9章 → 10章
―― ある魔法マニアエルフ少女の回想
私と師匠の出会いは本当に偶然の出来事でした。
私が森でモンスター退治をしていると、いつも立ち寄る湖のほとりに人族の男性が立っていました。
私が『隠密』を発動させて近寄ってみると、背の高い、エルフにはいない黒髪を持つその男性は、湖に向かってエルフの秘術『雷龍
私は思わず『隠密』を解いてしまいました。
その男性は私のことを警戒していたようでしたが、その対応は礼儀正しいもので、私はその人に一層興味を持ちました。
しかしその男性は、私といくつか言葉を交わした後、何故か慌てたように立ち去ってしまいました。
私はこっそりと彼を追いました。そして彼がもう一つの秘術――『水龍
後にロンネスクで再会をしたその男性は、誠心誠意お願いをすると私が弟子になることを認めてくれました。
その後私は師匠となったその男性の教えを受けるとともに、モンスターの氾濫を鎮圧したり、廃墟で『
その中で私の魔法の実力は次第に上がっていき、遂にはエルフの悲願ともいえる雷魔法を身につけることができたのです。
これまでのことは、師匠には本当に感謝の言葉しかありません。しかしまだ私は満足していません。いまだ力の底が見えない師匠から学ぶことは、まだまだたくさんあるからです。
もちろん、測り知れない力を持ちながらあくまで謙虚であり、困窮する人がいると対価を求めつつも助けの手を伸ばす師匠には、人間としても学ぶところが多くあると感じています。
ただ一つ、師匠の欠点を挙げるとするならば……それは女の人から向けられる感情に対して、あまりにも鈍感なところでしょうか。鈍感というより、わざと気付かないようにしている、そんな感じすらします。いずれにしても、後々、師匠が女性関係で大変な目に遭うのは間違いないでしょう。
もっとも、いざとなったら全員を
……いえ、今のままだとやはり危険です。弟子として、私が師匠を守らなければ……。
それはともかく、今回師匠が騎士団長のアメリアさん……彼女も師匠に好意を持っている女性の一人です……と1週間ほど出かけるということで、私は急に手持無沙汰になってしまいました。
狩場に行って魔法の修行をすればいいだけなのですが、師匠と一緒でないと妙に物足りない感じがします。
そんな風に考えていると、ハンター協会の副支部長であるトゥメック大叔父から「一旦里に帰って無事を報告したらどうだ。黙って出てきたのだから、お前の母親もさすがに心配しているだろう」と痛いところを突かれてしまいました。
確かに黙って里を出て数カ月、さすがに気の長いエルフでも、多少は心配はしているかもしれません。
そう思うと、久しぶりに母に会ったほうがいいかという気も起こり、私はこの機会にエルフの里に戻ることにしました。
雷魔法を身につけたことを知らせたら皆にどれほど驚かれるだろう、そんな期待も少しだけ胸にしまいながら……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます