんでもそんなに簡単にスキルを得ていいものか。


それともこの世界ではこれが常識なのか?


もしかして称号にあった『天賦の才』の効果か?


いや、天才にしたって程度ってものがあると思うんだが……。


これも今後要確認だが、さすがにこれは比較対象がいないと確認しようがない。


もしやと思って石を投げる動作も確かめてみた。


投石は古来より人間の持つ有効な攻撃手段の一つだ。


長男とのキャッチボールを思い出しながら投げると、最初からプロのピッチャー並のスピードが出ることに驚く。


10回ほど繰り返すとみるみるコントロールが良くなり、速度が上がっていく。


ピロリン。『投擲Lv.1』


やっぱおかしいやろ!と心の中で突っ込みを入れた。




しばらくその場にとどまって、『短剣術』『投擲』をそれぞれレベル2まであげた。


森に戻って武器になりそうな木の棒を探したが、これは見つからなかった。


仕方がないので念動力と合わせて中型のクマくらいまでならなんとか撃退できるか、程度の攻撃手段を構築した。


そうこうしている内に日が落ち、異世界生活一日目は幕を閉じた。

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