1章 異世界転移?異世界転生? 09
この異世界に下り立ち、森を歩いていて、そして魔物と戦ってみて、すこし不思議に思ったことがある。
いかにもゲーム的な世界でエルフまでいるのに、魔物が微妙に見たことのない形状なものが多いのだ。
遥か昔、テレビゲームに興じていたころに覚えた『スライム』やら『ゴブリン』やら『スケルトン』やら、そういう『聞いたことある』魔物が一切出てこない。
なにかゲーム脳的なことを言っているのは自覚しているが……まあでも、例えば『ドラゴン』とか、そういう魔物を相手にすることを想定して用意をしておくのは悪いことではないだろう。
例えば炎のブレスが来たらどうするのか、とか……。
などと考えながら、さらに3日が過ぎた。
戦闘は12回、少し増えている気がする。
新たに『ジェノサイドベア』『マーダーマンティス』などという物騒な名前の魔物が登場し、インベントリ内のドロップアイテムもかなり増えた。
そして森の端まであと5日くらいか……という所まで来た時、『それ』は現れた。
「なんだこの気配……!?」
遠くから圧倒的な質と量を持つ気配が急速に近づいてきている。
俺は今、森の中でそこだけぽっかり穴のあいたように見える、木々がない広場のような場所に立っていた。
久しぶりに日の光を全身に浴びていたら、いきなり気配察知が悲鳴をあげたのだ。
気配は空からだった。
鎌を抜き、地魔法で石を生成、さらにその石の密度を高めつつ、空に目を向ける。
飛んでくるのは、
-----------------------------
ワイバーン(成体)
スキル:
飛行 ブレス(炎)
ドロップアイテム:
魔結晶7等級 ワイバーンの皮
ワイバーンの肉 発炎器官
-----------------------------
『解析』がようやくLv.2になり、魔物を分析することができるようになっていた。
しかしワイバーンとは!ついに『知っている』魔物が現れたようだ。
おまけに炎ブレス……これがフラグという奴だろうか。
ともあれ魔結晶の等級が高いことから、今までの魔物とは比較にならないくらい強いのだろう。
「逃げるか……?」
森の中に逃げれば、あの巨体ならば追ってはこられないだろう。
しかし何故か、ここは逃げてはいけない気がする。
何というか、アレは多分、この先に進むのに避けることのできない『中ボス』なのだという確信があった。
見ている間にワイバーンは頭上までやってくると、20メートルほど上空で停止した。
胴体だけで小型車ほどもある。長い首と尾を入れれば全長は15メートルを下らないだろう。
グレーの鱗を鈍く光らせ、感情のない目でこちらを
と、いきなりワイバーンの口内が赤く発光した。
「いきなりブレスか!」
――しかし、今の俺には万全のブレス対策がある。
フラグを立てたのは伊達ではないのだ。
俺は両手を前に出し、魔力を高めた。
そう、『魔力を高める』などという小賢しい技も実は編み出していた。
ワイバーンが首を後ろに反らし、ブレス発射のモーションに入る。一拍の後、口を突き出すようにしてブレスを吐く――
「ウォーターレイッ!」
同時に、俺の両手の先から超極太ウォーターレイが発射される。
ただの魔法ではない、念動力でひねりを加えつつ加速させている。
もはやウォーターレイというより、昔アニメで見た宇宙戦艦の必殺砲に近いイメージ。
上空から走る炎の奔流と、地上から打ちあがる
しかし一瞬の均衡も見せず水流が炎を圧倒、勢いを一切失わない巨大な水の槍は、ワイバーンの首を跡形もなく吹き飛ばす。
空飛ぶ首無しトカゲは黒い霧を吹き出しながら落下、地上でドロップアイテムとなった。
「……威力エグいな」
軽く練習はしていたし、どの程度の威力があるかもある程度予想はしていた。が、ちょっとそれより強力だった気がする。
本来なら炎のブレスを水で相殺する……くらいのつもりだったのだが。
「ブレス対策としては問題なかったからいいか」
そういう問題ではない気もするが、気がするだけだろう。
自分に過剰な期待をするのは失敗のもとだ。
この世界ではこれが普通、これが常識なんだ。
……違うよな、絶対。
-----------------------------
名前:ケイイチロウ クスノキ
種族:人間
年齢:26歳
職業:なし
レベル:40(15up)
スキル:
格闘Lv.7 長剣術Lv.8 短剣術Lv.6
投擲Lv.5 六大属性魔法(火Lv.5 水Lv.9
風Lv.9 地Lv.9 雷Lv.3 光Lv.4)
時空間魔法Lv.7 生命魔法Lv.5 算術Lv.6
超能力Lv.8 魔力操作Lv.2 魔力圧縮Lv.2
毒耐性Lv.4 眩惑耐性Lv.3 炎耐性Lv.1(new)
多言語理解 解析Lv.2 気配察知Lv.6
暗視Lv.5 隠密Lv.5
称号:
天賦の才 異界の魂
ワイバーン殺し(new)
-----------------------------
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます