12章 首都 ラングラン・サヴォイア(前編) 08
眼前に広がるのは赤茶けた大地と、その大地に根を張る巨大な岩山であった。
形状は富士山に近いだろうか。さすがにあの圧倒的なスケール感はなく、高低差は500メートルもないだろう。それでもこれがダンジョン内にあると言われると、どうにも非現実感が強過ぎる。
「あの山を登った先に何かがある、ということでしょうか?」
俺がそう言ったのは、今いる場所から道が岩山に向かって伸びており、山のふもとからはつづら折りになって頂上まで続いているからである。
「そのようですね。しかしモンスターの姿が見えないのが妙です」
「確かに……」
ローゼリスの指摘の通り、道中の氾濫が噓のように、ここではモンスターの姿が一匹も見えない。まるで早く山の上に来いと誘われているかのようだ。
しかも不思議なことに、『千里眼』で見ても山頂には今のところ何もいない。現地にたどり着かないと何も起こらないタイプの『イベント』と言うことだろうか。
「注意しながら進みましょう」
ローゼリスの言に従い、『罠感知』『魔力視』を常時発動しながら道に沿って歩を進めていく。
つづら折りの直下までは何事もなく進むことができた。ここからは蛇行しながら頂上に向かうことになる。2人の身体能力を考えれば道を無視して直登することも可能ではあるのだが、どうもつづら折りの途中には何匹がボスモンスターがいるらしい。近づいてから急に『気配察知』に感があったのだ。
つづら折りを登っていく。道自体は人間がやっとすれ違えるほどの細い道だが、折り返しの部分がちょっとした広場になっていて、いかにもそこでバトルイベントが起こりそうな地形である。
一つ目の折り返し……広場に入ると、山側の岩が急に盛り上がり、分離したかと思うと巨大な人型となった。表面の岩が剥がれ落ちると、どことなく前世に見たアニメのロボットのような造形になる。
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ガーディアンゴーレム
スキル:
剛力 剛体 不動
瞬発力上昇
魔法耐性 物理耐性
擬態 属性魔法(地)
ドロップアイテム:
魔結晶7等級
ガーディアンゴーレムの核
オリハルコン
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『オリハルコン』は『ミスリル』を超える希少金属だ。これで打った剣は国宝になるものもあるとか。
「7等級です。地魔法、瞬発力上昇に注意してください。物理・魔法に耐性あり」
「……承知しました。私が前にでます。援護を」
俺の言葉にローゼリスは一瞬戸惑ったようだが、さすがにここで聞き返すようなことはなく、素早く戦闘に移行した。
ローゼリスが『縮地』の連続使用で一気にゴーレムに近づいていく。
ゴーレムは両手から大量の『ストーンバレット』を掃射するが、二つ名通り『黒雷』と化したローゼリスを捉えることはできない。
流れ弾が何発もこちらに……というかゲームで言う所の全体攻撃のようだ。俺はそれを念動力で逸らしつつ、メタルバレットでゴーレムの腕を狙撃。耐性スキルのせいか貫通こそしないものの、丸太のような腕を弾き全体攻撃を中断させることに成功する。
その隙にローゼリスがゴーレムの足元まで接近、大上段からの鋭いパンチを躱して大木のような太さの足に斬りつける。
付与魔法の効果もあり刃は通っているのだが、いかんせん足が太すぎて切断までは至らない。
とはいえゴーレムはその攻撃を嫌がり距離を取る。巨体に見合わず動きが素早いのは、『瞬発力上昇』スキルのレベルが高いからだろう。
しかしその程度のスピードではローゼリスから逃れられるはずもない。同じ部分を
その後は一方的であった。片膝をついた岩の巨人は、暴風のように吹き荒れる二刀の曲刀の前に見る間に解体され、その体積が半分ほどに減ると黒い霧と散った。
「お見事です」
「援護助かりました。付与魔法がなければもう少しかかっていましたね」
涼しい顔で言うところを見るに、3段位となると7等級でも苦にしないようだ。
しかしその
「とはいえ最初のモンスターが7等級とは、上にいる元凶がどれほどのものなのか……貴方様は単独でどの程度まで相手をできますか?」
「8等級なら3体を同時に討伐したことがあります」
「8等級3体を単独で……?その情報はまだ上がっては来ていませんが」
「恐らく公爵家か王家で情報が止まっているのかと。少し裏のある話なので内密に願います」
「分かりました。その情報はじきにこちらにも来るのでしょう。ですがそれが本当なら戦力的には問題なさそうですね」
「期待に沿えるよう力を尽くしますよ」
俺の言葉にローゼリスは頷いて、山頂を見上げた。天に突き出た岩山の先端は、いつの間にか白い霧に隠れて見えなくなっていた。
頂上まで中ボス戦をこなすこと14回、全部がゴーレム系7等級であったが、後半は同じ7等級でも上位個体だったり、2体同時に出現したりすることもあったため、正直並の戦力では攻略不能な難度である。3段位ハンター、『王門八極』クラスが複数いてどうにか、というレベルだろう。
「貴方様がいなければ一度退いていましたね」
頂上直前で待ち構えていた『ロイヤルガードゴーレム』2体を倒した後、ローゼリスはそう言って俺を見た。
最初の内はローゼリスと共闘する感じであったのだが、さすがの彼女にも疲れが見え始めたため途中からは俺一人で対応をしていた。巨大なロボット風ゴーレムを「炎龍
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名前:ケイイチロウ クスノキ
種族:人間 男
年齢:26歳
職業:ハンター 2段
レベル:119(12up)
スキル:
格闘Lv.37 大剣術Lv.39 長剣術Lv.32
斧術Lv.32 短剣術Lv.27 投擲Lv.16
九大属性魔法(火Lv.39 水Lv.38
氷Lv.33 風Lv.44 地Lv.46 金Lv.45
雷Lv.36 光Lv.34 闇Lv.15)
時空間魔法Lv.40 生命魔法Lv.31
神聖魔法Lv.32 付与魔法Lv.31
九属性同時発動Lv.5 算術Lv.6
超能力Lv.56 魔力操作Lv.49 魔力圧縮Lv.41
魔力回復Lv.40 魔力譲渡Lv.27
毒耐性Lv.13 眩惑耐性Lv.19 炎耐性Lv.21
風耐性Lv.7 地耐性Lv.10
水耐性Lv.5 闇耐性Lv.14
衝撃耐性Lv.37 魅了耐性Lv.14
幻覚看破Lv.5(new)
多言語理解 解析Lv.2 気配察知Lv.34
縮地Lv.37 暗視Lv.25 隠密Lv.29
俊足Lv.39 剛力Lv.40 剛体Lv.38
魔力視Lv.28 罠察知Lv.10 不動Lv.39
狙撃Lv.36 錬金Lv.38 並列処理Lv.48
瞬発力上昇Lv.41 持久力上昇Lv.45
〇〇〇〇生成Lv.14
称号:
天賦の才 異界の魂 ワイバーン殺し
ヒュドラ殺し ガルム殺し
ドラゴンゾンビ殺し 悪神の眷属殺し
闇の騎士殺し 邪龍の子殺し
四天王殺し(new)
レジェンダリーオーガ殺し
キマイラ殺し サイクロプス殺し
オリハルコンゴーレム殺し
ガーディアンゴーレム殺し(new)
ソードゴーレム殺し(new)
ロイヤルガードゴーレム殺し(new)
エルフ秘術の使い手
エルフの護り手 錬金術師
オークスロウター オーガスロウター
ゴーレムクラッシャー(new)
エクソシスト ジェノサイド
ドラゴンスレイヤー
アビスの飼い主 トリガーハッピー
エレメンタルマスター
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このダンジョンの難易度からして、この後出てくるのは上位の『厄災』関係者、もしくは『厄災』そのものかもしれない。
たとえ『厄災』本体だとしても、このステータスがあればとりあえず行けそうな気もする。というかこの身体は魔力とかがステータス関係なくインチキなので、全力を出した時の力が未知数なんだよな。実は俺自身が『厄災』でした、とかいうネタだったら笑えないんだが……。
「どうかしましたか?」
ステータス確認をしていると、ローゼリスがこちらの顔を
鋭い目つきの割に距離が近いような気がする。
「失礼しました、一応ステータスを確認して、この先行けるかどうかを確認していました。問題ありませんので行きましょう」
「貴方様のステータス、とても興味がありますね。このダンジョンから帰ったら色々お聞かせ願いたいものです」
長男が言っていた『死亡フラグ』的なセリフを残しながら、ローゼリスが先へ進む。
岩山の頂上は、一言で言えばカルデラ……火山の噴火口跡になっていた。
俺たちはその火口の淵に立ち大きな
「っ!?」
気配は全くなかった。
唐突に靄の中から鱗の生えた巨大な腕が伸び、ローゼリスの身体を掴み、再び靄の中に消えた。
いきなりとはいえ、そのスピード自体は彼女なら決して避けられないものではなかった。
それが回避できなかったのは強制イベント……『さらわれた仲間を救え』的なやつだからであろうか。
そうであることを祈りつつ、俺は巨大な窪地の底に向かって飛び降りていった。
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