12章 首都 ラングラン・サヴォイア(前編) 07
審査日2日目早朝。
昨日と同じように副本部長を伴って岩山フィールドに狩りに出た。
出る時に、食事中の他のパーティのメンバーが副本部長を見て「え、あれ副本部長じゃないの?」とか「あれが『黒雷』ローゼリスか」とか言っているのが聞こえたのだが……『黒雷』、少年心揺さぶる素晴らしい二つ名である。それなのになぜ俺は……悲しくなるからやめておこう。
先行のパーティがいないので、『千里眼』で最も効率の良さそうなルートを探す。が……、
「やはり昨日より5等級、6等級の数が格段に増えてますね。パッと見て3倍はいます。異常の可能性がかなり高いと思います」
「なぜ分かるのですか?」
おっと、このスキルは申し渡し事項になっていなかったのか。まあロンネスクの支部長らには知られているし、副本部長に知られても問題はない。
「私は狩場を
俺は最も近いモンスターの集団に向かって走り出した。
中央の岩山のふもとの広場に、果たして同数のモンスターがうごめいていた。広場の半分以上を覆い尽くすその密度は明らかに異常である。
「これは……分かりました、貴方様がそのようなスキルをお持ちであることは信用しましょう」
「ありがとうございます。とりあえずモンスターは倒してしまいますね。『エターナルフレイム』」
本部長が昨夜、俺の魔法を確認したいそぶりを見せていたので、メニル嬢から拝借した魔法を発動。
広場全体を貫くようにそそり立った炎の柱が、モンスター38体を瞬時に霧へと還す。
「今の魔法は……いえ、今は異常への対応が先ですね。私はキャンプ地に戻って、他のパーティに出口付近での対応を指示してきます。貴方様はここで待機、近づくモンスターを退けてください。合流後、奥地に向かいましょう」
「承知しました」
副本部長が一瞬で目の前から消える。
俺は再度『千里眼』を発動。ドローンモードも駆使して奥地までの様子を探る。
しかし途中から白い
「お待たせしました」
俺が『千里眼』を解くと同時に副本部長が現れる。
「お疲れ様です。どうやら最奥部付近がダンジョン化しているようです。すでに氾濫の兆候が見られる状況です」
「そこまで分かるのですか?しかしそれが本当であれば、異常の進行が異様に早いですね。何か特殊な事態が進行しているのかもしれません。早急に解決を図らなければならないでしょう」
「同感です。急ぎましょう」
俺と副本部長は、狩場の奥地に向かって走り始めた。
奥地までの道のりは、やはりモンスターで溢れかえっていた。
俺と副本部長は、それらを蹴散らしながら先へと進む。
さすがに現3段位ハンターの戦いぶりはすさまじく、『王門八極』のクリステラ嬢に力で劣るも速度で勝るといった感じで5・6等級のモンスターすら次々と二刀で切り裂いていく。
俺はというといつものメタルバレット超高速連射で大量虐殺である。ファンタジー世界に現代兵器を持ち込んだようで極めて味気がなくかつインチキ臭が酷いのだが、モンスターの集団には大口径徹甲弾の嵐が一番効率がいい。
もちろんドロップアイテムは落ちたそばからインベントリの穴に吸い込まれていく。
何百匹のモンスターを駆逐したであろうか、俺と副本部長は山道に従って中央の大岩山をぐるりと半周し、その裏側へとたどり着いた。
狩場の最奥部に続く道、その先が白い靄に覆われ見えなくなっていた。
「ここがダンジョンの入り口のようです」
俺が言うと、副本部長は
「貴方様は魔力の方は問題ありませんか?」
「問題ありません。それと副本部長、これは提案なのですが――」
「ローゼリスとお呼びください」
「え?はぁ……、よろしいのですか?」
「副本部長は呼びづらいでしょう。行動中は敬称も必要ありません」
言葉の内容とは裏腹に、副本部長の金色の瞳は非常に鋭い光を放っていた。なぜまた
「分かりました、ではローゼリスとお呼びします。それで、提案なのですが、副本ぶ……ローゼリスの武器に私の付与魔法を掛けさせてください」
「そのようなことが……貴方様ならできるのでしょうね。やっていただけますか?」
「はい」
例のインチキ付与魔法を行使。ローゼリスの曲刀が赤熱し、低周波の音を発するようになる。
「これは昨日使っていた付与魔法ですね。効果は……切断力の強化でしょうか」
「はい、斬れないものがほぼなくなります。斬れすぎますのでご注意を」
ローゼリスが近くの岩を斬る。何の抵抗もなくスライスされた岩を見て、目を見開くダークエルフ美女。
「素晴らしい切れ味です。このような付与魔法は聞いたことがありません。貴方様独自の魔法なのですか?」
「ええ。ダンジョン内はモンスターがさらに強力になる可能性がありますので、楽ができればと」
「楽などというレベルではありませんが……今は頼らせていただきます。では、ダンジョンへ入るとしましょう」
俺とローゼリスは、白い靄の中へと足を踏み入れた。
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