1章 異世界転移?異世界転生? 05
「それだけは勘弁してくれ……」
千里眼に映る果ての無い森を見下ろしながら、俺は呻いた。
何かないか、できれば人間の集落とか……と思いつつ全方位を見渡してみる。
すると遥か遠くに、ぼんやりと緑の薄い部分が見えた。
森の端だ、間違いない。
そしてさらにその奥には、灰色の何かが……。
「あれはまさか城壁、か?」
灰色の壁、城壁らしきものの内側には、建物らしきものが多数見える。
とすれば、ファンタジーではおなじみの城塞都市なのだろうか。
「とりあえず希望はつながった……」
方角を確認し、千里眼を解く。
あの都市に行くには、どうやら川からは離れないといけないらしい。
俺は川で可能な限り魚を取るとインベントリに次々と放り込み、森の中に足を踏み入れた。
森の中を歩くのは、初日ぶりだ。
気配察知を最大限に効かせながら、周囲を常に見回しながら進む。
河原に比べると、森の中は魔物と遭遇する可能性は格段に高まるはずだ。
アグリースパイダーは常に森の中から現れていた。
千里眼で方角を確認しながら一時間ほど歩いた時、気配察知に感がある。
しかも複数、意識を集中すると3つの気配が近づいてきている。
カン、カン、と硬いものを木に打ち付けるような音が大きくなってくる。
気配は木の上、いた、サル型の魔物だ。
大きさはゴリラ位、両腕の先が鎌のような刃物になっていて、それを木に打ち付けながら木から木へ飛び移って移動している。
俺はナイフを抜きつつ、地魔法で石を複数生成する。
しかし木が邪魔で、遠距離では狙いがつけられない。念動力投石の弱点がここで露見するとは。
サル型の魔物は木に隠れながら接近してくる。明らかに射撃系の攻撃を意識している動き。
俺がうろたえている間に、三匹はほぼ同時に頭上付近まで来ていた。
鎌状の腕を振り上げた体勢で、三匹同時にダイブしてくる。
「動けっ!」
俺は自分を
誰もいない空間に鎌を振り下ろしたサルの内、一匹が石の直撃を受けて絶命する。
一匹は片腕が吹き飛び、一匹は無傷だ。
生き残った二匹は同時にこちらに突っ込んでくる。
石生成は間に合わない。俺は左手をかざし、
「ウォーターレイッ!」
無傷の一匹を吹き飛ばす。が、片腕の奴がもう目の前だった。
鎌が振り下ろされる。
身をひるがえすが左腕を切られた。
痛みは感じない。
サルが鎌を振り上げる。
俺は一気に間合いを詰め、ナイフを躊躇なくサルの胸に突き刺した。
ギイエェェッ!
サルの断末魔、俺はそのサルを蹴飛ばし、ウォーターレイを発動。
吹き飛びから回復し、近づいて来ていた無傷のサルごと再度吹き飛ばす。
石生成、念動力……吹き飛んだサル二匹を穴だらけにして、5度目の戦闘は終了した。
「クソ、痛くなってきた……」
悪態をつきながら、切られた左腕を見る。
そこまで深い傷ではないが、森の中でこの裂傷は危険である。
破傷風にでもなれば、そのまま死に一直線だ。
「そういえば、回復魔法とかないのか?」
右手を傷にかざして、回復、とかヒール、とか念じてみる。
何度か念じていると、不意に右手から白い
気付くと痛みはなくなっており、水魔法で血を落としてみると傷跡はかすかにも残っていなかった。
ピロリロリ~ン、ステータス確認。
-----------------------------
名前:ケイイチロウ クスノキ
種族:人間
年齢:26歳
職業:なし
レベル:17(1up)
スキル:
格闘Lv.4 短剣術Lv.4 投擲Lv.4
四大属性魔法(火Lv.4 水Lv.5
風Lv.5 地Lv.5)
空間魔法Lv.3 生命魔法Lv.1(new)
算術Lv.6 超能力Lv.6
多言語理解 解析Lv.1 気配察知Lv.3
暗視Lv.2 隠密Lv.2
称号:
天賦の才 異界の魂
-----------------------------
いやまあ、大変ありがたいんだが……本当にイージーすぎないだろうか。
-----------------------------
剣爪猿の鎌
金属を含み、素材になる
そのまま武器として使用できる
剣爪猿の毛皮
衣服等の素材になる
魔結晶 3等級
魔力を大量に含んだ結晶
-----------------------------
ドロップアイテムを回収しつつ、先程の戦いを反省する。
森の中での戦いを想定した準備をしていなかったこと、念動力投石に頼りすぎていること、近接戦闘が弱いこと、複数を同時に相手することをきちんと考えていなかったこと。
回復魔法を思いついていなかったこともかなり大きい。
新しい身体は極めて高い能力を持っているようだが、それを使う自分がまだ元の常識に縛られているのはまずい。
近接戦闘についてはいい武器が手に入った。
『剣爪猿の鎌』は鎌状の刃の根元が柄状になっていて、丁度握れるようになっている。
刃渡りは50㎝以上あり、短剣より格段に強力な武器になりそうだ。
素振りを行って身体に馴染ませると、『長剣術』スキルを得た。
その後さらに森の行軍を続け、日が落ちるまでに2度魔物との戦いがあった。
遭遇したのは剣爪猿のほか、ニードルボアという全身に針を生やした猪のような魔物だ。
どちらも近づくところを石の散弾で足止めし、鎌で首を落とした。
接近戦を余儀なくされる森の中では散弾からの近接攻撃……これが新たな戦法として加わった。
なお、ニードルボアからは『ボアの肉』がドロップし、食糧問題にも早々に解決が見えた。
ちなみに、どちらの戦闘もワザと負傷をし、回復をすることで生命魔法のレベルを上げておいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます