11章 魔王軍四天王 04
その夜、『気配察知』に大きな反応を感じ、俺はテントの中で飛び起きた。
ネイミリアも異変を感じたのか寝袋から身体を出す。
他の3人、聖女二人とカレンナルはまだ寝ている。
なぜこのキラキラ娘たちと同じテントで寝ているのかは……単に押し切られただけで俺の意志でないことは言っておきたい。
それはさておき……
「師匠、これって狩場の奥の方で何かが起きてるんですよね。異常発生でしょうか」
「そんな感じだな。ただ妙なのは、モンスターの気配がどうも一か所に集まっているみたいなんだよな」
俺はネイミリアと共に外に出て、『千里眼』を発動。『魔力視』で闇の中を探ってみる。
確かに昼よりはるかに多くのモンスターが湧きだしていて、それが古戦場の奥の方に集まっている。
不思議なのは、集まっていくモンスターの気配がある一点の場所で次々と消えてしまうことだ。
誰かがそこにいてモンスターを次々と倒しているのだろうか。
「クスノキ教官、どうしましたか?」
夜番の神官騎士が俺に気付いて寄ってきた。
「少し狩場の奥で異常が発生しているようです。様子を見てくるので、全員を起こして何かあったら対応できるようにしておいてください」
「異常ですか?わかりました。お気をつけて」
神官騎士が去ると、テントから聖女二人とカレンナルも出てきた。
「どうしたの、クスノキさん?」
「どうも奥の方で異常が起きているみたいだ。俺が見てくるから、戦える準備をしてここで警戒をしていてくれ」
リナシャに答えると、ソリーンが少し慌てたように身を寄せてきた。
「私も参ります。もし前のように『
「そうね。クスノキさんがいくら強くても、アレだけは聖女の力で封じないとダメだから。私もいくからねっ!」
「いやまあ、確かにそうだけど……」
夜の狩場に聖女を連れていくなんて聞いたら、新任の大司教様が卒倒しそうだが……しかし二人の言うことももっともではある。
「もちろん私もお供いたします」
カレンナル嬢もグッと身を乗り出す。聖女が行くなら彼女が同行しないということはあり得ない。
「わかった、じゃあすぐに準備してくれ。ネイミリアもね」
「はいっ」
妙に嬉しそうにテントに入って行く4人を見ながら、俺は久しぶりに『イベント』が始まったのだろうと感じていた。
順番から行くと、多分『穢れの君』ではなく『奈落の獣』か『魔王』の関係者だろう。
正直『奈落の獣』はウチの黒猫アビスが関係者っぽいから、『魔王』でほぼ確定だなと思いつつ、俺もテントに戻って準備をするのだった。
夜の古戦場跡は、昼のそれに比べて一段と『雰囲気』のある空間だった。
前世なら幽霊やらお化けやら、実在の怪しい存在を勝手に恐れておののいていたかもしれない。
しかしこの世界では、幽霊もお化けも『モンスター』という形で存在し、しかもそれを駆逐する力を俺たちは持っている。
モンスターと戦うことへの心構えは必要だが、無用な恐怖がないのは非常にありがたいものである。
本来なら避け得ない『闇』という状況すらも俺の光魔法によって完全に解決され、頭上高くに浮かぶ強烈な光源は周囲を昼間のように照らし出していた。
その光を恐れるどころか目の敵にするようにアンデッドモンスターが襲い掛かってくる。
しかしパワーアップした聖女2人を含む俺たち5人パーティの敵ではなく、5等級のリッチやジャイアントグール、6等級のエルダーリッチや剣の達人風の骸骨・スケルトンアデプトですらもほとんど接敵と同時に消滅するばかりである。
「昼間よりも敵が強力になっていますね」
「そうねっ、夜の狩場は危険だって言うけど、これはちょっと強くなりすぎな気がするっ」
『ホーリーレイソード』でリッチを薙ぎ払いながら聖女ソリーンが言うと、メイスで全身鎧のスケルトンナイトを粉砕しながらリナシャが答える。
「今までの私たちだったら対応できなかったかもしれません。クスノキ様には感謝しなければ」
「この光魔法が強すぎよね。神聖魔法と合わせると威力が桁違いにあがるもの」
「光魔法だけ付与してもまるで違います。聖水を必要とせず、威力も上です」
2人が戦う横では、ソリーンを守るようにカレンナルが刀身輝く刀でジャイアントグールを両断している。彼女は光属性の付与魔法を早くに習得していた。さすがに聖女の護衛に選ばれるだけあり全体的な能力が高い。
というかこの3人の成長速度は他の神官騎士とは比較にならないほど早いのだ。これがキラキラキャラの特性なのかもしれない。
そんな獅子奮迅の戦いをしている3人の後ろで、俺とネイミリアは後方からの援護に徹していた。遠距離で魔法を放とうとしているリッチなどを優先的に狙撃する。もちろん『魔力譲渡』によるバックアップも欠かさない。
「そろそろ問題の地点に近づいてる。注意してくれ」
例のモンスターが集まって消滅する地点であるが、そこに近づくにつれモンスターが妙な動きをすることが多くなった。
俺たちの存在を無視し、狩場の奥にひたすら移動していくモンスターがいるのだ。それも問題の地点に近づくに従って、その数が増えていく。
そして進むこと数分、問題の地点にいたのは――
「チッ……、魔素の集まりが悪くなったと思えば、邪魔する奴らがいたんだ。ウザそうな奴ら……、でもこれを見られたら、そのまま帰すわけにもいかないんだよね……」
やたらとダルそうな話し方をする、しかし見た目は明らかに「アタシは魔王様の部下だし……」といった感じの女悪魔だった。
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