エピローグ

 疲れた。


 本当に疲れた。


 ひと月あまりにも及ぶ婚姻の儀、その他諸々もろもろが今日ようやく終わったのだ。


 俺は自室の豪華なベッドの上でぐったりと屍のようになり、黒猫アビスにペロペロと舐められるがままになっていた。


 『大厄災』と『厄災』を完全に消滅された旨が女王陛下から発表されると、サヴォイア女王国中が歓喜に湧いた。


 さらに救世の英雄(つまり俺)と女王陛下の婚姻が発表されると、その歓喜は絶頂に達した。


 その中で新たな王配が20人超の側室をとることも発表されたが、ありがたいことに(?)歓喜の絶頂の中でめでたいこととしてさらっと流された。


 発表から1月後、異例の早さで婚姻の儀が執り行われ、そして今日最終日を迎えたというわけだ。


「俺だけはずっと出ずっぱりだもんな……まあ疲れるよな……」


 リルバネラ以外は全員式を挙げたわけだが、さすがにまとめてというわけにもいかず別々に行った。いわゆる披露宴的なものはさすがに回数を絞ったが、それでも週一で4回連続というのはハードを通り越してブラックであった。ブラック披露宴……新しいな。


 ちなみにロンドニアとマイラに関しては他国が絡むので、披露宴等については今後別にやる予定である。こちらもやる時はかなり派手になるのは確定している。


 もっともこれらのイベントは『厄災』で停滞した経済を立て直す意味もあってのお祭り騒ぎなので、新人為政者としては耐えるべきところだ。


 正直なところ相手がラトラやセラフィ・シルフィ姉妹の時はさすがに自分が犯罪者になった気がしていたたまれなかったが……まあ皆幸せそうだったからよしとしたい。


 さて、そんなわけで忙殺されていた俺だが、今こうしてベッドの天蓋を眺めているとやはりどうも落ち着かない。国政の場には関わり始めてしばらく経つのだが、やっていけるのかという不安はいまだに拭い難い。


 そうだ、久しぶりにステータスを確認しよう(現実逃避)



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名前:ケイイチロウ クスノキ

種族:星の管理者

年齢:26歳

職業:サヴォイア女王国 王配

レベル:516(125up)


スキル:

格闘Lv.136 大剣術Lv.142 長剣術Lv.102

斧術Lv.91 短剣術Lv.89 弓術Lv.48

投擲Lv.52 二刀流Lv.88

九大属性魔法(火Lv.115 水Lv.92

氷Lv.87 風Lv.119 地Lv.109 金Lv.121

雷Lv.102 光Lv.97 闇Lv.79)

時空間魔法Lv.120 生命魔法Lv.112 

神聖魔法Lv.108 付与魔法Lv.105 

転移魔法Lv.56

九属性同時発動Lv.107 算術Lv.6

超能力Lv.151 魔力操作Lv.191 魔力圧縮Lv.173

魔力回復Lv.147 魔力譲渡Lv.98

体力注入Lv.57

全状異常耐性Lv.73 全属性耐性Lv.62

全身体能力上昇Lv.121

幻覚看破Lv.27 朧霞Lv.25

多言語理解 解析Lv.99 気配察知Lv.78

縮地Lv.114 暗視Lv.60 隠密Lv.62 

魔力視Lv.92 最適ルート感知Lv.61

不動Lv.120 狙撃Lv.127 

錬金Lv.109 並列処理Lv.148

〇〇〇〇生成Lv.45  人間向け〇〇〇〇生成Lv.24

眷属化Lv.99(23/9999)(new)  


称号:

天賦の才 異界の魂 ワイバーン殺し

ヒュドラ殺し ガルム殺し 

ドラゴンゾンビ殺し 悪神の眷属殺し 

闇の騎士殺し 邪龍の子殺し 邪龍殺し

四天王殺し 魔王の影殺し 魔王殺し

奈落の獣堕とし 穢れの君殺し

悪神殺し 聖弓の守護者殺し

玄蟲殺し 星の管理者殺し(new)

レジェンダリーオーガ殺し

キマイラ殺し サイクロプス殺し 

オリハルコンゴーレム殺し 

ガーディアンゴーレム殺し

ソードゴーレム殺し

ロイヤルガードゴーレム殺し

エルフ秘術の使い手 

エルフの護り手 錬金術師

王家の護人

オークスロウター オーガスロウター

ゴーレムクラッシャー 

エクソシスト ジェノサイド 

ドラゴンスレイヤー

アビスの飼い主  トリガーハッピー 

エレメンタルマスター シャープシューター

人間重機 光を導く者 喜びを与える者

解放者 再来の預言者 武闘王

聖杯を掲げし者 女王の騎士

古代文明の探究者 全知の賢者

ヴァルキュリアゼロのマスター

イスマール魔導帝国技術省施設管理者 

先史魔導文明を継ぐ者 護国卿(new)

管理神の使い(new)  竜神の現身(new)

軍神の現身(new) 無節操を極めし男(new)


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 レベルが爆上げになっているのはラスボスを倒したことを考えればそんなものだろう。


