2章 城塞都市ロンネスク 07
スキル全開で協会に戻ると、事の次第をサーシリア嬢に伝えた。
するとそのまま、協会の3階にある会議室らしき部屋に案内された。
程なくして、サーシリア嬢を連れて、眼鏡をかけた20代後半くらいに見えるイケメンエルフが入ってくる。
肩まである金髪を後に流した、一見して俳優のような優男である。
もっともその風貌に似合わず全体にどことなく精悍さが漂っているところからして、元凄腕ハンター的な人物なのかもしれない。
それはともかく、俺としては彼が『メインキャラ的キラキラオーラ』をまとっている方に注意がいってしまう。
サーシリア嬢と並ぶとまぶしくてしかたがない。『眩惑耐性スキル』にはきちんと仕事をしてもらいたい。
「ハンター協会ロンネスク支部副支部長のトゥメック・ニルアだ。手間を取らせて済まないね。クスノキ殿の話は受付嬢経由では済ませられない案件なので許してほしい」
「5級ハンターのケイイチロウ・クスノキです。それなりの案件と聞いておりますのでお気になさらず」
握手をして、互いに席に着く。
「もう一度話を聞かせていただいてよいか?」
「わかりました。私が……」
オークの谷で起きたことを、なるべく客観的事実のみになるように注意して報告する。
ニルア副支部長は眼光鋭く耳を傾けている。
俺が証拠として魔結晶を机の上に並べると、副支部長は「ふむ」と言った。
「魔結晶だけでも証拠としては十分ではあるのだが……オーガと特定できる別のドロップ品は持っているかな?」
「オーガの斧とかですか?」
「うむ。このサイズの魔結晶はたしかにオーガのものではあるのだが、他のモンスターからも取れないではないのだよ。協会が動くには、もう一押し欲しいのだが」
オーガの斧は、全力で走るにあたってすべてインベントリにしまってある。
この副支部長、まさか空間魔法持ちなのを怪しんでカマをかけているのだろうか?
まだそこまで『やらかした』覚えはないのだが……。
「ニルア副支部長、協会には守秘義務はありますか?」
「もちろんだ。ハンター個人に関する情報を他者にもらすことはない。それは例え王家が相手であっても、だ」
なんと、ハンター協会とはそこまで強い組織なのか。ちょっと認識を改める必要があるな。
「分かりました」
俺はインベントリを開き、オーガの斧を6本取り出した。
副支部長は一瞬だけ目を見開き、軽く息を吐いた。
サーシリア嬢が目を輝かせているのが場違いでちょっとだけなごむ。
「なるほど、これは疑いようがない。……しかしクスノキ殿が空間魔法使いとは。それに関してもかなりの驚きだが、今はそれどころではないな」
支部長は立ち上がり、再度握手の手を伸ばす。
「協力感謝する。この件は協会が対応するが、こちらが情報を開示するまで口外は控えて欲しい。ドロップアイテム類はいつもの通り買取に回してもらって構わないので、サーシリアに相談してくれ」
「分かりました、口外はしないようにします。よろしくお願いいたします」
握手をすると副支部長は「では」と言って、キラキラオーラとともに部屋を出て行った。
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