 いくつかのスキルが統合されて数が減ったようだが、スキルレベルについてはもどうでもいい感がすさまじい。どうせ必要があれば勝手に上がるし。


 称号についてももう諦めてはいるが、「無節操を極めし男」ってのはさすがにヒドくないですかね。否定はしませんけど。


 ……と逃げていてもしかたないな。なんだろうこの「種族:星の管理者」ってのは。


 人間やめたのか俺。もしかしてあの『星の管理者』のあとを継いだとかそんな奴? 表面にプログラムのコードが浮かんだりするの? それだけは勘弁して欲しいんだが。


 それと「眷属化Lv.99(23/9999)」というのも意味深すぎる。


 前『星の管理者』が『厄災』を従えていたように、俺も新『星の管理者』として手下を従えられるということだろうか。問題は「23」という数字に覚えがありまくることなんだが……だめだ、考えないようにしよう。上限が「9999」あるとかも忘れよう。


 とステータスを見ながら途方に暮れていると、妙なことに気付いた。どうやらステータスに続きがあるようなのだ。


 俺が切り替えを念じると、スッとステータスが切り替わった。




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国名:サヴォイア女王国


君主:リュナシリアン・サヴォイア


人口:415万5328人


資産:639億3748万4891デロル


税収:382億5712万5938デロル


首都 ラングラン・サヴォイア  


農業:822  工業:740

魔導:572  商業:892  

民心:932  治安:734  

治水:429  森林:732  

開発:630

兵力:323,000  兵糧:421,340      


同盟国:ローシャン  リースベン


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 ……なんというか、戦国シミュレーションゲームみたいなステータスだなこれ。


 『人口』とか『資産』とかの数値はすごい勢いで変化してるのでリアルタイムで反映されてるようだ。他の数値も時間の経過とともに微妙に変化している。


 いや問題はなぜこんなステータスが表示されるようになったかだが……。


「なあアビス、元のステータスはロールプレイングゲーム風だったんだ。その結果俺は勇者みたいに戦ってきたわけだ」


 俺はアビスを持ち上げて、大きな目でをきょとんと見下ろす黒猫に話しかけた。


「次に現れたステータスはシミュレーションゲーム風なんだ。ということは、次は君主になって天下統一でもしろってことか?」


「にゃあ」


「やっぱりそう思うか……」


 俺が『星の管理者』になったということは、やはり『管理神』という存在がいて、その存在が俺を『星の管理者』に任命したということだろう。ということは新たなステータス画面もまた『管理神』が付け加えたもののはずだ。


 むろんそこには何らかの意図があるはずで、ゲーム脳的に考えればやはりアビスに語った通り、天下統一をすることが望まれているのだろう。


 もしかしたら『イスマール魔導帝国』のように大陸を統一して、俺の意志の下に人間と文明を正しい方向に導けとか、そんなことを求めているのだろうか?


 それにしても俺が急に天下統一するとか言い出したら、英雄が覇王に豹変したとか言われて大変なことになるだろうな。


 まあしばらくは内政重視で様子を見よう。どうせこの世界のことだ、どこかの国がいきなり侵略戦争を始めてそれによって戦乱の世になるとか、そんな強制イベントが起こるに違いない。


 ……自分で言ってて最悪な予言だな。しかも実際起きそうなので笑えない。


「ともかくも、戦国シミュレーションというならまずは人材の登用からだな」


 一応有名どころの戦国シミュレーションは一通りやった身であるのでセオリーはおさえている。すでにある程度の国力がある以上、重要なのはさらなる人材の確保である。


 などと久々にゲーム脳を起動させていると、ドアがノックされた。


 入ってきたのはのネイミリアだった。


「師匠……じゃなくてあなた……って呼ぶのはまだ恥ずかしいです」


 顔を真っ赤にする魔法マニア少女。


「はは、そのうち慣れるさ。それでどうしたの?」


「あ、これから皆で集まってお茶会をやるので中庭に来てください」


「ああ、わかったよ。一緒に行こうか」


「はいっ」


 中庭に向かうと、そこにはテーブルと椅子がセットされ、リュナシリアン以下俺の妻たちが勢ぞろいしていた。


 お茶の用意をしているのはメイド姿のローゼリスとエイミ、それにラトラだ。


 王妃なんだからそんなことを……という感じだが、彼女たちはそれが落ち着くらしい。


 もっとも正直20人超えの王妃が贅沢な暮らしをしたら国の経済が傾くので、俺も含めて贅沢はしないようにしよう、とは皆で納得しているところではある。


 女王陛下も有能な彼女たちを遊ばせるつもりはないらしいし、いろいろと型破りなロイヤルファミリー(?)となりそうだ。


 俺が椅子に座ると、皆もお茶と菓子を前に席に着いた。


 キラキラした美女美少女が、俺を見て一斉に微笑む。


 ああ、これから彼女たちを家族として、俺は第二の……いや第三の人生を歩むことになるのだろう。


 知らないうちに押し付けられた『星の管理者』だが、まあ、やれることはやるさ。


 上司の無茶ぶりをこなすのには慣れているからな。




『月並みな人生を歩んでいたおっさんがゲーム的な異世界に飛ばされて思慮深く生きつつやっぱり無双したりする話』 ~完~

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月並みな人生を歩んでいたおっさんがゲーム的な異世界に飛ばされて思慮深く生きつつやっぱり無双したりする話 次佐 駆人 @jisa_kuhito

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